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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

YouTuber・VTuber法務

YouTuberのプレゼント企画動画 法的問題点を解説

YouTuber・VTuber法務

チャンネル登録者数や再生回数を増やす目的で、YouTuberが動画でプレゼント企画を行うことがあります。

プレゼント企画については、新規視聴者を獲得する目的や既存の視聴者への感謝を表す目的等で行われることがあります。

視聴者としては、プレゼントをもらえるチャンスがあるため、嬉しいと感じるものですが、YouTuberからみると法的に問題のある行為と判断されてしまうリスクがあります。

そこで本記事では、YouTuberがプレゼント企画を行う際の問題点について解説をします。

YouTubeとは

YouTubeとは、2005年12月にサービスの提供が開始された動画共有サイトのことをいいます。

動画共有サイトの種類は様々ありますが、YouTubeは、世界最大の動画共有サイトです。

YouTubeは、もともとは、YouTube,Incがサービスを提供していましたが、後にGoogleに買収され、現在は、Googleがサービスを提供しています。

YouTuberとは

YouTuberとは、YouTubeにおいて、動画を継続的に投稿している個人や団体のことをいいます。

近年、YouTuberという職業の人気が高まっており、子どもがなりたい職業ランキングの上位にランクインする職業になっています。

また、最近では、YouTubeにとどまらず、YouTuberがテレビやラジオに出演する機会も増えており、YouTuberのYouTube以外での活動も目立ってきています。

YouTuberが行うプレゼント企画とは

YouTuberが行うプレゼント企画とは、YouTuberが、視聴者に対してプレゼントを行う企画のことをいいます。

プレゼント企画の目的は様々ですが、チャンネル登録者へ感謝の気持ちを伝える目的や、新たなチャンネル登録者や視聴者を獲得する目的等が考えられます。

プレゼント企画の方法についても様々な方法がありますが、自らのYouTubeチャンネルにプレゼント企画に関する動画を投稿し、視聴者に対し、その動画のコメント欄に、プレゼント企画への参加の意思を示したコメントを投稿してもらう方法があります。他にもTwitterなどのSNSを利用し、YouTuberが、自らのSNSアカウントに、プレゼント企画に関する投稿を行い、チャンネル登録を行っていることがわかる画像とともにコメントを投稿してもらうという方法等もあります。

プレゼント企画にどのような問題が考えられるか

YouTuberが行うプレゼント企画との関係で生じる問題は、大きく分けて2つあります。

1つ目は、法律との関係です。具体的には、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)との関係が問題となります。

2つ目は、YouTubeの規約との関係です。

YouTubeの規約に違反した場合には、動画の削除やアカウント利用停止等の措置がなされる可能性があります。

最悪の場合、アカウント自体が削除され、今までの努力が無に帰してしまう可能性もありますので、注意が必要です。

景品表示法との関係

景品表示法に違反してしまうと何らかの罰則を受ける可能性もあります。

そこで、以下では、プレゼント企画を行うにあたって、どのような場合に景品表示法に違反する可能性があるかを説明します。

景品表示法とはどのような法律か

景品表示法の目的については、以下の景品表示法第1条で規定されています。

(目的)
第一条 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。

景品表示法の目的は、不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する行為の制限や禁止を行い、一般消費者の利益を保護することです。

景品表示法の規制対象となる景品類とは

プレゼント企画が、景品表示法の規制の対象となるためには、プレゼントが、景品類に該当する必要があります。

景品類の定義については、以下の景品表示法第2条第3項で規定されています。

3 この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するものをいう。

上記のうち、重要な点は、「取引に付随して」という点です。

「取引に付随して」といえない場合には、プレゼントが「景品類」に該当しないため、景品表示法の規制を受けることはありません。

企画内容を広く告知し、商品やサービスの購入や来店を条件とせず、誰でも簡単に申し込むことができ、抽選で金品等が提供されるようなケースは、オープン懸賞と呼ばれ、景品表示法の規制を受けません。

YouTubeのプレゼント企画と景品表示法との関係

YouTuberがプレゼント企画を行う場合、多くの場合では、オープン懸賞として、景品表示法の規制は受けないものと考えられます。

ただ、例えば、YouTuberが発売している商品を購入した視聴者のみをプレゼント企画の対象とするケースや、YouTuberが開設しているファンサイトの有料登録会員になった場合にプレゼント企画に参加できるというようなケースでは、オープン懸賞と評価されない可能性があり、景品表示法の規制を受ける可能性があります。

なお、景品表示法の規制を受ける場合でも、景品表示法に違反しない場合には、プレゼント企画を行うことができます。

YouTubeの規約等との関係

景品表示法に違反しないケースでも、YouTubeの規約等に違反するケースも考えられます。

YouTubeの規約等に違反してしまうと、アカウントがBANされてしまう可能性もありますので、注意が必要です。

YouTuberの規約等の構造

YouTubeには、様々な規約等が定められており、大きく分けると、利用規約、YouTubeコミュニティガイドライン、ポリシー、セキュリティ及び著作権のポリシーなど(以下「規約等」といいます。)があります。

規約等に関する事項については、YouTubeの利用規約の中で、以下のように規定されています。

適用される規約
本サービスの利用には、本規約、YouTube コミュニティ ガイドラインおよびポリシー、セキュリティ、著作権のポリシー(以下、あわせて「本契約」)が適用されます。本契約は随時更新されることがあります。本サービスの広告主またはスポンサーになる場合や、コンテンツに有料プロモーションを組み込む場合は、本契約に広告主向けの広告ポリシーも含まれることになります。本規約に記載されるその他のリンクや参考資料はすべて、情報の提供のみを目的とするものであって、本契約を構成するものではありません。

上記の記載から、規約等は、いずれもGoogle及びYouTubeの利用者に適用される契約事項と考えられます。

ただ、規約等はいずれも契約事項と考えられるものの、それらの適用の優先関係については、YouTubeの利用規約の記載から明らかではありません。

プレゼント企画が「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」に違反するか

YouTubeの規約等の中で、プレゼント企画に抵触する可能性がある規定として、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」があります。

「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」では、以下の行為及びコンテンツが禁止されています。

  • 自動システムを使用して、または何の疑いも持たない視聴者に動画を示して、視聴回数、高評価数、コメント数、その他の統計数を人為的に増やそうとする行為
  • エンゲージメント(視聴回数、高評価数、コメントなど)を得るためだけに視聴者を呼び込むコンテンツ

エンゲージメント(視聴回数、高評価数、コメントなど)を得るためだけに視聴者を呼び込むコンテンツの具体例については、「チャンネルのエンゲージメント数を人為的に増やしたり、その目的のためだけに存在するビジネスを宣伝したりすること」とされています。

上記の禁止された行為及びコンテンツに該当するかの判断については、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」では、「YouTube は、人間のユーザーがコンテンツに誠実に関わることを主目的として操作を行った場合、そのエンゲージメントは正当であると判断します。不当なエンゲージメントと判断されるのは、たとえば、エンゲージメントが強制や不正行為に起因している場合や、金銭的な利益を得ることがエンゲージメントの唯一の目的である場合です。」と定められています。

このような「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」の定めによれば、YouTubeへの投稿が禁止されるプレゼント企画に関するコンテンツは、視聴回数や高評価数を得ることのみを目的とする極めて例外的なコンテンツに限られ、それ以外のコンテンツは「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」に違反するものではないと考えられます。

そのため、YouTuberがプレゼント企画に関する動画を投稿した場合でも、視聴者の趣味・嗜好に沿った動画であり、視聴回数や高評価数を得ることのみを目的とするコンテンツであると認められない場合には、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」に違反しないものと考えられます。

プレゼント企画がYouTubeの利用規約に違反するか

前述のように、プレゼント企画については、視聴回数や高評価数を得ることのみを目的とする極めて例外的なコンテンツを除き、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」に違反しません。ただ、YouTubeでは、利用規約において、以下のとおり、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」よりも厳しい規定を定めています。

本サービスの利用には制限があり、以下の行為が禁止されています。

6.本来のユーザー エンゲージメントの測定結果を歪めること、またはそのように仕向けること。たとえば、ユーザーに金銭を支払ったりインセンティブを与えたりして、動画の視聴回数、高評価数、低評価数を増やす、チャンネル登録者を増やす、またはその他なんらかの方法で指標を操作することなどが含まれます。

YouTubeの利用規約の上記条項は、視聴回数や評価数を増加することを目的としてユーザーに金銭を支払うことを禁止するものであり、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」が視聴回数等を得ることのみを目的としたコンテンツを禁止していることと比較すると、抵触する範囲が広い規定であるといえます。

プレゼント企画については、プレゼント企画に関する動画を投稿し、動画の視聴回数、高評価数、低評価数を増やす、チャンネル登録者を増やす、またはその他なんらかの方法で指標を操作することが目的となっている部分が含まれていることは否定できませんので、少なくとも形式的に考えた場合には、YouTubeの利用規約に違反する可能性が高いと考えられます。

ただ、プレゼント企画を行っているYouTuberは数多く存在しているものの、弊所が確認した範囲では、プレゼント企画を行ったことを原因としてYouTubeの利用規約に違反したと判断された事例は見当たらず、プレゼント企画が、YouTubeの利用規約に違反すると判断される可能性は高くないものと考えられます。

前述のように、規約等の適用の優先関係については、YouTubeの利用規約上、明らかではありませんが、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」は、YouTubeの利用規約の運用方針と位置づけられているものと考えられ、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」に違反しない限り、YouTubeの利用規約に違反すると判断される可能性は高くないものと考えられます。

結果としては、YouTuberが、プレゼント企画に関する動画を投稿した場合、視聴回数や高評価数を得ることのみを目的とする極めて例外的なコンテンツを除き、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」及びYouTubeの利用規約に違反すると判断される可能性は高くないものと考えられます。

まとめ

以上、YouTuber事務所やYouTuberの方を対象に、YouTuberがプレゼント企画を行う際の問題点について解説をしました。

プレゼント企画を行う場合、本記事で説明をしましたように、ほとんどの場合、景品表示法に違反しないと判断される可能性が高く、また、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」及びYouTubeの利用規約に違反すると判断される可能性は高くないものと考えられます。ただ、視聴回数や高評価数を得ることのみを目的とする極めて例外的なコンテンツと評価される場合には、「虚偽のエンゲージメントに関するポリシー」及びYouTubeの利用規約に違反すると判断される可能性もあります。

プレゼント企画を行うと考えているYouTuberの方は、一度、専門的知識を有する弁護士に相談をすることをオススメします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネット上で人気化するYouTuberやVTuberの顧問案件を多く承っております。チャンネル運用や契約関連などで、リーガルチェックの必要性が増加しております。当事務所では専門知識を有する弁護士が対策にあたっております。

下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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