弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ドイツ会社法の定める株式会社(AG)のコーポレートガバナンスと二階層型経営構造・共同決定制度

ドイツ会社法の定める株式会社(AG)のコーポレートガバナンスと二階層型経営構造・共同決定制度

ドイツ(正式名称、ドイツ連邦共和国)は欧州最大の経済国であり、多くの日本企業が事業展開を検討しています。しかし、その企業統治(コーポレート・ガバナンス)構造は、私たちが慣れ親しんだ日本の会社法とは根幹から異なります。特に、ドイツの株式会社(Aktiengesellschaft, AG)に法律で義務付けられている「二階層型経営構造」と、世界的にも類を見ない「共同決定制度(Mitbestimmung)」は、ドイツのコーポレート・ガバナンスを特徴づける二大重要キーワードであり、現地進出を成功させるための法務・経営戦略において極めて重要です。

ドイツの二階層型構造は、業務執行を担う執行役会(Vorstand)と、その監督を専門とする監査役会(Aufsichtsrat)を完全に分離することを要求します。日本の会社法との大きな違いは、両機関のメンバーの兼任が許されないという、より厳格な分離が特徴である点です。Vorstandは高度な独立性を持つ一方で、その経営判断はドイツ版ビジネス・ジャッジメント・ルール(AktG第93条)によって保護されつつ、Aufsichtsratによる厳格な監督下に置かれます。

共同決定制度は、従業員数2,000人超の企業で監査役会の半数を従業員代表が占める「パリティ」を確立し、経営に労働側の視点を組み込みます。重要な点は、最終的な意思決定権は監査役会会長のキャスティング・ボートにより株主側に残るという精緻なバランスの上に成り立っていることです。この制度はM&Aなどの戦略的意思決定に深く影響を及ぼし、また、制度回避を目的としたSE(欧州会社)への転換に対する規制強化の動き(構造変更規制)も見られており、この制度の重要性が増しています。

本稿では、これらの制度の法的根拠と具体的な仕組みを詳細に解説し、特に日本の経営者・法務担当者が直面するであろう、意思決定プロセスやM&A戦略上の実務的な影響について、日本法との対比を通じて掘り下げます。ドイツのコーポレート・ガバナンスを深く理解することは、現地での成功のための第一歩となります。

ドイツ株式会社(AG)における二階層型経営構造の原則

ドイツの株式会社法(Aktiengesetz, AktG)は、業務執行と監督を厳格に分離する「二階層型経営構造」を義務付けています。これは、業務執行を担う執行役会(Vorstand)と、それを監督する監査役会(Aufsichtsrat)法的に独立し、両機関のメンバーの兼任が一切許されない構造です。

日本の会社法は、歴史的には19世紀末のドイツ商法典に起源を持ちますが、第二次世界大戦後にアメリカ合衆国の会社法規則を多く取り入れた結果、ガバナンス構造においてドイツとは大きく異なる進化を遂げました。日本でも監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社といった多様なガバナンスモデルが選択可能ですが、ドイツの二階層型構造は、その分離の厳格さにおいて日本法のどのモデルよりも強制的かつ徹底的です。 

執行機関としての執行役会(Vorstand)の権限と独立性

執行役会(Vorstand)は、AGの事業を自らの責任において経営し、主導する機関です。AktGに基づき、Vorstandは会社の業務執行に関する全権限を掌握します。

Vorstandは、原則として監査役会(Aufsichtsrat)からの具体的な業務指示に拘束されることはありません。これは、VorstandがAufsichtsratの監督下にあるものの、日々の業務執行においては高度な自律性を持つことを意味します。この独立性が、日本の代表取締役や執行役員が、最終的には取締役会(監督機関)の指揮監督の下で業務を執行する構造と決定的に異なる点です。

Vorstandに高い独立性が与えられていることは、彼らが負う責任も極めて重いことを意味します。執行責任がVorstandに集中することで、迅速な経営判断が可能となる反面、その判断が会社に損害を与えた場合のVorstandメンバーの個人責任リスクは高まります。この強力な独立性は、監督機関であるAufsichtsratに対して、Vorstandの経営を実効的にチェックするための強力な監督権限の付与を必然的に導きます。

監督機関としての監査役会(Aufsichtsrat)の役割と権限

監査役会(Aufsichtsrat)は、Vorstandの業務執行を監督し、経営上の重要な決定事項について助言を行う役割を担います。

AktG第111条は、Aufsichtsratの任務と権利を詳細に定めています。Aufsichtsratの権限で最も決定的に重要なのは、Vorstandメンバーの選任・解任権を独占している点です。これは、AufsichtsratがVorstandの「雇用主」としての地位を持つことを意味し、日本の監査役設置会社における監査役が執行役(取締役)の人事権を持たないことと比べると、監督機関として圧倒的な力を保持しています。

Aufsichtsratは、単に会計監査を行うに留まらず、Vorstandに対して目標を設定し、その達成状況を監督することを義務付けられています。また、メンバーは自らの職務を他者に委任することが許されません

ドイツのAGのガバナンス構造は、このAufsichtsratがVorstandに対して強力な人事権と監督権を行使することで、権力の集中を防ぎ、「監督」と「執行」の機能を物理的に分離し、相互に抑制し合う徹底したチェック・アンド・バランスを実現しています。このAufsichtsratの構成、特に共同決定制度による従業員代表の参加は、企業の戦略的な方針に直接的な影響を与えることになります。

ドイツ AG (二階層型)日本 (監査役等設置会社)備考
業務執行責任執行役会 (Vorstand)代表取締役/執行役独立した専門機関が「自らの責任」で執行。監督機関との兼任は法的に禁止
最高監督責任監査役会 (Aufsichtsrat)監査役会/取締役会(監督機能)Vorstandの選任・解任権を独占する最高監督機関
監督者と執行者の関係厳格な法定分離(兼任禁止)一体化または選択的な分離ドイツ法は完全な法定分離を義務付ける
主要な法的根拠Aktiengesetz (AktG)会社法

ドイツ執行役会の責任追及と「ドイツ版ビジネス・ジャッジメント・ルール」(AktG § 93)

ドイツ執行役会の責任追及と「ドイツ版ビジネス・ジャッジメント・ルール」(AktG § 93)

Vorstandメンバーは、会社の事業を経営するにあたり、会社に対して負う善管注意義務を遵守する必要があります。しかし、経営には常にリスクが伴うため、Vorstandメンバーが訴訟リスクを恐れて適切なリスクテイクを躊躇しないよう、ドイツ法には経営判断を保護するための仕組みが明確に成文化されています。

善良な経営者としての注意義務とリスク判断の保護

AktG第93条第1項第1文は、Vorstandメンバーが「善良かつ誠実な経営者としての注意義務」をもって職務を遂行しなければならないと定めています。これは、日本の取締役が負う善管注意義務と本質的に同じものです。 

しかし、AktG第93条第1項第2文(ドイツ版BJR)は、この注意義務違反を免責する要件を定めています。Vorstandメンバーが、

  1. 不適切な利益のために行動していないこと
  2. 合理的な情報に基づいて行動していること
  3. 会社の最善の利益のために行動していること

を証明できる場合、その経営判断は保護され、裁判所による事後的な審査(Hindsight Bias)は制限されます。このルールは、予測を伴う将来的なリスク決定を保護するために、2005年にアメリカのモデルを参考に導入されました。

このBJRは、Vorstandメンバーの責任追及を制限するだけでなく、Aufsichtsratメンバーにも適用されます。AufsichtsratはVorstandの経営判断を監督し助言する役割を担うため、彼らの監督判断についても、同様にリスクを伴う意思決定としての保護が与えられているのです。これにより、監督機関もまた、萎縮することなく、積極的に監督・助言の職務を遂行することが期待されています。 

立証責任の転換と日本の経営判断原則との異同

ドイツ版BJRの導入による大きな変化の一つは、立証責任の転換です。Vorstandの行為が義務違反であったことを示唆する事実(Prima Facie Evidence)原告(通常は会社や株主)が提示した後、Vorstand側がBJRの要件(情報充足性、善意、目的適合性)を満たしていたことを立証する責任を負うという解釈が主流です。

日本法においては、会社法にBJRを成文化した規定はありませんが、判例法理として「経営判断原則」が確立されており、経営者が特定の行為をすることが不合理であったと認められない限り、原則として責任を負わないとされています。ドイツ法の特徴は、この保護原則が法令に明記され、さらに立証責任の所在が明確に(Vorstand側に)移転する点です。

この仕組みは、Vorstandがその判断の過程で十分な情報を収集し、誠実かつ組織的に意思決定を行った記録を残すことの重要性を高めています。厳格な監督権限(Aufsichtsrat)重い責任(Vorstand)がバランスされることで、ドイツの二階層型構造は機能していると言えます。

ドイツ共同決定制度(Mitbestimmung)の仕組み

共同決定制度(Mitbestimmung)は、「資本と労働」が企業の機能運営を「共同で決定する」という社会原則に基づき、ドイツの社会パートナーシップの柱の一つとされています。この制度は、経営における株主(資本)と従業員(労働)の権利のバランスを図り、企業内の永続的な社会対話を保証することを目的としています。

共同決定制度は、企業のガバナンスレベル(監査役会への従業員参加)と、個別の事業所レベル(事業所委員会による日常的な労働条件への参加)の二段階で機能しますが、特に企業の戦略的意思決定に影響を与えるのは、監査役会への参加(unternehmerische Mitbestimmung)です。

共同決定制度の法的根拠と企業規模による適用閾値

共同決定制度の適用される程度は、企業の従業員数に応じて複数の法令によって定められています。ドイツに進出する企業は、自社の従業員数がどの閾値を超えているかを常に確認する必要があります。 

  1. 3分の1参加法(Drittelbeteiligungsgesetz, DrittelbG 2004): 従業員数が501人を超え、2,000人以下の場合に適用されます。この場合、監査役会の議席の 
  2. 3分の1が従業員代表に予約されます。株主側が常に3分の2の議席を確保するため、株主の優位性は明確に維持されます。
  3. 共同決定法(Mitbestimmungsgesetz, MitbestG 1976): 従業員数が2,000人を超える公開有限会社(AG)や有限会社(GmbH)などに適用される、最も広範で重要な制度です。
  4. 炭鉱・鉄鋼共同決定法(Montan-Mitbestimmungsgesetz, Montan-MitbestG 1951): 鉱業・鉄鋼業の特定企業(1,000人超)に適用されます。この制度は、後述するMitbestG 1976よりも強力な共同決定を実現します。

MitbestG 1976下の「パリティ」原則と株主優位の維持

MitbestG 1976が適用される企業では、「パリティ(労使同数)」の原則が採用されます。監査役会(Aufsichtsrat)のメンバーは、株主代表と従業員代表が50%ずつを占めることが義務付けられます。

監査役会の規模は従業員数に応じて定められ、例えば従業員数が10,000人未満の場合は12名構成となり、株主側6名、従業員側6名となります。従業員代表の中には、労働組合から選出される代表者枠(通常2~3議席)が含まれます。

労使同数であるにもかかわらず、MitbestG 1976下のパリティは「ソフト・パリティ」と呼ばれ、「真のパリティ」とは見なされません。その核心的な理由は、監査役会会長(Aufsichtsratsvorsitzender)の存在です。通常、監査役会会長は株主代表の中から選出され、議決が同数となった場合に決定権(キャスティング・ボート)を持つことが法令上定められているためです。これにより、最終的な意思決定においては、株主側が構造的に優位性を保つことができます。

この仕組みは、共同決定制度が企業の経営を麻痺させることを防ぎつつ、従業員の利益と意見をトップレベルの意思決定に反映させるという、政治的な妥協の結果です。

なお、Montan-MitbestGが適用される企業では、労使5名ずつに加え、労使が合意した中立の11人目のメンバーがキャスティング・ボートを握るため、真のパリティ(真の労使同数)が実現されており 、さらに経営陣(Vorstand)には労働担当取締役(Arbeitsdirektor)の設置が義務付けられ、その任免には従業員側の同意が必要です。

法令従業員閾値(原則)適用企業従業員代表比率議決権のバランス
MitbestG (1976)2,000人超一般AG, GmbHなど50%(労使同数)会長(株主側)がキャスティング・ボートを持つ(ソフト・パリティ)
DrittelbG (2004)501人超 2,000人以下一般AG, GmbHなど3分の1株主側が常に3分の2を確保し優位
Montan-MitbestG (1951)1,000人超鉱業・鉄鋼業50%+中立委員中立委員が最終決定権を持つ(真のパリティ)

ドイツの共同決定制度がM&A戦略と企業成長に与える影響

ドイツの共同決定制度がM&A戦略と企業成長に与える影響

共同決定制度は、企業の経営判断、特に戦略的な意思決定、M&A、および大規模な組織再編に実質的な影響を与えるため、ドイツでの事業展開を検討する日本の経営者や法務担当者にとって、単なる労務コンプライアンスとしてではなく、ガバナンス戦略の核心として理解されるべきです。

意思決定プロセスにおける労働側の実質的な影響力

監査役会は、Vorstandが策定した大規模なリストラ、事業所の閉鎖、重要なM&A、または多額の投資計画など、会社の将来を左右する戦略的案件について監督権を持ち、これらの事項について決議することが多くあります。

MitbestG 1976の下では、従業員代表は監査役会の半数を占めるため、たとえ株主側がキャスティング・ボートを持つとしても、労働側が団結して反対の意思を表明した場合、株主側は最低でも過半数(キャスティング・ボート発動)で議案を可決しなければなりません。この構造は、従業員代表に対して、経営判断を遅延させたり、経営側が労働側の懸念を事前に考慮した上での妥協案を提示することを事実上強制したりする「ホールドアップ・メカニズム」として機能します。

従業員代表は会社の状況について詳細な知識を有しているため、経営側の計画がもたらす社会的影響や従業員の利益を熟知した上で議論に参加します。これにより、経営層は短期的な利益追求だけでなく、労働側の視点、すなわち企業の「社会的一貫性」や持続可能性も考慮に入れるよう促されます。共同決定制度は、ドイツ企業のパフォーマンスの根幹を支える「社会的な接着剤」として機能すると評価されることがあります。

SE(欧州会社)への転換による制度回避とその規制動向

企業が成長し、従業員数がMitbestG 1976の閾値(2,000人)に近づくと、共同決定制度の適用レベルが強化されることになります。過去、一部の企業は、より厳格な共同決定制度の適用を回避する戦略的な手段として、欧州会社(SE:Societas Europaea)という法人形態への組織変更を選択することがありました。

SEの設立時、共同決定体制は従業員と交渉して確定(フリーズ)させることになります。この制度は「ビフォー・アンド・アフター原則」または「凍結ソリューション」として知られており、SE設立後に従業員数が大幅に増加しても、原則として共同決定体制を変更する義務が生じないという抜け穴として利用されてきました。

しかし、ドイツの連立政権は、この「凍結効果」が共同決定制度の「不正な回避」に繋がっていることを問題視し、規制を強化する動きを見せています。最新の立法動向では、従業員数が大幅に増加した場合を構造変更(structural change)とみなし、共同決定制度の再交渉を義務付ける法改正が検討されています。オーストリアではすでに同様の規制が存在しており 、ドイツでもこの規制が施行された場合、将来的に設立されるSEや、新規制後に閾値を超える既存SEは、共同決定制度の再交渉が必要になる可能性が高いと言えます。

これは、共同決定制度がドイツのコーポレート・ガバナンスにおける本質的な要素であり、その回避を許さないという立法者の強い意思の表れです。この規制強化の動きは、将来的にドイツでの企業成長を目指す日本企業にとって、初期のガバナンス設計(特にSEを利用する場合)において、将来的な法務リスクを織り込む必要があることを示唆しています。 

ドイツの判例に見る監査役会の法的責任と運営の厳格性

ドイツの二階層型構造において、監査役会(Aufsichtsrat)の構成と運営は、その権限の強さから、極めて高い法的厳格さが求められます。特に共同決定制度が絡む場合、従業員代表の選任手続きは複雑であり、その手続き的な瑕疵が企業の意思決定の有効性に重大な影響を及ぼす可能性があります。

監査役会メンバーの選任が不適法であった場合の法的取り扱いについては、ドイツ連邦通常裁判所(Bundesgerichtshof, BGH)が重要な判断を示しています。

BGHは、2013年2月19日の判決(2013年4月5日公開)において、監査役会メンバーの選任が無効と裁判所に宣告された場合、当該メンバーは「非メンバーとして扱われる」と判断しました。これは、選任時の瑕疵が将来的に企業活動に影響を及ぼすリスクを示しています。 

しかし、BGHは同時に、手続き的な瑕疵があったとしても、そのメンバーが関与した監査役会決議について、第三者がその決議の無効を知る、または知るべきであった場合を除き、第三者の信頼を保護する原則(善意の第三者保護)を確立しました。この原則は、企業の対外的な取引の安定性を守るために必要不可欠です。

さらに重要な点として、BGHは、たとえ選任が無効であったとしても、そのメンバーが負うべき職務上の義務、責任、および報酬に関する原則は適用され続け、当該メンバーは職務上の責任から免れることはできないと判示しています。これは、監査役会メンバーがその権限を行使する限り、手続き的な瑕疵があったとしても、善良な経営者としての注意義務(AktG第93条)を負い、違反した場合には会社に対して賠償責任を負うことを明確に示しています。

この判例は、監査役会の構成の適法性が、執行役会(Vorstand)の決定や企業の重要な契約の有効性に影響を与えかねない、極めて重要な要素であることを示唆します。ドイツ法は、ガバナンス構造の根幹における手続きの厳格な遵守を求めており、特に共同決定制度の下で選任手続きが複雑化する従業員代表の選任においては、法的紛争リスクを最小限に抑えるための厳密な対応が必要です。

まとめ

ドイツのコーポレート・ガバナンスは、「経営と監督の完全分離」を義務付ける二階層型構造と、「資本と労働の協調」を制度化する共同決定制度という、二つの強力な法的柱で支えられています。

二階層型構造における執行役会(Vorstand)の高い自律性は、強力な監督機関である監査役会(Aufsichtsrat)による人事権(選任・解任権)の掌握と、ドイツ版BJRによる責任保護によってバランスされています。日本の会社法には見られないこの権限配分は、ドイツでの経営における意思決定プロセスを根本から規定します。

また、共同決定制度は、従業員数2,000人超の企業において、監査役会の半数に従業員代表の参加を義務付けるものであり、株主側がキャスティング・ボートを保有する「ソフト・パリティ」ではあるものの、企業の戦略的判断に対して労働側の実質的な影響力を確保します。この制度は、M&Aや大規模な組織再編を計画する際に、時間軸や交渉構造に直接的な影響を与えます。さらに、共同決定制度の回避を目的としたSE(欧州会社)への組織変更に対して、ドイツの立法府が規制を強化する動きがあることは、この制度がドイツ社会にとって不可侵の原則であることを示しています。

日本企業がドイツで成功裏に事業を展開するためには、これらの制度を形式的なコンプライアンスとしてではなく、現地企業の意思決定構造を根本から規定する「ドイツ的経営の基盤」として戦略的に理解する必要があります。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る