弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

オンラインゲームの暴言・誹謗中傷も開示請求できる?相手を特定する裁判手続も解説

風評被害対策

PC

オンラインゲームでのユーザー同士のコミュニケーションが活発になる一方で、ユーザー同士での誹謗中傷が深刻な問題になっています。オンラインゲーム内での暴言や誹謗中傷も、名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪などの刑事罰に問われる可能性があります。

この記事では、オンラインゲームでの誹謗中傷等の罪についての具体的な事例や、発信者情報開示請求の手続きについて解説します。オンラインゲームで誹謗中傷を受けた場合の対処方法も合わせて紹介します。

オンラインゲームでの誹謗中傷

オンラインゲームでの誹謗中傷について

オンラインゲームの普及と共にユーザー同士のコミュニケーションが活発になる一方で、誹謗中傷の問題が浮上しています。誹謗中傷を受けたケースはもちろん、誹謗中傷の書き込みをしてしまったと相談してくる人も少なくありません。

発信者開示請求とは、匿名の投稿者の情報を特定するための法的手続であり、この手続を使って投稿者を特定し、損害賠償の請求や刑事告訴などの法的措置を取ることが可能です。

開示請求が認められる条件として、誹謗中傷が社会的評価を低下させる内容である、事実無根である、そして誹謗中傷が特定の人物を対象としていることが挙げられます。

ハンドルネームと本人が紐づいているかどうかもポイント

オンラインゲームでは、ゲーム内のキャラクターと実際のプレイヤーが紐づけられていることがポイントになります。このリンクが証明されなければ、名誉を毀損されたとして開示を請求することが難しい場合があります。

例えば、あるオンラインゲームで仲良くなった仲間に個人情報を晒されたケースでは、顔写真と誹謗中傷の内容がX(旧Twitter)に投稿され、被害者は弁護士に相談し、X(旧Twitter)に対して発信者開示請求を行いました。このように個人情報が晒される場合、開示請求が認められる可能性は高くなります。

一方、ゲームのグループから追放され誹謗中傷を受けたケースでは、キャラクターネームが本人の実名と紐付いていなかったため、名誉毀損と認められず開示請求はできませんでした。このような場合には、相手をブロックしたり運営に報告するなどで対応するしかありません。

オンラインゲーム内での誹謗中傷に対して法的措置を取るためには、キャラクター名が本人と明確に紐付いていることが重要です。

オンラインゲーム内の暴言で問われる可能性が高い刑事罰

オンラインゲーム内の暴言で問われる可能性が高い刑事罰

オンラインゲームだからこそ、チャットやボイスチャットを通じてヒートアップして暴言を吐いてしまうというケースもしばしば見受けられます。しかし、オンラインゲームだからといって、その場での発言が許されるわけではありません。

実際にオンラインゲーム内での暴言や誹謗中傷が罪として裁判に発展する可能性もあります。ここでは、刑事罰となる名誉毀損罪、侮辱罪、脅迫罪について説明します。

名誉毀損罪

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法第230条

以下のような発言で誰かの社会的地位を落とした場合、名誉毀損罪に該当する可能性があります。「〇〇はチートを使ってゲームをしている。」「〇〇は他のプレイヤーに詐欺行為をしている。」

名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。ネット上での発言には、事実であっても他人の名誉を傷つける内容は避けるべきでしょう。

関連記事:Youtubeで他人や企業の誹謗中傷を行った場合の名誉毀損罪について

侮辱罪

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

刑法第231条

ネット上で誰かを罵倒したり馬鹿にしたりする発言をした場合には侮辱罪に該当する可能性があります。例えば「しね」「バカ」「アホ」「金の亡者」などの発言が該当します。

名誉毀損罪との違いは「事実摘示の有無」です。事実摘示とは、具体的なことを示しているかどうかを指します。そのため、具体的な内容なら名誉毀損罪、抽象的な内容なら侮辱罪に該当します。ここでの「事実」とは、本当かどうかは関係ありません。

ネット上での発言においては、事実を示さずに公然と侮辱すると侮辱罪に該当する可能性があるため、注意が必要です。侮辱罪については、次の記事で詳しく解説しています。

関連記事:侮辱罪とは?具体的な言葉の例や名誉毀損罪との違いを解説

脅迫罪

第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

刑法第222条

オンラインゲーム内であろうと、「〇月〇日に〇〇を殺す。」など、人を脅すような発言は脅迫罪にあたります。訴えられれば、2年以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられます。

オンラインゲーム内でも常に冷静な言動を心がけ、問題が発生した場合は適切な対処を行うことが重要です。脅迫罪については、次の記事で詳しく解説しています。

関連記事:過激なネット投稿は脅迫になることも 「殺す」や「死ね」は脅迫に当たるのか

オンラインゲームの誹謗中傷を開示請求する場合の流れ

誹謗中傷する情報を発信した者に対して損害賠償請求をするためには、まず発信者を特定しなければなりません。

発信者情報開示請求の手続でよくある誤解は、開示請求を行えば一度の請求で発信者が特定される(発信者の住所・氏名等の情報が開示される)というものです。しかし、実際には、発信者の情報にたどり着くためには、以下のような手順で二段階で情報をたどっていく必要があります。

  • サイト管理者に対する請求
  • インターネット業者に対する請求

サイト管理者に対する請求

まず、オンラインゲームの運営者に対して、発信者の通信ログ等の開示を仮処分で請求します。オンラインゲームの運営者は、発信者のIPアドレスや発信時間などの情報を持っていることが多いため、まずIPアドレスを開示してもらうことになります。

発信者情報開示請求により、発信者に関する以下の情報(通信履歴ログ)の開示を受けます。

  • 発信者のIPアドレス
  • 携帯端末のインターネット接続サービス利用者識別番号
  • SIMカード識別番号
  • 発信時間(タイムスタンプ)
  • IPアドレスと組み合わされたポート番号

一般的に、本案訴訟の提起ではなく、仮処分を求める手続きを用います。これは、経由プロバイダの通信ログが保存期間が数カ月程度であるため、本案訴訟を提起している間に通信ログが削除されてしまう恐れがあるためです。

インターネット業者に対する請求

次に、仮処分の手続きで開示を受けたIPアドレスを元に「経由プロバイダ」(インターネットサービスプロバイダ)を特定し、これに対して発信者情報開示請求を行います。

この手続きでは、プロバイダ契約者である発信者に関する以下の情報の開示を受けます。

  • 住所
  • 氏名
  • メールアドレス

プロバイダに対する開示請求は、保全の必要性が認められにくいため、原則として本案訴訟の提起が必要になります。

また、情報開示の手続きをとる前、または同時に、経由プロバイダに対して発信者情報消去禁止の仮処分命令の申立てを裁判所に行うことができます。

このように、オンラインゲーム内での発信者を特定するためには、複数の段階を経る必要があり、それぞれの段階で適切な手続きを踏むことが重要です。詳しくは以下の記事でも解説しています。

関連記事:発信者情報開示請求とは?改正に伴う新たな手続きの創設とその流れを弁護士が解説

まとめ:オンラインゲームで誹謗中傷を受けた場合は弁護士に相談をしましょう

オンラインゲームの普及に伴い、ユーザー同士のコミュニケーションが活発になる一方で、誹謗中傷が問題として浮上しています。オンラインゲーム内での誹謗中傷や暴言は深刻な問題であり、弁護士事務所には成人だけでなく中学生や高校生などの未成年者が相談してくるケースも多く見られます。

誹謗中傷を受けた場合、匿名の加害者の情報を特定するために発信者情報開示請求を行う必要がありますが、この手続きは一度の請求で発信者が特定されるわけではありません。

まず、オンラインゲームの提供者に対して発信者の通信ログ等の開示を仮処分で請求し、その後、経由プロバイダに対して発信者の住所や氏名などの情報開示を行います。これらの手続きは複数の段階を経る必要があり、それぞれの段階で適切な手続きを踏むことが重要です。

さらに、オンラインゲーム内の発言が名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪に該当する場合もあるため、まずは弁護士に相談し、適切な対応を取りましょう。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る