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【令和6年10月施行】確約手続・直罰規定とは?景品表示法改正のポイントを解説

景品表示法の改正

近年、インターネット広告における虚偽・誇大広告やステルスマーケティングなどが横行し、消費者を欺く悪質な行為が問題視されています。

令和6年(2024年)10月施行の景品表示法改正は、こうした問題に対応するため、「確約手続」「直罰規定の拡充」を導入し、より厳格な規制を設けました。改正景品表示法は、インターネット広告における悪質な行為を抑制し、消費者を保護することが期待されます。

本記事では、令和6年10月に施行される「確約手続」と「直罰規定の拡充」について詳しく解説します。

景品表示法の改正の概要と背景

令和5年(2023年)5月に改正された景品表示法は、事業者の自主的な取り組みを促進し、違反行為への抑止力を強化するのが狙いです。この改正では、主に下記の6つが改正されました。

  1. 確約手続の導入
  2. 課徴金制度における返金措置の弾力化
  3. 課徴金制度の見直し
  4. 罰則規定の拡充
  5. 国際化の進展への対応
  6. 適格消費者団体による開示要請規定の導入
景品表示法の改正事項

このうち、新設され実務への影響度が大きい、確約手続の導入直罰規定について、ポイントを解説します。

景品表示法改正ポイント①:確約手続の導入

確約手続とは、景品表示法の違反被疑行為について、事業者の自主的な確約手続を導入し、現行の行政処分である「措置命令および課徴金納付命令」が課されないこととすることで、迅速に問題が改善されることを目的とする制度です。

これまでは、違反の疑いがあり、調査の結果、違反行為が認められた場合は、措置命令(景表法7条1項)・課徴金納付命令(景表法8条1項)などの手段がありました。ですが、罰するのではなく、事業者の自主的な取り組みを促すことで、改善がより進む可能性があることを考慮し、この確約手続が設けられました。

確約計画の認定申請とは

確約手続きには、「是正措置計画」認定申請「影響是正措置計画」認定申請の2種類があります。消費者庁から是正措置を求められた事業者が状況に応じて自主的に「是正措置計画」を作成し、認定申請することで、措置命令や課徴金納付命令を回避することができます。

このプロセスは、事業者と行政庁が協力して問題を解決するためのもので、具体的な計画の内容は、違反の性質・規模・影響等により異なります。

 確約手続は、消費者庁が「事業者の景品表示法の違反被疑行為について、一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があると認めるときに、「措置命令や課徴金納付命令」の弁明の機会を付与する前に限り、事業者(違反被疑行為者) に対し、確約手続通知を行うことにより開始する」とされています。

つまり、確約手続の対象とすべきか否かは消費者庁が選別することとなっており、少なくとも、直罰の対象となるような事例や反復的な違反事例・被害が甚大な事例などは、確約手続の対象とはならないと考えられます。

「確約手続通知」の内容は、下記の法定事項が記載されています(景品表示法第 26 条又は第 30 条)。

  • 違反被疑行為の概要
  • 違反する疑いのある又はあった法令の条項
  • 違反被疑行為及びその影響を是正するために必要な「是正措置計画」又は「影響是正措置計画」(総称して「確約計画」)の確約認定申請をすることができる旨

確約手続通知を受けた事業者は、違反被疑行為の影響を是正する上で必要な措置計画(確約計画)を作成し、認定申請することができます。

消費者庁長官から認定を受けた場合の効果は、認定取消しがされない限り、違反被疑行為について、法的措置に係る規定を適用しないこと、すなわち「措置命令および課徴金納付命令」が課されることはありません。

確約手続のフローは、以下のとおりです。

確約計画の認定基準

確約計画の認定基準には、以下の2つの基準を満たす必要があります。

  • 措置内容の十分性
  • 措置実施の確実性

「措置内容の十分性」とは、消費者庁は、個別具体的なケースごとにその要件を満たすか判断する上で、違反被疑行為の概要・適用法令条項に近い過去の法的措置で違反行為が認定された事案の措置内容を参考にすると考えられます。

「措置実施の確実性」とは、措置内容の十分性を満たしても、実施期限内に確実に実施可能と判断できなければ、確約計画の認定をすることはないとされています。措置実施の確実性を満たすためには、コンプライアンス体制の整備等を行うとともに、役員および従業員に周知徹底をすることが必要であるとされています。

確約措置として被害回復を行う場合には、一般消費者がそれらの内容を把握するための周知方法・必要な資金の額・調達方法が具体的に明らかにされていなければ、措置実施の確実性を満たすと認めることはできないとされています。

なお、申請に当たっては、確約措置の実施期限を設定し、関連資料を提出しなければなりません。

確約計画の内容として、消費者への自主返金があった方が確約計画の認定を受けやすい一方、消費者庁は返金を必須とすることは考えてはおらず、個別の案件に応じて、折衝が行われることが想定されます。

また認定後も状況に応じて、確約計画の変更が可能ですが、再度認定審査があります。

参考:不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づく確約手続に関する内閣府令|「確約計画の認定申請様式

確約計画の公表と報告

確約計画の認定があった場合、独禁法と同様、認定された確約計画が公表される予定です。

消費者庁は、確約手続に係る法運用の透明性および事業者の予見可能性を確保する観点から、認定確約計画の概要・違反被疑行為の概要・事業者名その他必要な事項を公表する予定です。

無論この公表は、景品表示法に違反したことを認定するものではありません。

また、事業者は確約措置の履行状況について、消費者庁に報告しなければなりませんが、報告の時期や回数も、確約計画で設定することが求められます。

景品表示法改正ポイント②:直罰規定

罰則規定の拡充

ここでは、今回の改正で新設された直罰規定について、解説します。

直罰規定とは、悪質な違反行為があった場合に、行政指導や行政命令を出して自主的な改善を促すといった過程を経ることなく、即時に罰則を適用する規定です。直罰規定では、措置命令や聴取等の手続きを経ずに100万円以下の罰金を科すことができます。対象違反行為は、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」です。

対象者の範囲は、故意に直接的・間接的問わず違反行為に関わった事業者で、不正競争防止法・食品表示法・薬機法にも抵触しないような事案と考えられます。

直罰規定の導入により、景表法違反行為に対する抑止力が強化され、消費者保護がより一層図られることが期待されています。

まとめ:景品表示法改正点への対応は弁護士に相談を

以上、2024年10月1日施行の改正「景品表示法」について、ポイントを解説しました。

上述したとおり、「確約手続き」は事業者の自主的な取り組みであるため、認定基準をクリアし、行政罰や刑事罰に至らないよう是正措置を図るためには、専門家と連携して計画の策定・実施をしていく必要があります。

「景品表示法」の改正に伴うルールチェンジについて、不明な点があれば、専門性の高い弁護士へ相談することをお勧めします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット広告をめぐる優良誤認などの景品表示法違反は大きな問題となっており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所はさまざまな法律の規制を踏まえた上で、広告やLPのリーガルチェック、ガイドライン作成などのサービスを提供しています。下記記事にて詳細を記載しております。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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