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景品表示法(景表法)とは?わかりやすい解説と違反事例・罰則を紹介

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表示が実際と違う・景品が豪華すぎてしまう場合、消費者は本来であれば買わないであろう商品を購入してしまう恐れがあります。景品表示法は、このようなことを防ぎ、消費者が適切に商品を選べるように作られた法律です。景品表示法の内容は複雑かつ理解が難しく、自社で展開する広告やサービスが景品表示法に抵触していないかと不安になる方も多いのではないでしょうか。

違反するつもりがなくても、知識不足により景品表示法に抵触してしまうケースもあります。景品表示法に抵触しないためには、法や関連するガイドラインなどの理解が欠かせません。

本記事では、景品表示法のわかりやすい解説、違反した場合の罰則、違反事例などを解説します。この記事を読んで景品表示法に関する知識を身につけ、違反のリスクを回避しましょう。

景品表示法(景表法)とは

景品表示法(景表法)とは

景品表示法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」であり、景表法とも呼ばれます。景品表示法の目的は、一般消費者の利益を保護することであり、一般消費者が自主的・合理的に商品やサービスの選択できなくなるような「偽った表示」や「過度な景品類を提供すること」に対して規制をしています。

「表示」とは、商品やサービスの品質や規格、価格など、消費者に向けた広告や表示のことです。「景品類」とは、顧客を誘引する手段として、販売する商品に付随して提供する物品・金銭のことを指します。

景品表示法で禁止されている行為は、以下の2つです。

  • 過大な景品類の提供制限及び禁止
  • 広告などの不当な表示の禁止

出典:不当景品類及び不当表示防止法

過大な景品類の提供制限及び禁止

景品表示法では、豪華なおまけや景品の提供を禁止しており、景品類の総額や最高額が決まっています。例えば、景品があまりにも豪華すぎる場合、通常であれば購入しないであろう商品に手を伸ばしてしまう恐れがあるでしょう。

景品表示法では、景品による不健全な競争を防ぎ、一般消費者の利益を守るために景品類の提供について制限・禁止をしています。

広告などの不当な表示の禁止

商品を購入する際に消費者が重視する点には、「価格」「品質」「規格」などが挙げられ、これらは商品やサービスを選択する際の重要な判断材料になります。商品の価格や内容が実際と異なる表示がされた場合、消費者は正しい選択ができなくなってしまいます。

景品表示表では、このような事態を避けるため、以下のような表示を禁止しています。

  • 商品やサービスの品質、規格その他の内容についての不当表示(第5条第1号)
  • 商品やサービスの価格、その他の内容についての不当表示(第5条第2号)
  • 上記2項以外で、一般消費者に誤認される恐れがあると認められ、内閣総理大臣が指定する表示(第5条第3号)

景表法が適用される景品の扱いについて

チェック

景品には、「オープン型懸賞」と「クローズド型懸賞」の2種類があります。「オープン型懸賞」とは、商品・サービスの購入や来店を条件とせず、誰でも応募できる懸賞のことです。

オープン型懸賞は誰でも応募でき、金銭の取引が発生しないため、景品表示法は適用されません。「クローズド型懸賞」とは、応募条件に商品やサービスの購入が必要な懸賞を指し、景品表示法が適用されます。

クローズド型懸賞には、以下の3つの種類があります。

  • 一般懸賞:商品やサービスの利用者に対し、くじや抽選などの実施で優劣をつけ、景品類を提供すること
  • 共同懸賞:商品やサービスの利用者に対し、複数の事業者が協働して景品類を提供すること
  • 総付景品:商品やサービスの利用者や来店した人にもれなく景品類を提供すること

景品表示法(景表法)における不当表示を禁止する規制

注意喚起する女性

景品表示法では、一般消費者に実際のものよりも優れている・有利だなどと勘違いさせてしまう恐れのある表示を禁止しています。禁止されている表示には、以下の4つが挙げられます。

  • 優良誤認表示
  • 有利誤認表示
  • 不実証広告規制
  • その他誤認されるおそれのある表示

ここでは、それぞれの詳細を解説します。

優良誤認表示

景品表示法で禁止されている優良誤認表示は、以下の2つに分類されます。(第5条第1号)

  • 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
  • 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの

引用:消費者庁|優良誤認とは

具体的には、商品やサービスの品質、規格などについて、実際のものよりも優れていると表示する場合や、他社が販売する商品とほとんど変わらないのにかかわらず、あたかも優れているように虚偽の表示をすると優良誤認表示に該当することになります。ここで挙げられる表示には、品質や規格以外にも、「原産地」「製造方法」「有効期限」などがあります

優良誤認表示の例は、以下の通りです。

  • 国産ブランド牛であると表示して販売していたが、実際はブランド牛ではない国産の牛肉だった
  • カシミヤ20%混合と書いてあるのにもかかわらず、実際は0%であった
  • 栄養成分が他社のと比較して2倍と書かれていたが、実際は同じ量しか入っていなかった

有利誤認表示

景品表示法で禁止されている有利誤認表示は、以下の2つです。(第5条第2号)

  • 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
  • 競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの

引用:消費者庁|有利誤認とは

具体的には、商品やサービスの価格などについて、価格を安く見せかけるなどして、実際のものや他社のものよりも「お得(有利)」だと思わせるような表示をした場合に、有利誤認表示に該当することになります。価格以外にも、「数量」「保証期間」「支払い条件」などの表示が挙げられます。

また、実際に販売している価格よりも高い価格を「通常価格」として表示する「二重価格表示」も有利誤認表示に当たります。

有利誤認表示の例は、以下の通りです。

  • 「通常価格2万円のところセールにつき1万円」と表示されていたが、実際は常に1万円で販売していた
  • 「期間限定で1万円割引を実施中」と書かれていたのにもかかわらず、実際には提示されている期間以外にも同じ価格で提供されていた
  • 「地域最安値」と表示されていたが、実際は近隣店よりも割高な価格であった

二重価格表示について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:二重価格表示とは?景品表示法に違反しないためのポイントや罰則についても解説

不実証広告規制

不実証広告規制とは、優良誤認表示を効果的に規制するために定められたものです。優良誤認表示であるか否かを判断する必要がある場合に、消費者庁から期間を定めて、表示の根拠となる資料の提出を求められます。

提出の期間は、通常15日です。期間内に資料が提出されない・根拠として不十分である場合には、措置命令において、不当表示とみなされます(第7条第2項)。

また、課徴金納付命令において、不当表示と推定されます(第8条第3項)。

不実証広告規制の例は、以下の通りです。

  • 飲むだけで痩せると表示してあったが、その根拠を示す資料がなかった
  • 使用するだけで、空間に浮遊するウイルスを除去すると表示されていたが、提出された資料の根拠が表示に値すると認められなかった
  • 超音波により家にいる虫を駆除できると書いてあったが、実際にはアクリルケース内における実験しか行っておらず、家屋内での効果を実証するものではなかった

その他誤認されるおそれのある表示

景品表示法には、優良誤認表示や有利誤認表示がありますが、これだけでは全ての不当広告を取り締まれない可能性があります。優良誤認表示や有利誤認表示以外の不当表示を規制するために、公正取引委員会では、「その他誤認されるおそれのある表示」として以下7つを指定しています。

  1. 無果汁の清涼飲料水等についての表示
  2. 商品の原産国に関する不当な表示
  3. 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  4. 不動産のおとり広告に関する表示
  5. おとり広告に関する表示
  6. 有料老人ホームに関する不当な表示
  7. 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示

引用:消費者庁|告示

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」は、いわゆるステルスマーケティングに対応するものであり、2023年10月1日に追加されました。

それぞれの不当表示例は、以下の通りです。

  • ジュースに果汁や果肉の割合が明瞭に書かれていない(1)
  • 商品に原産国以外の国旗が表示されており、正しい原産国の特定が難しい(2)
  • 融資費用の額や返済事例による融資費用の表示などが明瞭に記載されていない(3)
  • 実在しない不動産を表示している(4)
  • 商品の供給量が限定されているのにもかかわらず、その旨を明示していない(5)
  • パンフレットに24時間体制と書かれていたのにもかかわらず、事実とは異なっていた(6)
  • 企業からお金をもらっているのにもかかわらず、広告だと明記せずにSNSで商品を紹介した(7)

景品表示法(景表法)に違反した場合の罰則

景品表示法に違反した場合、罰則が科されます。ここでは、罰則の詳細を解説します。

措置命令による社名等の公開

景品表示法違反の疑いがある場合、事業者から事情聴取したり、資料の提出を求めることにより調査が実施されます。消費者庁が、景品表示法に違反していると判断した場合に、事業者に対して再発防止策の実施や今後違反行為を行わないことなどを命ずる行政処分を行うことになります。

これが措置命令です。措置命令には、主に、以下のようなものが挙げられます。

  • 一般消費者に対して、優良誤認表示もしくは有利誤認表示に該当したことを周知徹底すること
  • 再発防止策を講じ、役員・従業員に周知徹底すること
  • 今後、同様の表示を行わないこと

また、不当な広告表示があった事実が消費者庁のWebページで公開されることとなり、マスメディアの標的にもなりやすいでしょう。

Webページで企業名や違反内容が公開されてしまう・テレビや新聞などで話題になってしまうと、消えない事実として残ってしまいます。こういった事態に陥らないためにも、広告の表示に気をつけ、景品表示法に違反しないよう注意しなければなりません。

課徴金の支払い

優良誤認表示、有利誤認表示に違反した場合、事業者には課徴金が課せられます。不当な景品類への違反は、課徴金の対象とはなりません。

課徴金支払いまでの流れは以下の通りです。

  1. 事業者が不当表示を行っていると判断される
  2. 調査が行われ、措置命令が出される
  3. 事業者には弁明の機会が与えられる
  4. 期限内に資料の提出が行われない・不当表示ではないと認められない
  5. 課徴金の納付命令が下される

課徴金の算定方法は、以下の通りです。

課徴金=不当な表示があった商品やサービスの「売上額」×3%

課徴金対象期間は、3年間が上限です。

課徴金対象行為に対する事実を自主的に消費者庁長官に報告した場合、課徴金額の2分の1が減額されます。また、所定の手続きに従って消費者に対して「返金措置」を行った場合、返金相当額が課徴金額から減額されます。

「返金措置」とは、課徴金対象行為に該当する商品やサービスの取引をした一般消費者からの申出があった場合に、購入額に3%を乗じた額以上の金額を交付することです。以下のような場合には、課徴金の対象外となります。

  • 違反しないよう注意していたのにもかかわらず、不当表示に該当してしまった場合
  • 課徴金額が150万円未満(不当な表示があった商品やサービスの売上額がの5000万円未満)の場合

景品表示法違反について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:景品表示法(景表法)に違反するとどうなる?守るべきポイントも解説

景品表示法(景表法)違反となった3つの事例

3つの事例

景品表示法に違反しないよう気をつけていても、知らず知らずのうちに違反してしまうことがあります。ここでは、景品表示法違反となった事例を紹介しますので、参考にしてください。

キリンビバレッジによる優良誤認表示

キリンビバレッジの「トロピカーナ 100% まるごと果実感 メロンテイスト」という商品について、優良誤認表示が認められました。この商品には、「厳選マスクメロン」「100% MELON TASTE」など、原材料の大部分がメロン果汁であると誤認されるような表記がされていました。

しかし、実際は原材料の98%程度がぶどうやりんごなどの果汁であり、メロンは2%程度しか含まれていないことが分かりました。措置命令の詳細は以下の通りです。

  • 一般消費者に対して景品表示法に違反するものであることを周知徹底すること
  • 再発防止策を講じ、役員・従業員に周知徹底すること
  • 今後、同様の表示を行わないこと

参照:消費者庁|キリンビバレッジ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について

北海道産地直送センターによる有利誤認表示

株式会社北海道産地直送センターが供給する食品の表示について、有利誤認表示が認められました。違反行為の詳細は、以下の通りです。

  • 期間限定で「通常価格:¥4,000税込」「販売価格:¥1,480税込」と表示し、販売価格が通常価格と比較して安いかのように見せていたが、実際には通常価格での販売実績がなかった
  • 「購入いただいた方にプレゼントがある」と表示されていたが、実際にはプレゼントと称して提供する商品の価格を含むものであり、無償ではなかった

キリンビバレッジと同じく、一般消費者に対する違反の旨の周知、再発防止策を講じること、今後同様の表示を行わないことが措置命令として出されています。
参照:消費者庁|株式会社北海道産地直送センターに対する景品表示法に基づく措置命令について

スシローによるおとり広告

株式会社あきんどスシローが供給する料理にかかる表示について、「その他誤認されるおそれのある表示(おとり広告に関する表示)」が認められました。違反行為の詳細は、以下の通りです。

  • ある料理について、「9月8日(水)~9月20日(月・祝)まで!売切御免!」と表示していたが、実際には早期に完売する恐れがあるとして、各店舗で販売が行われなかった
  • ある料理について「対象期間 2021年11月26日(金)~12月12日(日) 期間限定!売切御免!」と表示していたが、早期に完売となり、一部店舗において、料理を提供する準備ができないのにもかかわらず、表示を中止するなどの措置を講じなかった

あきんどスシローにも、一般消費者に対する違反の周知、再発防止策を講じること、今後同様の表示を行わないことが措置命令として出されています。
参照:消費者庁|株式会社あきんどスシローに対する景品表示法に基づく措置命令について

まとめ:景品表示法(景表法)違反にならないよう広告はリーガルチェックを

商品やサービスを販売する場合には、広告に価格や品質、規格などを表示しますが、顧客を誘引したいがために行き過ぎた表示をすると、景品表示法の違反になる恐れがあります。景品表示法が違反となると、措置命令が出され、課徴金の支払いをしなければなりません。

また、消費者庁のWebページに違反の事実が公表され、会社の信用を低下させてしまう可能性もあるでしょう。しかし、不当表示を故意に行っているわけではないものの、景品表示法に関する知識不足により違反してしまう場合も多くあります。景品表示法に違反しないためには、広告やECサイトは専門知識のある弁護士にリーガルチェックをしてもらうのがおすすめです。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット広告をめぐる優良誤認などの景品表示法違反は大きな問題となっており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所はさまざまな法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:記事・LPの薬機法等チェック

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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