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風評被害対策

FC2サーバー上の掲示板の削除やIPアドレス開示請求

風評被害対策

FC2サーバー上の掲示板の削除やIPアドレス開示請求

FC2は、ホスティングサービスをはじめとしたインターネット上のサービスを提供している企業です。中でも、「FC2ブログ」は、日本国内に数多くあるブログサービスの中でもトップクラスの利用者数を誇るサービスとして知られています。

当事務所では、このFC2の管理するサーバー上で運営されている掲示板サイトに関して、仮処分を申し立て、削除とIPアドレス開示請求を実現しました。FC2における書き込みの削除及びIPアドレス開示に至るまでの実際の流れを、ここで紹介します。

請求相手は誰か

インターネット上で運営されている、誰が運営しているのか不明な掲示板で行われている投稿について、削除を求めたり、投稿者のIPアドレス開示請求を行ったりする場合、「そもそも、それを誰に求めたら良いのか」という問題があります。運営者が誰なのか分かっていれば、その運営者に対して請求を行えば良いのですが、運営者が誰か分からない、匿名で運営されている掲示板の場合、請求相手が一見不明だからです。請求相手がわからなければ、IPアドレスの開示請求を行うことができず、投稿者特定が不可能になってしまうだけでなく、削除すらできない可能性が出てきてしまいます。こういった匿名で運営されている掲示板等については、削除やIPアドレスの開示請求を諦めなくてはいけないのでしょうか?

このような場合、サーバー管理者に対して削除やIPアドレスの開示請求を行う、という手があります。つまり、掲示板サイトというウェブサイト自体をホスティングしているサーバー事業者に対して、「貴社がホスティングしている掲示板サイト上で違法な誹謗中傷が行われているので、当該ページを削除して欲しい」「その投稿を行った者のIPアドレスを開示して欲しい」といった開示請求を行うのです。後者に関して、掲示板への投稿時には、サーバーには特有のアクセスログが残ります。サーバー運営者は、そのアクセスログを確認すれば、どのIPアドレスから掲示板投稿が行われたか調査することができるのです。そして、サーバー運営者からIPアドレスの開示を受けられれば、そこから投稿者特定が行えるというわけです。

サイトがホスティングされているサーバーを調べるには

では、あるサイトに関して、そのサイトがどのサーバー上にホスティングされているか、どのように調査すれば良いのでしょうか。この調査には、「aguse」というウェブサービスなどを利用します。aguse上でサイトのURLを入力して「調べる」をクリックすれば、そのサイトがホスティングされているサーバーがどこなのか、調査が行われるのです。例えば、モノリス法律事務所のサイトのURLについて調査を行った結果が下記です。

https://www.aguse.jp/

この情報より、モノリス法律事務所のサイトは、「SAKURA Internet Inc.」の管理するサーバー上にホスティングされているということが分かるのです。FC2の場合も、同様に、当該サイトをホスティングしているサーバー事業者を調べることができます。

海外法人であるFC2を相手方とするには

ただ、問題はこの後です。FC2,Inc.は、海外の法人です。そこで、まず、FC2の法人登記をどのように取得すれば良いか、という問題が出てきます。仮処分や裁判を行う場合、相手方である法人の法人登記を裁判所に提出する必要があります。国内法人であれば法務局で登記を取得できるのですが、海外法人の場合、その国、州ごとに異なる方法で登記を取得しなければいけません。FC2の場合は、アメリカのネバダ州(ラスベガス)の法人なので、ネバダ州の法人登記システムを利用して登記データを取得する必要があります。

さらに、そもそも海外の法人を相手方とする仮処分や裁判を、日本国内の裁判所で行うことができるのか、という問題があります。専門用語で「国際管轄」と呼ばれる問題です。結論として、日本人向けに日本語によるサービスを提供している事業者は、「日本において事業を行う者」であり、そうした事業者を相手方とする裁判は、「日本における業務に関する」訴えとして民事訴訟法3条の3第5号による国際裁判管轄が認められます。さらに、そうであれば、当該事業者を相手方とする仮処分も、「日本の裁判所に本案の訴えを提起できるとき」として、民事保全法第11条より国際管轄が認められるのです。

FC2を相手方とする仮処分手続の方法

こうした問題をクリアすれば、FC2を相手方として削除及びIPアドレス開示請求を行う仮処分を申し立てることができます。なお、この仮処分上では、書面や証拠について、英訳を用意する必要がありますので、日本国内の法人を相手方とするときと比較すると、やはり難易度は高いものとなります。

そして、当該仮処分上で「投稿内容が違法である」と認められれば、削除とIPアドレス開示請求を認める決定(裁判における判決のようなもの)を得る事ができます。その決定をFC2の運営に対して送付すれば、当該記事は削除され、また、IPアドレスも開示される、という仕組みです。

その後、開示されたIPアドレスを元に、発信者情報開示請求を行い、投稿者特定を行います。そして、その情報をもとに、発信者に対しての損害賠償請求等を求める裁判を提起する流れとなります。

このようにして、当事務所は、FC2のホスティングしているサーバー上で運営されている掲示板の削除やIPアドレス開示請求を成功させました。FC2のような海外法人を相手方とした削除請求や投稿者特定をお考えの際は、専門的なノウハウを有した弁護士に依頼することをお勧めいたします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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