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風評被害対策

FC2ブログでIPアドレスを開示させ個人の特定は可能か?

風評被害対策

FC2ブログとは、日本でもっとも多く利用されているブログサービスの一つで、FC2,Inc.が運営しています。アクセスしたり、利用したりしたことのある方も多いでしょう。FC2ブログには、FC2ブログProという有料プランもありますが、基本的には無料で利用することができますので、その手軽さから誹謗中傷や名誉毀損にあたると思われるような悪質な記事が投稿されてしまうことも多々あります。

FC2ブログで悪質な記事が投稿されている場合、その投稿者のIPアドレスを開示させて、個人を特定することは可能なのでしょうか。この記事では、FC2ブログに投稿された悪質な記事の投稿者を特定する方法について解説します。

FC2ブログについて

FC2ブログには、政治・経済、スポーツ、旅行など多くのジャンルがあり、たくさんの人がブログ記事を書いています。FC2ブログではアフィリエイト広告を掲載することもできるため、FC2ブログでアフィリエイトブログを書いている人もいます。また、「ブロとも」という機能があり、FC2ブログ利用者同士で交流をはかることができます。FC2ブログにはアプリもあるので、iPhoneなどのスマホから素早くブログを更新することもできます。

FC2ブログに投稿される誹謗中傷記事の例

FC2ブログでは、誰もがブログを開設して記事を投稿することができますので、風評被害をもたらすような悪質なブログ記事が投稿されてしまうケースも存在します。FC2ブログに投稿される悪質な記事には、どのような例があるのでしょうか。

  • 「○○株式会社△△課の課長Aはパワハラ野郎。ブサイクできもい」
  • 「□□ハンバーガーに虫が入ってて、苦情言ったけど返金もなくひどい対応されたよ」

上記の例に挙げた記事は、FC2ブログの「不適切サイト報告・異議申し立てフォーム」に必要事項(名前、住所、メールアドレス、被害状況および異議申し立て内容、削除を依頼する具体的な箇所など)を記入して送信し、FC2利用規約の禁止事項(下記に引用)に該当すると判断されれば、そのページの削除などの措置を取ってもらえる可能性があります。また、該当箇所と削除を依頼する理由はサイトの管理人にも転送されるため、サイトの管理人がその記事や該当する箇所を削除することもあるでしょう。

他の利用者または第三者の信用もしくは名誉を侵害し、他人のプライバシー権、肖像権その他一切の権利を侵害する行為

FC2利用規約4禁止事項1(抜粋)

ただ、不適切サイト報告・異議申し立てをしたとしても、FC2,Inc.が記事の削除は必要ないと判断すれば、削除されないケースもあります。そのような場合や、その記事によって被った損害がとても大きい場合は、投稿者特定手続を検討しましょう。

投稿者特定手続とは

FC2ブログの投稿者特定手続は、どのように行うのでしょうか。以下に大まかな流れを記載します。

  1. IPアドレスの開示請求
  2. ログの削除禁止命令または通知
  3. 住所氏名の開示請求
  4. 投稿者に対する損害賠償請求

各々の手順について、さらに詳しく解説していきます。

IPアドレスの開示請求

投稿者特定手続で一番に行うのは、IPアドレスの開示請求です。

IPアドレスとは

IPアドレスとは、ネットワークに接続されている機器(PCやスマホなど)に割り当てられている識別子で、ピリオドで区切られた4列の数字から成っています。インターネット上の住所や電話番号のようなものです。このIPアドレスから、参照元となるコンピューターの位置などを割り出すことができます。

FC2ブログに新規登録し、ブログを開設する際に必要になる個人情報は、メールアドレスです。新規登録の際にメールアドレスを入力すると、本登録のためのURLが送られてきます。URLを開くと下記の画像の画面が表示され、パスワードを忘れた場合に使用する秘密の質問で生年月日と郵便番号を登録しますが、生年月日や郵便番号を証明する書面などは不要です。

そのため、FC2ブログの運営者は、利用者の個人情報をメールアドレスしか把握していない可能性が高いです。また、たとえメールアドレスがわかったとしても、メールアドレスだけでは記事の投稿者を特定できないものと思われます。そのため、IPアドレスを開示してもらう必要があるのです。

IPアドレス開示請求にかかる期間

IPアドレスの開示請求は、裁判所を通して行います。正式な裁判ではなく、仮処分によって行うことができます。裁判は、長時間にわたることが多く、1年以上かかるケースも珍しくありませんが、仮処分は、約1~2ヶ月程で早めに終わるケースが多いです。

その場合の弁護士費用の相場は、インターネット上の情報では

着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度

https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee

などと言われています。この手続では、IPアドレスの開示と削除を、同時に求めることが可能です。上記は両方を行うための費用となります。もっとも、対象とする投稿の内容や量によって、当然費用は変わってきます。

FC2ブログ利用規約に違反していると思われる悪質なブログ記事は、不適切サイト報告・異議申し立てを行って削除してもらえることもあります。しかし、不適切サイト報告・異議申し立てを行っても悪質な記事が削除されない場合は、IPアドレスの開示請求を検討しましょう。FC2ブログでの誹謗中傷による風評被害対策については、下記記事で詳細に解説しています。

IPアドレスの開示請求命令に必要な条件

FC2ブログの不適切サイト報告・異議申し立てフォームから報告が行われた場合、その報告を元に利用規約に照らし合わせて確認し、削除などを行う場合があるとされています。この場合は、運営者がその記事を削除する必要があると判断しただけであり、該当する記事に違法性があるとは限りません。

一方、IPアドレスの開示命令が出されるためには、以下二つの要件が必要となります。

  • その投稿の違法性を示す法的な主張
  • 上記を立証するための証拠

そのブログ記事の違法性を法的に主張したり、その違法性を立証するための証拠を出したりする必要があるのです。さらに、FC2ブログを運営するFC2,Inc.は、ネバダ州ラスベガスに本社を置く米国法人のため、必要書面や一部の証拠等を英訳する必要があります。当事務所では、このFC2,Inc.が管理するサーバー上で運営されている掲示板サイトに関して、仮処分を申し立て、書き込みの削除とIPアドレス開示請求を成功させました。詳細については、下記記事で解説しています。

ログの削除禁止命令または通知

裁判所からIPアドレスの開示命令を受けて、投稿者のIPアドレスを入手すれば、投稿者が記事を投稿する際に使っていたプロバイダを特定できます。プロバイダは、そのIPアドレスを使用している者のログ(コンピュータの利用状況などの記録)を保存しています。しかし、ログは永久に保存されているわけではなく、特に、携帯回線の場合は約3ヶ月で消されてしまいます。ログがなくなってしまうと、投稿者の記録を確認することができなくなります。これを防ぐため、プロバイダに対し、ログの削除をしないよう禁止命令を出してもらう必要があります。このログの削除禁止命令については、また別の裁判手続をする必要があります。

ただ、プロバイダに対し、「これから住所氏名開示請求を行うので、命令が出るまでログを残しておいてほしい」という内容の通知を出せば、裁判手続まで起こさなくてもログを削除しないでおいてもらえる場合もあります。そのため、いきなり裁判手続をするのではなく、通知を出すことを検討したほうがよいかもしれません。通知を行うとしても、その投稿の違法性を法的に主張したり、それを立証したりする必要はあります。法的な専門知識が必要になりますので、手続に詳しい弁護士に依頼しましょう。

住所氏名の開示請求

ログを保存しておいてもらうよう通知を出した後、プロバイダに対し、投稿者の住所氏名開示請求手続を行います。住所氏名開示請求は、IPアドレスの開示請求とは異なり、仮処分により請求することはできません。正式な裁判手続を経る必要があります。

例えば、FC2ブログに「A病院で医療ミスがあり、後遺症が残って大変な思いをしているが、院長が圧力をかけてもみ消そうとしてきた」という記事が投稿された場合であっても、その記事にしっかりとした証拠や根拠があり、また、その情報が世に出回ることが公共の利益に適うと考えられる場合には、投稿者の住所氏名は開示されるべきではないといえるでしょう。住所と氏名は、個人情報の中でも特に大切な情報であるため、正当な理由なく開示させることはできません。裁判所は慎重に審議を行って、その投稿の違法性を認めた場合にのみ、住所氏名の開示命令を出すことになります。

投稿者に対する損害賠償請求

住所氏名開示請求が認められれば、記事を投稿した時に使用していたインターネット回線の契約者の住所氏名が開示されます。住所氏名が特定できれば、投稿者特定手続にかかった弁護士費用や損害に対する慰謝料などを請求することができるようになります。

損害賠償請求を行って、きちんと損害賠償金が支払われ、弁護士費用にあてられれば、被害者の費用負担はなくなります。ただし、投稿者の特定ができないかもしれないリスクや、たとえ投稿者の特定に成功しても、損害賠償金が弁護士費用に満たないリスクがありますので、注意が必要です。

また、FC2,Inc.は米国法人のため、相手方が日本法人のケースと比べると、20万円ほど弁護士費用が高くなることが予想されます。必要書面の英訳をしたり、米国法人の登記を取得したりする必要があるからです。IPアドレスの開示請求の限界やデメリットについては、下記記事で詳しく解説しています。

まとめ

FC2ブログは、多くの人が利用したり、閲覧したりしているブログサービスです。誰でもブログを開設して記事を投稿することができるため、中には、誹謗中傷や名誉毀損にあたると思われるような悪質な記事が投稿されてしまうこともあります。このような記事が投稿されている場合、その投稿者を特定するためには、複数の裁判手続が必要になります。

投稿者を特定できれば損害賠償請求をすることができますが、損害賠償金が支払われても、弁護士費用や損害額に満たず、被害者に金銭負担が残ったままになってしまうこともあります。投稿者特定手続は、高度な専門知識を必要とする難しい手続です。FC2ブログに投稿されている悪質な記事にお悩みの場合は、インターネットの誹謗中傷対策に詳しい弁護士へ早めに相談するのがおすすめです。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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