検索のサジェスト汚染が起こる原因や放置しているリスクを解説
GoogleやYahoo! JAPANの検索窓にキーワードを入力して検索すると、関連のある語句が予測表示されます。このようなワードのことをサジェストキーワードと呼びます。
しかし、中には
- 〇〇 ブラック企業
- △△△ 怪しい
- ■■■ 詐欺
といった根拠のないネガティブワードが表示されることがあります。もし自分の会社や事業などを検索してこのようにネガティブワードが表示されてしまっている場合、どうすればよいかを詳しく解説します。
この記事の目次
サジェスト汚染とは
サジェスト機能自体はユーザーにとって便利な機能ですが、ネガティブワードが続けば企業のイメージダウンに繋がってしまうというリスクもあります。
例のように、検索エンジンのサジェスト欄に意図的に悪質な関連キーワードが多数表示されるようにする行為、又はその結果をサジェスト汚染といいます。
サジェスト機能の仕組みと汚染の原因
サジェスト汚染がなぜ起きるのか、その原因を知るためには、GoogleとYahoo! JAPANのサジェストがどのようなアルゴリズムに則って表示されているのかを理解する必要があります。
①Googleサジェストの仕組み
Googleのサジェストは以下2つのデータを基に表示を行っているとされています。
- 対象のキーワードで多くの検索が行われているか
- 対象のキーワードが含まれるサイトが多数存在しているか
Googleサジェストが表示される条件は、多くの人が検索を行い、かつそれを裏付けるようなサイトが存在することです。
例えば、5ちゃんねるや爆サイのような大型掲示板で、あるワードやURLが複数のスレッドに書き込まれるとします。すると同時多発的にそのワードについて調べたり、リンクを踏む人が増えます。これによってサジェスト表示の条件が満たされ、サジェストに優先的に表示されることとなります。そして最初に出てくるサジェストを見た人が、またその検索ワードで検索し・・・という仕組みで広まっていきます。
またGoogleサジェストには上記2つの他に、現在地によって検索結果が変わるという特性もあります。例えば東京駅と京都駅で「カフェ」と検索した場合、検索結果は全く異なります。つまり、検索した地域に関連のあるサイトが検索結果に表示されるのです。ユーザーの検索意図を汲んで有用とされるサイトを表示するためのアルゴリズムです。
②Yahoo! JAPANサジェストの仕組み
Yahoo! JAPANのサジェストはGoogleと違いシンプルで、検索ボリュームを基にサジェストの表示が行われるとされており、
- 対象のキーワードで多くの検索が行われているか
が表示に関わるデータとなります。つまりYahoo! JAPANサジェストに表示されるのは検索数上位のキーワードなのです。
Yahoo! JAPANサジェストでは反映時間が早く、Twitter等で話題になった内容や、ニュースで大々的に取り上げられた内容が速やかに反映されます。
サジェスト汚染の原因
要するに、「●● 詐欺」など「会社名+ネガティブワード」の検索が、多くの人によってたくさん行われることで、サジェスト汚染が発生すると考えられます。
よって、上記で紹介した検索エンジンの仕様を悪用し、サジェスト欄をネガティブワードで埋めていき、故意にサジェストを汚染させることが可能です。
例えば、掲示板の複数のスレッド内にサジェストで表示させたいネガティブワードを書き込んで繰り返し検索をかける、SNSでネガティブワードが書かれたURLにリンクを貼り拡散させる、特定の企業や個人を標的にしたネガティブなWEBページを大量に作成する、等でもサジェスト汚染を引き起こせると思われます。
近年は、検索エンジンのアルゴリズムが最適化されると共にサジェスト汚染の被害は減少していますが、決してゼロになることはないでしょう。
サジェスト汚染を放置しているリスク
サジェスト汚染を放置していると
- 企業ブランドのイメージが低下する
- 求人応募数の低下
- 社員のモチベーションの低下
といった会社への悪影響があります。
リスク1.企業ブランドのイメージが低下する
例えば顧客が自社製品を検索した時、
- 「〇〇 不良品」
- 「〇〇 事故」
- 「〇〇 最悪」
といったネガティブな言葉が並んでいるのを見たらどう思うでしょうか。
その言葉が事実無根であったとしても、やはり製品の印象は悪くなりますし、一旦は製品に興味をもった顧客が不安になり購入をやめる可能性もあります。
リスク2.求人応募数の低下
例えば弊所をGoogleで検索すると、サジェストには
- モノリス法律事務所 評判
- モノリス法律事務所 年収
- モノリス法律事務所 採用
などが挙がります。このことから、昨今入社希望者が企業について、ネットで応募先企業を検索することが多いことが分かります。
検索をかけた際、ネガティブワードが並んでいたら不審に思う応募者も少なくないでしょう。サジェスト汚染がきっかけで採用の幅が狭まることが危惧されます。
リスク3.社員のモチベーションの低下
また従業員も、自社や自分の関わる製品・サービスがSNSを通じて悪評に晒された場合、モチベーションや生産性が低下してしまうことが予想されます。このように、会社内部への影響も深刻です。
サジェスト汚染の問題点
サジェスト汚染はなかなか消えない
サジェスト汚染の問題点は、一度検索エンジンに登録されてしまうと、なかなか消えないことです。
根拠がないサジェストでも一旦表示されてしまえば、ネガティブであればあるほど注目を集めやすく、興味本位でさらに検索されます。
いつの間にか定着し、上位表示され、当該の検索語と非常に強い関連をもった言葉として表示され続けるという悪循環が生まれます。
サジェスト汚染は個人でも行える
また、個人で汚染行為が行えることも問題です。実際にネット上ではプログラムを用いて掲示板や「Yahoo!知恵袋」などに大量のページを作ることでキーワードの関連度を上げ、関連キーワードを汚染する方法が公開されており、そのためのツールを購入することが可能です。
なお掲示板への連続書き込みや同一内容を複数スレッドに投稿する行為は「荒らし」として削除の対象になり得ますが、スレッドの趣旨に沿って加筆修正を行った内容であるなら、このように個人で大量の投稿を行う事も可能です。
つまりある程度のWEB知識があれば、個人でサジェストを操作することが可能なのです。
サジェスト汚染の削除
最高裁判所は、いわゆる「忘れられる権利」裁判において、下記のように検索エンジンの社会的役割について、言及しています。
検索事業者による検索結果の提供は、公衆が、インターネット上に情報を発信したり、インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしている。そして、検索事業者による特定の検索結果の提供行為が違法とされ、その削除を余儀なくされるということは、上記方針に沿った一貫性を有する表現行為の制約であることはもとより、検索結果の提供を通じて果たされている上記役割に対する制約でもあるといえる。
最高裁判所平成29年1月31日判決
こうした判例もあるため、明らかなサジェスト汚染が起こっていたとしても、検索エンジン側ではなかなか削除には動いてくれません。
Googleのオートコンプリートポリシー
ただし、Googleの場合は、オートコンプリートポリシーにおいて、
Googleでは、不適切な検索候補が表示されないよう最善を尽くしていますが、常にそれが実現できているとは限りません。表示された検索候補が以下のポリシーのいずれかに違反すると考えられる場合は、検索候補を報告する方法をご確認ください。
引用:Google のオートコンプリートの候補の仕組み
と規定し、具体的な違反例として
- 暴力的または残虐な内容の検索候補
- 露骨な性的表現、下品な表現、冒とく的な内容を含む検索候補
- 特定の集団に対する憎悪をあおる、容認する、または助長するような検索候補
- 著名人に対する不適切かつ中傷的な検索候補
- 危険な検索候補
をあげており、削除申請フォームから申請することで削除できる可能性があります。
企業が被るサジェスト汚染の場合、Googleは「リクエストに沿って、適用される法律のもと、または裁判所命令に応じて、コンテンツを削除することがあります」としており、名誉毀損に当たる内容など、法的に問題がある内容に関しては、同様に削除申請を行う事が可能です。
発信者情報開示請求
ネガティブな投稿が行われた当該サイトの記事に対しては、削除の仮処分申請を行い、発信者情報開示を請求して投稿者を特定し、当該行為に対して損害賠償を求めることが可能です。
この裁判結果をGoogleやYahoo! JAPANに通知し、削除申請を行うのが、サジェスト汚染に対処する最も確実な方法となります。
裁判で権利侵害が認められれば、GoogleもYahoo! JAPANも速やかに対応します。Yahoo! JAPANの場合3~7日間で、Googleも約1~2ヶ月程度で削除されています。
まとめ:サジェスト汚染を削除するなら弁護士へ相談しよう
悪質なサジェストや関連キーワードが表示されることは、企業にとって風評被害であるだけでなく、それによって自社従業員が被害を受ける可能性もあります。
しかしながら、悪質な情報は真偽のいかんに関係なくどんどん拡散し、放置すれば風評の完全な削除が困難になってしまいます。
もしサジェスト汚染の被害に遭ったときは、被害を最小限に食い止めるために速やかに削除依頼等の対応をしましょう。ネット上の風評問題に対し経験豊かなモノリス法律事務所へぜひご相談ください
カテゴリー: 風評被害対策