ガールズちゃんねるの投稿者を特定する方法と弁護士費用の相場
ガールズちゃんねる(Girls Channel)とは女性が気軽に書き込める匿名掲示板であり、とても人気があります。女性が好む話題(ゴシップや芸能関係、家事育児、恋愛)についての投稿が豊富です。しかし、匿名掲示板であるため、誹謗中傷や真実でない噂やデマを書かれたりする可能性があることは否めません。そこで、ガールズちゃんねるに誹謗中傷の書き込みをされた場合に、どのような対策をとれば良いのかを説明します。風評被害対策として取ることが考えられる手段の中でも特に投稿者特定について解説していきます。
この記事の目次
「ガールズちゃんねる」とは
ガールズちゃんねるはどのようなサイトなのか
ガールズちゃんねるは、株式会社ジェイスクエアードが運営しています。キャッチコピーは「女子の女子による女子のためのおしゃべりコミュニティ」であり女性メディアとして国内最大級のアクセス数を誇っています。ガールズちゃんねるは、短文や一言だけのコメントの書き込みがよく投稿されています。また、会員登録が不要は不要であり、そのまま投稿することができるため、誹謗中傷コメントを書き込むことに対する心理的なハードルが低いといえます。2ちゃんねるなど他の匿名掲示板と同様に、誹謗中傷の書き込みがされやすい傾向にあります。
また、ガールズちゃんねるにおいて特徴的なのが、各コメントに対して閲覧者がプラスボタンまたはマイナスボタンを押せるシステムになっていることです。これは、コメントに賛同する場合はプラスボタン、反対の場合はマイナスボタンを押すのですが、プラスボタンの数が多いほど強調的に表示されます。そのために、過激なコメントをしてプラスボタンを稼ぐ例が散見されます。芸能人のゴシップや悪い噂など誹謗中傷に賛同する閲覧者が多いトピックにおいては過激なコメントほど評価されるため、結果として誹謗中傷のコメントが増加しやすいといえます。
ガールズちゃんねるにおける誹謗中傷の例
ガールズちゃんねるは女性が書き込むことが中心ですが、ゴシップニュースなど芸能人関係の話題について誹謗中傷が書かれることが多いです。誹謗中傷の内容としては、芸能人や関係者について、本名や住所などといった個人情報やプライベートな情報を晒すものや、容姿等を中傷するものが後を立ちません。最近も、男性アイドルグループのメンバーが結婚することになった際、結婚相手の女性に対して誹謗中傷の書き込みが殺到し、その女性の代理人である弁護士の要請を受けて、運営者がこの女性に関するすべての書き込みを削除する措置をとったことが話題となりました。
また一般人であっても、ガールズちゃんねる上に個人情報を掲載されたり、「炎上」した人のことをさらに書き込まれたりするなど、誹謗中傷の被害に遭うこともしばしばあるようです。会員制サイトと異なり、匿名性が高いサイトであるということも、そのような過激な口コミを多くしているとも言えるでしょう。
ガールズちゃんねるでプライバシー権や名誉権などを侵害するような口コミを書かれると、ネット社会だけでなく、一般社会での生活にも悪影響が出るおそれがあります。したがって、風評被害による影響は非常に大きいため、少しでも不自然だと感じたら削除請求や投稿者の開示を検討すべきです。
後述するように、投稿者を特定するためにはその投稿が違法といえる必要があり、そうではない投稿については、投稿者特定を行うことはできません。違法だと判断されるためには、権利侵害が明白にあるかどうかという点が重要で、内容の悪質性についても高度であることが要求されます。そのため、問題の投稿が違法かどうかというのは、投稿者特定を考える上での重要なポイントです。たとえば、犯罪事実を指摘するものについては、権利侵害の明白性が認められやすいという裁判例の傾向があります。詳しくは下記リンクで解説しています。
投稿者特定の手順1:IPアドレス開示請求
IPアドレスとは
投稿者特定として最初に、 IPアドレスの開示請求をしていきます。IPアドレスはどの端末からそのデータが送信されたのかを記録するために残してある端末識別情報です。IPアドレスがわかると、どの端末からデータが送信されたのかが明らかになります。
ガールズちゃんねるは会員登録不要であり、匿名での投稿が可能です。つまり、ガールズちゃんねるの運営者はある風評口コミを投稿した人物について、その人物の住所、メールアドレスすら知りません。このため、仮に「投稿者の住所や氏名を開示せよ」と求めても、「情報を持っていないので開示できない」ということになりますから、その代わり運営者は、投稿を行った者のIPアドレスであれば記録しているため、そのログを開示させるという手段をとることになります。
仮処分手続による投稿者のIPアドレス開示請求
IPアドレスを開示させるためには、基本的に裁判所手続を通して行います。ガールズちゃんねるは、明らかに違法である場合や規約違反のケースであれば、問い合わせで削除を受け付けてくれる可能性もあるのですが、IPアドレスの開示請求については、原則的に裁判所手続を用いなければ実現できません。なお、削除については下記記事にて詳細に解説しています。
この裁判手続は、具体的には、裁判ではなく仮処分という、迅速な手続となります。本裁判と比べると短く1-2ヶ月程度での実現が可能です。そのときの弁護士費用の相場は、
着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度
風評被害の弁護士費用と賠償フローとは?
などと言われています。この金額では、IPアドレスの開示・削除を両方行う場合です。もっとも、事案や削除したい口コミの量や内容に応じて費用は変わります。
投稿が違法であることを主張・立証する必要
その投稿がプロパイダ責任制限法に抵触するものであることを主張・立証すると、このIPアドレス開示請求が裁判所に認められます。具体的にプロバイダ責任制限法4条1項は、
「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」
と定めています。つまり違法である必要があります。
ところで削除をしてもらえれば、損害賠償請求はなくてもよいような場合裁判手続ではなく、削除申請をすることで自主的な削除を求めることができる可能性があります。
その場合、以下のどちらかに該当することが必要です。
- 利用規約違反
- 違法
そして、削除したい口コミがガールズちゃんねるの禁止事項に該当すれば、違法とまではいえなくても削除を依頼することが可能です。例えば、容姿等の中傷(ブス、ハゲ)は人を侮辱するものといえ、利用規約が禁止する「他者を不当に差別もしくは誹謗中傷…する行為」(利用規約9条1項c.)に該当すると主張ることが考えられます。これはあくまでもガールズちゃんねるの運営者が自主的に削除する基準というだけで、必ずしも違法に該当するとは限りません。つまり、サイトへの請求の際は、違法でなくとも削除に成功するケースが存在するのです。
一方IPアドレスの開示請求を認めさせるには、
- その投稿が違法であるという法的な主張(権利侵害が明白に存在すること、違法性阻却事由がないこと)
- それらを基礎付ける証拠
が必要ですが、具体的にどのような証拠を出せばよいのか、どのような主張をするべきかは個別の事案によって様々です。弁護士に相談して適切な主張と証拠を選ぶことが重要です。
投稿者特定の手順2:ログの削除禁止
IPアドレスを請求で入手できると、次のステップとしていよいよプロバイダに対して投稿者の氏名住所を開示するのですが、その前に一つ「ログの削除禁止請求」をしなくてはなりません。プロバイダとは接続業者のことをいい、J:COMやソフトバンクなど携帯会社や回線業者がこれに当たります。プロパイダは契約者の情報を知っているので、 IPアドレスを手掛かりにログと契約者の情報を照らし合わせて投稿者を特定します。
そこで出てくる問題点は、プロバイダは一定期間を経過するとIPアドレスを削除してしまうというものです。プロパイダに対して、ログを削除しないように求めなければなりません。裁判手続によるのですが大抵のプロバイダは協力的で、通知を出せば応じてくれることがあります。ただ、プロバイダに対する通知にも法的な主張を記載しなければならないし、仮に応じてもらえなければ裁判になるので弁護士に相談することが妥当です。
投稿者特定の手順3:住所氏名開示請求
プロバイダがログを保全してくれた場合、プロバイダに対して投稿者の住所氏名開示を求めます。この部分は、住所・氏名は個人を特定するための重要な情報ですから、正式な裁判手続となります。例えば、仮にガールズちゃんねるで、ある芸能人について「反社会的勢力団体Aと繋がっている」と投稿したとしても、その投稿には十分な証拠があるだとか、政治的主張の一つとして投稿しているとか、そのような事情があれば、表現の自由が尊重されて認められない可能性があります。裁判所は、表現の自由とプライバシー侵害・名誉毀損等により侵害される利益を比べて、公平な立場から慎重に判断してその結果違法と判断された場合、開示命令をだします。
この部分の弁護士費用の相場は一般的に、着手金が30万円程度、成果報酬金が20万円程度と想定されています。
投稿者特定の手順4:損害賠償請求
上記の裁判で支給が認められて投稿者の氏名住所が開示されれば、当該投稿者に対して損害賠償請求を直接提起することができます。この手続きにも勝てば、弁護士費用や慰謝料なども回収可能です。
ここまでたくさんのステップが必要でした。これらが全て認められるかどうかは特に最初の手続であるIPアドレスの開示などが重要です。以下のリンク先の弊所記事にて解説しているのでご覧ください。
まとめ
ガールズちゃんねるで投稿者を特定する一連の裁判手続は専門的かつ複雑な大変な手続きです。しかし、この手続きにより投稿者を特定できれば、相手方に対し損害賠償請求が可能となります。誹謗中傷した相手に対して具体的な主張や対策が取れるのは法的手続きによってしか実現しませんから、やってみる価値は高いと言えます。匿名の相手に誹謗中傷されると、胸が痛みますし、また社会生活上実際に不利益も受けてしまうことがありますから、法的手続を取って冷静に対処するのが望ましいです。お困りのことがあれば、ぜひ誹謗中傷対策に強い弁護士にお気軽にご相談ください。
カテゴリー: 風評被害対策