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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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キャラクターのパブリシティ権や各種知的財産権の関係とは?

例えば、ネットオークションやフリマなどで、自作のトレーディングカードを販売している人を見たことがある人も多いと思います。ネットオークションやフリマなどでは、自作のトレーディングカードが、「オリジナルカード」や「オリカ」などと記載され販売されていることが多いです。

こうした自作のトレーディングカードは、自分で考えたキャラクターや自分が撮影した写真(被写体の肖像権やパブリシティ権などを侵害する場合は除く。)を使用している場合には、法律上の問題は生じないものと考えられます。

ただ、自作のトレーディングカードに他人がデザインしたキャラクターや他人が撮影した写真などを使用する場合には、他人の著作権、肖像権、パブリシティ又は商標権を侵害する可能性があります。

これは、「キャラクター」というものには、どのような権利が関わるのか。そのキャラクターを自作トレーディングカード等に使用した場合、どのような法律問題が発生するのか、という問題です。

本記事では、自作トレーディングカードの販売を例に、キャラクターを巡る、パブシリティ健など知的財産権を中心とした法律上の問題点について説明をします。

著作権との関係

著作権が問題となる場面

自作のトレーディングカードを販売する際に、著作権が問題となるケースは、他人がデザインしたキャラクターが使用されているケースや他人が撮影した写真が使用されているケースです。例えば、人気キャラクターが使用されたトレーディングカードや芸能人やスポーツ選手の写真が使用されたトレーディングカードなどが考えられます。

著作権とは

著作権については、特許権のように登録等の手続を行わなくとも、著作をした時点で、何らの手続を要することなく法律上当然に発生します。著作権は、法律上認められるために、特別な手続を要しないことから、無方式主義と言われます。そして、著作物について、著作権法2条1項1号では、以下のように規定されています。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

この著作権法2条1項1号から、創作物の全てが著作権法でいう著作物に該当する訳ではなく、著作物と認められるためには、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するといえる必要があります。

キャラクターの著作権

それでは、キャラクターに著作権は認められるでしょうか。キャラクターについて、当然に著作権が認められると考える人もいるかと思いますが、実は、イメージとしてのキャラクターに著作権は認められません。上記のように、著作権法2条1項1号で規定されているように、著作物というためには、思想又は感情を創作的に「表現」することが必要です。そのため、イメージとしてのキャラクターは著作物ということはできません(ポパイネクタイ事件、最判平9.7.17)。

ただ、キャラクターがイメージではなく、具体的に表現されている場合には、著作権が認められます。そのため、キャラクターのイラストをそのまま使用し、自作のトレーディングカードを作成した場合には、著作権侵害となる可能性があります。

一方、キャラクターを用いて、自分で絵を作成し、その絵を使用してオリジナルカードを作成した場合には、著作権侵害とならない可能性があります。
ただ、すでに存在している具体的なイラストとの関係で、既存のイラストや画像に依拠して作成されたイラスト(依拠性)で、既存の著作物の表現形式上の本質的特徴部分を、新しい著作物からも直接感得できる程度に類似している(類似性)場合には、著作権侵害となりますので、他人のイラストを使用する場合、著作権侵害と判断されるケースが多いものと考えられます。

写真の著作権

次に、写真については、著作権が認められるでしょうか。
写真については、著作権法2条1項1号に該当する場合には、著作権が認められることとなります。

写真については、被写体の配置、撮影の角度及び光の差し込み方など、撮影のプロセスにおいて、撮影者の何らかの思想又は感情が創作的に表現される場合があります。このような場合には、著作権法2条1項1号に該当し著作権が認められることとなります。

一方、著作権法2条1項1号に該当しない極めて単純に機械的に撮影された写真については、著作権が認められないこともありえます。

著作権侵害となる場合

キャラクターについて

自作のトレーディングカードに、他人がデザインしたキャラクターのイラストを使用した場合には、イラスト作成者の著作権を侵害する可能性があります。また、後述する商標権との関係で問題が生じる可能性もあるので注意が必要です。

写真について

自作のトレーディングカードに、他人が撮影したキャラクター、芸能人やスポーツ選手の写真を使用した場合、写真を撮影した人の著作権を侵害する可能性があります。

一方、自らが撮影した写真をトレーディングカードに使用する場合、写真を撮影した人の著作権を侵害することありません。
ただ、他人が作成したイラストを撮影した写真を使用するというケースであれば、被写体となったイラストの著作権者の著作権を侵害する可能性があります。
また、著作権侵害とならない場合でも、後述する肖像権やパブリシティ権との関係で問題が生じる可能性があるので注意が必要です。

肖像権との関係

肖像権が問題となる場面

自作のトレーディングカードを販売する際に、肖像権が問題となるケースは、使用されている写真に特定の人の顔や容姿が使用されているケースです。
例えば、芸能人の写真が使用されたトレーディングカードやスポーツ選手の写真が使用されたトレーディングカードなどが考えられます。

肖像権とは

肖像権とは、特定の者の顔や容姿が、特定の者の許可なく、「撮影」されたり、「公表」されたりしない権利のことです。肖像権については、肖像権を明示的に認めた規定は法律上存在しません。肖像権は、憲法13条の「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」という、幸福追求権を根拠に認められる権利であり、判例等により確立されてきた権利になります。

肖像権侵害となる場合

自作のトレーディングカードに芸能人やスポーツ選手の写真を無断で使用する場合、当然のことながら、肖像権の利用についての許諾がありません。そのため、芸能人やスポーツ選手の写真を自作のトレーディングカードに使用すると、肖像権を侵害する可能性があります。ただ、肖像権は、プライバシー権の一つの形と考えられており、芸能人やスポーツ選手との関係では、次に紹介するパブリシティ権との関係が重要となります。

パブリシティ権との関係

パブリシティ権が問題となる場面

自作のトレーディングカードを販売する際に、パブリシティ権が問題となるケースは、著名人の写真などが使用されているケースです。また、パブリシティ権に関しては、人だけでなく、例えば、競走馬など、有体物に認められるかという点も問題となります。仮に、有体物のパブリシティ権が認められないのであれば、自ら撮影した競走馬の写真で自作のトレーディングカードを作成し、販売しても、パブリシティ権を侵害することにはならないと考えられます。

パブリシティ権とは

著名人の氏名や肖像はこのように顧客吸引力を持っているので、一つの経済的利益、または価値を有するようになります。そして、この自己の氏名や肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する(つまり無断で第三者に使わせない)権利を、パブリシティ権といいます。

競走馬にパブリシティ権は認められるか

競走馬にパブリシティ権が認められるかという問題について、最高裁判所は、ギャロップレーサー事件の上告審において以下のように判断しています。

「1審原告らは、本件各競走馬を所有し、又は所有していた者であるが、競走馬等の物の所有権は、その物の有体物としての面に対する排他的支配権能であるにとどまり、その物の名称等の無体物としての面を直接排他的に支配する権能に及ぶものではないから、第三者が、競走馬の有体物としての面に対する所有者の排他的支配権能を侵すことなく、競走馬の名称等が有する顧客吸引力などの競走馬の無体物としての面における経済的価値を利用したとしても、その利用行為、競走馬の所有権を侵害するものではないと解すべきである」

以上の最高裁判所の判断から、一般的に、有体物については、パブリシティ権は認められないものと考えられます。

パブリシティ権侵害となる場合

芸能人やスポーツ選手の写真については、当該写真が使用されているという理由で購入をしたいと考える人がおり、顧客吸引力を有しているといえます。そのため、自作のトレーディングカードに、芸能人やスポーツ選手の写真を無断で使用すると、被写体となった芸能人やスポーツ選手のパブリシティ権を侵害し、違法となる可能性があります。

商標権との関係

商標権とは

まず、商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマークやネーミング(識別標識)です。
このような、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です。商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものなどのタイプがあります。
また、平成27年4月から、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標についても、商標登録ができるようになりました。また、平成27年4月から、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標についても、商標登録ができるようになりました。

商標権が問題となる場面

自作のトレーディングカードを販売する際に、商標権が問題となるケースは、主に2つのケースが考えられます。

  • 1つ目は、商標登録されているキャラクターのイラストを使用するケースです。
  • 2つ目は、商標登録されているロゴを使用するケースです。

商標権侵害となる場合

キャラクターの図柄やイラストについては、商標登録することが可能です。
一般的には、キャラクターの代表的なポーズで商標登録が行われています。商標登録されているキャラクターを用いてトレーディングカードを作成し、販売を行うと商標権侵害となります。また、商標登録されているロゴをトレーディングカードに使用した場合にも商標権侵害となります。

根強い人気のあるトレーディングカードに遊戯王があります。遊戯王のカードについては、高額で取引される場合も多く、自作のトレーディングカードを販売している人も多いです。近年では、遊戯王カードを自作し、商標法違反(類似商標使用)で逮捕されているケースもみられます。

まとめ

以上、自作のトレーディングカードを販売することの法律上の問題点について説明をしました。近年、インターネットの発展により、ネットオークションやフリマで商品を販売することが容易になり、自作のトレーディングカードが販売されるケースも増えてきました。ただ、本記事で説明したように、他人がデザインしたキャラクターを使用する場合や芸能人などの写真を使用する場合には、他者の権利を侵害する可能性があります。そこで、自作のトレーディングカードの販売を考えている人は、しっかりと法律問題を理解しておく必要があります。これらの問題については、著作権、肖像権、パブリシティ又は商標権など、法律的な知識や専門的な判断が要求されますので弁護士に相談をするようにしてください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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