Googleの口コミ代行は違法?景品表示法との関係と罰則を解説

Googleマップ等に投稿された口コミや評価は、一般消費者にとっては重要な情報源です。今では、ネット上の口コミ評価を軸に店選びを行うのは当たり前になりつつあります。もはや、店舗経営者や企業にとって、「口コミ」は“ビジネスの生命線”と言っても過言ではありません。
そのため、口コミ代行業者に依頼して、ネット上の評価をあげて集客しようとする企業もいます。
ただ、安易に口コミを集めようとして違法な口コミ代行サービスを利用すると、法令やGoogleが定めるガイドラインに違反することとなり、最悪の場合アカウントが停止される恐れがあります。
本記事では、そのようなリスクを避けるために、口コミ代行が違法となる場合について解説します。
この記事の目次
口コミ代行の4つのサービス
口コミ代行サービスとは、特定の店舗や商品に対して、店舗の経営者や商品の販売業者からの依頼を受けて、口コミを投稿するサービスのことです。
口コミ代行の主なサービスは以下の通りです。
高評価口コミの投稿代行
口コミ代行と聞いて、最初に思いつくサービスが投稿代行です。商品やサービスの魅力を伝えるために、代行業者が顧客に代わってポジティブな口コミを投稿します。
口コミ評価が消費者にとって重要な昨今、評価を上げる施策自体は企業のマーケティング戦略として有効です。
SEO対策
企業にとって、消費者が検索した際の検索結果の順位は非常に重要です。
検索エンジンでの評価を高めるために、口コミ代行業者の中には、キーワードを意識した口コミを投稿し、検索結果の順位を上げることを目的とするサービスを提供しているSEO(Search Engine Optimizationの略で、検索エンジン最適化を意味する)専門業者も存在します。
評判管理(レピュテーションマネジメント)
企業にとって、高評価の口コミ以上に気になるのが低評価の口コミです。低評価の口コミは目立ちやすいだけでなく、それを目にした消費者にネガティブな印象を与えかねません。
そこで、低評価の口コミが目立つ場合、それを埋もれさせるために高評価の口コミを増やす施策が行われることがあります。
ターゲット特化型の口コミ
ターゲット特化型の口コミとは、特定のターゲット層(顧客層)に向けて、その層のニーズや関心に応じた内容で口コミを投稿することです。
単に商品やサービスを良いと評価するだけではなく、ターゲット層が共感しやすい表現や、実際に直面しているであろう課題に刺さる内容を意識して作成します。
それぞれのターゲットが共感しそうな具体的なエピソードを盛り込んだりメリットを強調したりすることで、商品やサービスが「自分にあっているかも」と思わせやすく、高い宣伝効果が期待できるというメリットがあります。
口コミ代行は違法なのか

ここまで、具体的な口コミ代行サービスの内容について紹介してきました。これらの口コミ代行サービスを利用して評価をあげようとする行為は全て違法なのでしょうか?
結論からいうと、口コミ代行行為が必ずしも法律に違反しているというわけではありません。
ただし、実際の利用者ではない業者が口コミだけを代行する行為(いわゆる「サクラ」)は、虚偽の口コミ投稿となるため、Googleが定めたポリシーに違反します。
Googleが禁止する虚偽の口コミ投稿とは
Googleは、実体験に基づかない口コミや、複数アカウントを使った同一店舗への投稿など、不正な評価操作を防ぐために、口コミ代行サービスを利用して虚偽の投稿やスパム行為をすることは「虚偽のエンゲージメント」に該当するとして、ポリシーで禁止しています。
虚偽のエンゲージメントに該当するのは以下のコンテンツの投稿が挙げられます。
- 実体験に基づいておらず、対象の場所や商品を正確に表現していないコンテンツ
- 企業が提供するインセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)が誘因となって投稿されているコンテンツ(インセンティブと引き換えに否定的なクチコミの修正や削除の依頼を受けて投稿されるコンテンツも含む)
- 場所の評価を操作するために複数のアカウントから投稿されているコンテンツ
- エミュレータやその他のデバイス改ざんサービス、改変されたオペレーティングシステム、またはその他の手段を使って、実際のエンゲージメントを模倣したり、センサーのデータもしくは分析結果を操作したりするなど、通常の運営を妨害もしくは混乱させるために投稿されているコンテンツ
また、販売者が次の行為を行うことも禁止されています。
- 実体験に基づいていないコンテンツの投稿を募ったり、促したりする行為。
- レビューの投稿や否定的なレビューの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為。
- 顧客からの否定的なクチコミの投稿を妨げたり禁止したり、肯定的なクチコミを選択的に募ったりする行為。
- 競合他社のお店や場所について、その企業や商品の評判を傷つけるコンテンツを投稿する行為。
ポリシーに違反した場合のリスク
Googleは、高度な自動検出システムを活用してこれらの不正行為を監視しており、違反が見つかった場合、口コミが自動的に削除され非表示になるだけでなく、書き込みを行ったアカウントが停止されることもあります。
さらに、MEO(マップ検索エンジン最適化)ペナルティにより、検索結果の順位が下がってしまう危険があります。
さらに最悪の場合は、店舗等のGoogleビジネスプロフィールアカウントの停止措置が取られる可能性があります。
こうしたペナルティは、ビジネスのオンライン評価や信頼性に大きな影響を与える可能性があり、一度失った信頼を回復するのは非常に難しいものです。そのため、店舗やサービスの運営者としては、ガイドラインを守りながら、実直で誠実なサービスを提供することが大切です。
参考:Googleマップ|禁止および制限されているコンテンツ
口コミ代行が景品表示法違反になる場合
これまではGoogleが定めたポリシーに違反する場合を説明してきましたが、口コミ代行行為が違法となるケースもあります。それは景品表示法に違反する場合です。
口コミと景品表示法
景品表示法の目的は、一般消費者の利益を保護することであり、一般消費者が自主的・合理的に商品やサービスの選択ができなくなるような「偽った表示」や「過度な景品類を提供すること」に対して規制をしています。
景品表示法で禁止されている行為は、以下の2つです。
- 過大な景品類の提供制限及び禁止
- 広告などの不当な表示の禁止
関連記事:景品表示法(景表法)とは?わかりやすい解説と違反事例・罰則を紹介
口コミ代行が違法となる場合は、「不当表示」の規制に関連して問題となります。
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの。
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの。
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの。
景品表示法
口コミ代行行為の「不当表示」の該当性

「表示」とは、商品やサービスの品質や規格、価格など、消費者に向けた広告や表示のことです。消費者等によって書き込まれるのが口コミなので、消費者による口コミ情報は景品表示法で定義される「表示」には該当しないのが原則です。
しかし、商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、または第三者に依頼して掲載させるような場合はそのような原則には該当せず、景品表示法上の不当表示として問題となります。不当表示には下記の3つの類型があります。それぞれ個別に解説していきましょう。
1:優良誤認表示
優良誤認表示とは、以下の場合をいいます。
- 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
- 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
商品やサービスが、実際のものよりも優れていると表示する場合や、他社が販売する商品とほとんど変わらないのにかかわらず、あたかも優れているように虚偽の表示をする口コミ代行は、優良誤認表示として景品表示法に違反します。
例えば、エステやサロンなどで、「必ず⚪︎キロ痩せる」などといった口コミを投稿させることは、優良誤認表示違反として違法となる可能性が高いといえるでしょう。
2:有利誤認表示
有利誤認表示とは、以下の場合をいいます。
- 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
- 競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
例えば、「今だけ特別価格で〇〇円だった」などといった口コミや、真実でないのに「最安値であった」などといった口コミを投稿させることは、有利誤認表示に該当するといえます。
3:ステマ規制に違反する可能性
ステマ(ステルスマーケティング)とは、広告であることを隠した広告を指し、芸能人やインフルエンサー等が中立な第三者を装って商品やサービスの宣伝・紹介をしたり、広告主から対価を受け取っている業者が一般の消費者のふりをして好意的な口コミ・レビューを投稿したりする行為がこれに当たります。
令和5年10月から、ステマ規制によって「広告」表示義務を負うこととなりました。口コミ代行においても、ステマ規制に違反すると罰則が課されることとなり、注意が必要です。
関連記事:令和5年10月より「広告」明示が義務に。ステマ規制の運用基準について解説
違法な口コミを依頼したときのリスク
消費者庁は、景品表示法に違反する疑いがある場合、消費者の権利保護と市場の公正性を守るためにさまざまな対応を行っています。不当な表示や過剰な景品提供が疑われる場合、その解決に向けた調査や措置が実施されます。
消費者庁による調査および措置
景品表示法違反の疑いがある場合、消費者庁はまず、問題のある広告や販促資料を精査し、関連資料の収集を行います。また、事業者への事情聴取を行い、行為の意図や背景を確認します。
この際、事業者には弁明の機会が保証されています。
そして調査の結果、違反が認められた場合、消費者庁は事業者に対して以下の対応を取ります。
措置命令
不当表示により一般消費者に与えた誤解を取り除くための対応を命じます。
具体的には、
- 一般消費者へ誤認の周知
- 再発防止策の策定
- 今後同様の違反行為を行わないこと
が命じられるケースが多いです。
さらに、広告を依頼した事業者名が消費者庁や都道府県のホームページで公表されます。この公表だけでは「一般消費者への誤認の周知」が行われたとはならないため、事業者は日刊新聞紙に景品表示法上の不当表示を行った旨を掲載し、周知徹底を図るよう命じられる場合があります。
さらに措置命令に違反すると、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
また、事業者には3億円以下の罰金が科されるだけでなく、法人の代表者に300万円以下の罰金が科されることもあります。
課徴金納付命令
消費者庁は、不当表示を行った事業者に対し、景品表示法第5条第3号(過大な景品類の提供)を除き、他の要件を満たしている場合、課徴金の納付を命じることがあります。
課徴金は行政罰の一つで、行政上の制裁金です。そのため、前科はつきませんが公表されることによって企業価値が下がる恐れがあります。
この課徴金納付命令は、不当な行為による利益を回収する目的から、課徴金の金額は不当表示を継続した間の売り上げの3%となっており、会社の売り上げが高ければ高いほど高額になります。
参考:消費者庁「株式会社オンテックスに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」
確約手続の導入
景品表示法第4条(不当表示)や第5条(不当な景品類の提供)の違反行為が疑われる場合でも、事業者が自主的に問題を解決しようとする姿勢を示す場合があります。このような場合、消費者庁は「確約手続」を通じて以下の事項の更生を求めます。
- 違反行為の是正
- 再発防止のための具体的な取組み
参考:(消費者庁)景品表示法違反を行った場合はどうなるのでしょうか?
消費者からの情報で罰則を受けることも
また、景品表示法に違反する口コミ代行によるレビューを信頼して商品を購入したりサービスを利用したりした消費者が、消費生活センターに相談することにより行政罰が科される可能性もあります。
さらに、不当表示等による損害賠償を請求される可能性があることに加えて、積極的に騙そうという意思があったと認められる場合には、刑法上の詐欺罪に該当するとして、刑事罰を受ける恐れもあります。
不正競争防止法違反
さらに、事業者が口コミ代行を利用し、ランキング操作を行った場合、品質等誤認惹起行為に該当するとして、不正競争防止法第2条第1項第20号に違反する可能性があり、損害賠償請求を受ける恐れがあります。
実際に、大阪地方裁判所平成31年4月11日判決において、外装リフォーム業者が口コミサイトのSEO対策として、虚偽の口コミによりランキングを操作したことが認定され、損害賠償の請求を認容する判決が下されています。
参考判例:大阪地方裁判所平成31年4月11日判決
違法な口コミを代行したときのリスク

以上のような景品表示法違反によるリスクは、あくまで代行を依頼した側が負うことになるリスクです。そのため、実際に口コミを記入した代行業者は、景品表示法違反による制裁を受けるリスクは低いといえます。
したがって、代行業者側はなんらリスクを負わないようにも思えますが、代行業者の行為は不正競争防止法違反に該当する可能性があります。
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
二十 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為。
不正競争防止法
代行業者の行為は誤認惹起行為に該当する可能性があることから、不正競争防止法違反に基づいて、
- 侵害行為停止の請求
- 侵害行為をはたらくおそれがある者に対する予防請求
- 侵害行為を組成する物の廃棄など侵害の停止や予防に必要な措置の請求
が可能です(法3条)。
また、損害賠償請求・信頼回復措置請求がなされる可能性もあります。
他にも、名誉毀損罪(刑法230条)、信用毀損罪、偽計業務妨害罪(刑法233条)といった刑法上の刑事罰を受ける可能性があります。
さらに、医薬品や医療機器に係る誇大広告等の場合は薬機法により行政罰を受ける恐れがあります。
関連記事:口コミも薬機法の規制の対象となる?関連する法律を解説
その他、健康食品に係る誇大表示の場合には、健康増進法に基づく措置がなされる危険もあります。
参考:消費者庁|消費者の信頼を確保するための 消費者レビューの管理
まとめ:口コミ代行の違法性は弁護士に相談を
ここまで、口コミ代行行為の注意点について解説してきました。口コミ評価は企業や店舗経営者にとって非常に重要なマーケティング指標の一つであり、なるべく高評価を獲得して、集客に繋げたいと思うでしょう。
ですが、安易に口コミ代行業者等を利用して実態と合わない口コミを増やし、高評価を狙うことはGoogleのポリシーに違反したり、景品表示法をはじめとするさまざまな規制に違反する可能性があり、慎重に検討する必要があります。もし措置命令や課徴金が課されることとなれば、企業の信用やイメージ、経営に大きなダメージを与えることとなりかねません。
また、同時に、低評価の口コミや悪質な誹謗中傷などの嫌がらせ、炎上を狙った風評など、企業価値を毀損するような口コミの対策を行う必要があります。Googleマップの口コミにおける誹謗中傷などにお困りの方はこちらの記事をご参照ください。
関連記事:Googleマップ(マイビジネス)の口コミを削除する方法
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