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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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ネットショップ運営と法律 特定商取引法・不正競争防止法

今や私達にとって身近になったネットショッピング。購入するだけでなく、誰でも気軽にネットショップを開設できるようになりました。ただし、ネットショップ運営には様々な法律が関係しています。該当する法律に従った表示やサイト構成を行わないと、違法と判断される可能性があります。では具体的にどのような法律が問題になるのでしょうか?

この記事の目次

ネットショップ全般に関わる法律

ネットショップ運営に関係する法律としては、特定商取引法・不正競争防止法・景品表示法・電子契約法・特定電子メール法・個人情報保護法のような「ネットショップ全般に関わる法律」があります。ここでは特定商取引法と不正競争防止法について、解説します。

特定商取引法

特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。

ネットショップは、事業者がインターネットで広告し、インターネットの通信手段により申し込みを受ける取引なので、「通信販売」としてこの法律の対象となります。

特定商取引法における通信販売については以下のような行政規制等があり、違反すると業務改善指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分、または罰則の対象となります。

広告の表示(特定商取引法第11条、同規則第8条~第10条)

通信販売は、隔地者間の取引であり、消費者にとって広告が唯一の情報となるので、広告の記載が不十分、不明確であることから生じるトラブルを避けるため、広告に表示すべき事項が、細かく規定されています。

表示すべき事項には、「販売価格・送料」「代金の支払方法」「商品の引き渡し時期」「商品の売買契約の申し込みの撤回または解除に関する事」「事業者の氏名、住所、電話番号」や「商品に隠れた瑕疵(かし)がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容」「商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨および販売条件」などがあります。

例えば、ネットショップの「ヘルプ&カスタマーサービス」へ行き、「セキュリティおよびプライバシー・規約」などを見ると、「特定商取引法に基づく表示」とあり、販売業者名・住所・電話番号・販売責任者名等とともに、上の事項等が表示されています。

誇大広告等の禁止(特定商取引法第12条、同規則第11条)

消費者トラブルを未然に防止するため、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」は禁止されます。

未承諾者に対する電子メール広告(特定商取引法第12条の3、同法第12条の4、同規則第11条の2~同規則第11条の7)

消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者が電子メール広告を送信することは、原則として禁止されています。

ただし、契約の成立等を通知するメールの一部に広告が含まれる場合などについては、規制の対象外になります。

契約解除に伴う債務不履行の禁止(特定商取引法第14条第1項第1号)

売買契約の申し込みの撤回の場合などに、契約当事者双方に原状回復義務が課された場合、事業者は代金返還など債務の履行を拒否したり、遅延したりすることを禁止されています。

顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為の禁止(特定商取引法第14条第1項第2号、同規則第16条)

インターネット通販においては、次のような「顧客の意に反して売買契約などの申し込みをさせようとする行為」は禁止されており、行政処分の対象となります。

  • あるボタンをクリックすることでそれが有料の申し込みとなることを、消費者が容易に認識できるように表示していないこと
  • 申し込みをする際、消費者が申し込み内容を容易に確認し、かつ、 訂正できるように措置していないこと

行政処分・罰則

上のような行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示(法第14条)や業務停止命令(法第15条)、業務禁止命令(法第15条の2)などの行政処分のほか、罰則の対象となります。

行政規制以外にも、以下の民事ルールを守らなければなりません。

契約の申込みの撤回または契約の解除(特定商取引法第15条の3)

通信販売で消費者が契約を申し込んだり、契約をしたりした場合でも、その契約にかかる商品の引渡し(特定権利の移転)を受けた日から数えて8日間以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができます(ただし、事業者が広告であらかじめ、この契約申込みの撤回や解除につき、特約を表示していた場合は、特約によります)。

事業者の行為の差止請求(特定商取引法第58条の19)

事業者が、通信販売における広告について、不特定かつ多数の者に誇大広告などを行い、または行うおそれがあるときは、適格消費者団体(「特定非営利活動法人消費者機構日本」のような、消費者の利益を擁護するための差し止め請求権を有するとして内閣総理大臣の認定を受けた消費者団体)は、事業者に対し、行為の停止もしくは予防、その他の必要な措置をとるよう、請求できます。

上は特定商取引法の概略ですが、これら以外にも、事業者が守るべきルールと、消費者を守るルールなどがあり、特定商取引法はネットショップ運営に関係する全ての人、事業主にとって最も重要な法律となっています。

不正競争防止法

不正競争防止法は、事業者間の不正な競争の防止を図るとともに、 営業上の利益を侵害された者の損害賠償、差止請求、刑事罰などを整備して、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。

不正競争防止法第2条による「不正競争」は、以下のもの等を指します。

周知な商品等表示の混同惹起(不正競争防止法第2条1項1号)

他人の商品又は営業の表示として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用して、 その他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為。

著名な商品等表示の冒用(不正競争防止法第2条1項2号)

自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡等する行為。

なお、「商品等表示」は、商標も含む概念であるので、商標の冒用行為の場合は、商標法でも規制を受けます。

他人の商品形態を模倣した商品の提供(不正競争防止法第2条1項3号)

他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く)を模倣した商品を譲渡等する行為。

なお、商品形態を模倣する行為は、意匠法でも規制を受けます。

営業秘密の侵害(不正競争防止法第2条1項4号乃至10号)

窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為、又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為。

限定提供データの不正取得等(不正競争防止法第2条1項11号乃至16号)

窃取等の不正の手段によって限定提供データを取得し自ら使用したり、第三者に開示したりする行為。

技術的制限手段の効果を妨げる装置等の提供(不正競争防止法第2条1項17号、18号)

技術的制限手段により制限されているコンテンツの視聴や記録、プログラムの実行、 情報の処理を可能とする(技術的制限手段の効果を無効化する)装置、プログラム、指令符号、役務を提供等する行為。

ドメイン名の不正取得等(不正競争防止法第2条1項19号)

不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的で、 他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有、またはそのドメイン名を使用する行為。

商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示(不正競争防止法第2条1項20号)

商品、役務又はその広告等に、原産地、品質、内容等について誤認させるような表示をする行為、又はその表示をした商品を譲渡等する行為。

信用棄損行為(不正競争防止法第2条1項21号)

競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為。

代理人等の商標冒用(不正競争防止法第2条1項22号)

パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標に関する権利を有する者の代理人・代表者、又はその行為の前1年以内に代理人・代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないで、その権利に関わる商標と同一・類似の商標をその権利に関わる商品・役務と同一・類似の商品もしくは役務に使用するなどの行為

これらの不正行為に対しては、不正競争防止法に基づき、差止請求、損害賠償請求、信用回復措置請求といった民事上の措置をとることができます。

なお、損害賠償請求(不正競争防止法第4条)は、 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に対して、損害賠償を請求することをいいますが、不正競争による営業上の利益の侵害による損害は損害額を立証することが困難であるので、被害者の立証の負担を軽減するため、損害額の推定規定が定められています(不正競争防止法第5条)。

まとめ

ここでは、ネットショップ運営に関係する法律のうち、「ネットショップ全般に関わる法律」として、特定商取引法と不正競争防止法」を解説しました。

どちらも、特に重要な法律ということができます。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、ネットショッピングは私達の生活になくてはならないものになりつつあり、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。当事務所ではネットショッピングに関するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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