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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ベンチャーの投資契約におけるドラッグ・アロング・ライト条項

特にベンチャー企業が投資を受ける際の投資契約の内容として、ドラッグ・アロング・ライトに関する条項が規定されることがあります。ドラッグ・アロング・ライトについては、そもそも、ドラッグ・アロング・ライトに関する条項を投資契約の内容として規定するべきか、規定するとしてもどのような内容にするべきかなど検討すべき事項が多くあります。そこで、本記事では、投資契約におけるドラッグ・アロング・ライトについて説明をします。

ドラッグ・アロング・ライトとは

ドラッグ・アロング・ライト(Drag Along Right)とは、対象会社の買収に関して、一定の要件を満たした場合、他の株主に対して買収に応じるよう強制できる権利です。

ドラッグ・アロング・ライト(Drag Along Right)とは、「一定の条件を満たす場合、投資家が主導して経営陣や他の株主も巻き込んでM&Aやexitを強制できる権利」(磯崎哲也『起業のエクイティ・ファイナンス』139頁)のことをいいます。ドラッグ・アロング・ライトは、強制売却件、売却請求権、売渡請求権などと呼ばれることもあります。

特にベンチャーキャピタルによるベンチャー企業への投資は、そのベンチャー企業が将来的にexitを行い、それにより資金回収を図ることを期待して行われるケースが多いものです。ドラッグ・アロング・ライトは、ベンチャーキャピタル等の投資家が求めるexitが行われやすくなるための条項として規定される訳です。

ドラッグ・アロング・ライトの目的

ドラッグ・アロング・ライトの主な目的は以下の2つとなります。

  1. 少数株主に株式の売却を強制するという目的
  2. 経営陣に株式の売却を強制するという目的

上記の1及び2の目的からもわかるように、ドラッグ・アロング・ライトは、ベンチャーキャピタル等の投資家側の要請により、投資契約に規定されることとなる条項です。ドラッグ・アロング・ライトにより、ベンチャーキャピタル等の投資家は、少数株主や経営陣に株式の売却を強制し、自らが投資を行ったベンチャー企業のM&AやExitを実行して、投資資金の回収を図ることになります。

少数株主に株式の売却を強制するという目的

M&Aについては、大きく分けると以下のように方法が考えられます。

  1. 株式の譲渡
  2. 企業再編行為(株式交換、株式移転、合併など)
  3. 事業の移転(事業譲渡、会社分割など)

1.について

株式の譲渡によるM&Aの方法として、ベンチャー企業の買収を行おうとする者が、当該ベンチャー企業の全株式を取得するという方法が考えられます。ただ、当該ベンチャー企業の株主の一部が株式の譲渡を拒否した場合には、全株式の取得することは困難となります。

そこで、あらかじめ投資契約の内容として、少数株主に株式の売却を強制する条項を規定しておくことが考えられます。

2.及び3.について

2.及び3.の方法を行う場合、原則的には、株主総会の特別決議(原則として、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる賛成が必要)により実行することが可能です。そのため、全株式を取得する1.の方法より実行のハードルが低いといえます。

ただ、 2.及び3. の方法をとる場合、会社法上、反対株主を保護する制度(株式買取請求権等)が規定されています。この会社法の手続をとる場合、時間が掛かってしまうことや、コストがかかってしまうことも考えられます。そこで、あらかじめ投資契約の内容として、少数株主に株式の売却を強制する条項を規定しておくことが考えられます。

経営陣に株式の売却を強制するという目的

ベンチャーキャピタル等の投資家は、株式上場(IPO)やM&Aを行うことにより、キャピタルゲインを得ることを目的とし、投資を行っています。そのため、ベンチャーキャピタル等の投資家は、適切なタイミングでIPOやM&Aを行えるように、投資契約の内容として、経営陣に株式の売却を強制する条項を規定することをベンチャー企業等に求めることとなります。

ドラッグ・アロング・ライトの行使が認められる要件

ドラッグ・アロング・ライトを行使するために、満たさなければならない一定条件とは?

上記で説明をしたように、ドラッグ・アロング・ライトは、一定の条件を満たす場合に行使をすることができます。ドラッグ・アロング・ライトが、投資契約で規定されていても、一定の条件を満たしていない場合には行使することはできませんので、その「一定の条件」をどのように規定するかが非常に重要となります。

そして、この一定の条件をどのように規定するかは、ドラッグ・アロング・ライトを規定する目的との関係で検討する必要があります。

少数株主に株式の売却を強制するという目的の場合の行使条件

ドラッグ・アロング・ライトを規定する目的が、少数株主に株式の売却を強制するという目的の場合、行使が認められる要件として、以下のような要件を規定することが考えられます。

  1. ドラッグ・アロング・ライトの行使について、総株主の総議決権のうち、○%以上/○分の○以上の賛成があること
  2. ドラッグ・アロング・ライトの行使について、優先株主の総議決権のうち、○%以上/○分の○以上の賛成があり、かつ、会社の取締役会での承認があること

上記のような要件であれば、経営陣にとって、大きなリスクは想定されないものと考えられます。

経営陣に株式の売却を強制するという目的の場合の行使条件

ドラッグ・アロング・ライトを規定する目的が、経営陣に株式の売却を強制するという目的の場合、上記のような要件にしてしまうと、経営陣がドラッグ・アロング・ライトの行使に反対したときには、ドラッグ・アロング・ライトの行使が難しくなります。そこで、端的に、「優先株主の総議決権のうち、○%以上の賛成があること」という要件が規定されるケースが多いです。ただ、このような要件ですと、株式の売却の決定がベンチャーキャピタル等に委ねられてしまうこととなり、経営陣が反発することも考えられます。

そのため、ベンチャーキャピタル等と会社との間で、ドラッグ・アロング・ライトの行使の要件について、行使の時期や株式の売却金額を、行使の要件に織り込んでいき、妥協点を検討することが必要となります。

ドラッグ・アロング・ライトの対象者選択の際の留意点

投資契約において、ドラッグ・アロング・ライトを規定する場合、株式の売却を強制する対象者をいかなる範囲にするかについても、ドラッグ・アロング・ライトを規定する目的との関係で検討をする必要があります。

少数株主に株式の売却を強制するという目的の場合の対象者

ドラッグ・アロング・ライトの目的が、少数株主に株式の売却を強制するという目的の場合には、株式の売却に反対する可能性のある株主全てを、株式の売却を強制する対象としておく必要があります。ただ、株主の数が多い場合、その全ての株主と投資契約を締結するとなると、多大な時間的コストや金銭的コストがかかる可能性があります。

そこで、投資契約という形ではなく、ドラッグ・アロング・ライトの規定とみなし清算の規定だけを内容とする覚書や合意書等を作成し、投資契約とは別の契約を締結するというケースもあります。

経営陣に株式の売却を強制するという目的の場合の対象者

ドラッグ・アロング・ライトの目的が、経営陣に株式の売却を強制するという目的の場合、少数株主に株式の売却を強制するという目的の場合とは異なり、特定の経営陣のみを株式の売却を強制する対象者とすれば足ります。そのため、経営陣が対象者の場合には、少数株主に株式の売却を強制するという目的の場合とは異なり、覚書や合意書等を締結せずにドラッグ・アロング・ライトを投資契約の内容として規定すれば足りることになります。

ただ、実務上、上記2つの目的が混在している場合も多いため、そのような場合には、全ての株主を株式の売却を強制する対象にする必要があります。

ドラッグ・アロング・ライト行使の際の対価について

ドラッグ・アロング・ライト行使の際の対価については、普通株式と優先株式で差異を設ける必要性があるかなどを検討し、適切に規定する必要があります。

まとめ

以上、投資契約におけるドラッグ・アロング・ライトについて説明をしました。ドラッグ・アロング・ライトについては、投資した資金回収を図ろうとするベンチャーキャピタル等の投資家が重要視する条項ですので、規定する場合には、内容について十分に検討をしておく必要があります。ドラッグ・アロング・ライトについては、専門的な知識が要求されるため、専門家である弁護士に投資契約書等を作成してもらうか、弁護士によるアドバイスを受けるということが望ましいといえます。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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