Twitterで他人のツイートをスクリーンショット引用するのは著作権侵害?
近年、Twitter上では、一般人だけでなく公的な立場にある人や機関、芸能人やインフルエンサーなど、さまざまな立場の人々が発言をしており、自分の見解を他人に伝えるプラットフォームとして存在感が増しています。
このような議論の場では、他人の発言に対して、それを訂正したり新たな知見を付け加えたりなど、他人の発言を「引用」して自分の見解を表明することが不可欠です。
そして、Twitter上では、他のユーザーのツイートをスクリーンショット(スクショ)で撮影して、この画像を添付する形で引用したり、他人のツイートの本文をコピーして、これを自分のツイートの中身に組み入れる形で引用したりする方法がしばしば見られます。
もっとも、これらの引用方法は著作権法上問題はないのでしょうか。Twitterでの適法な引用方法について注意すべき点を解説します。
この記事の目次
Twitterにおける引用行為の3個の方法
Twitterで「引用」を行いながら投稿を行う場合、下記の3種類の方法が一般的です。
- 公式機能の「引用ツイート」で、相手のツイートを引用しながら投稿を行う
- 相手のツイートをスクリーンショット(スクショ)で撮影し、この画像を添付する形で引用しながら投稿を行う
- 相手のツイートの一部文言をコピペし、手動で引用しながら投稿を行う
1番目の引用方法は、Twitterにおける公式機能であり、著作権法上も問題なく行うことができます。
今回は、2番目と3番目の引用方法について、著作権法上の問題点を解説します。
他人のツイートをスクリーンショット引用する行為と著作権の関係
スクリーンショット(スクショ)による引用は、他のユーザーの元のツイートを不特定多数の者に共有しつつ、これに対して自分の意見を述べることができるため、Twitter上で多く行われています。
もっとも、元のツイートを勝手にスクリーンショット(スクショ)して引用する行為は、著作権侵害に当たる可能性があります。
また、スクリーンショット(スクショ)による引用が著作権侵害に当たる場合、引用したツイートが「著作権に関するポリシー」に基づいて削除される可能性があります。
また、場合によっては、損害賠償請求などの責任を負うおそれもあります。
このスクリーンショット(スクショ)による引用が著作権侵害に当たるかを判断するためには、以下の二点を検討しなければなりません。
- 元のツイートが「著作物」に該当するか。
- 元のツイートを引用する行為は、正当な引用行為として許されるか。
以下、1及び2の内容を解説します。
原告(引用行為を受けた側)のツイートは「著作物」か
著作権法は「著作物」に関する法律であり、「著作物」であれば著作権により保護されます。そのため、引用行為が著作権を侵害するというためには、まず元のツイートが「著作物」に当たることが必要です。
もっとも、作品であれば何でも「著作物」となり著作権により保護されるわけではありません。「著作物」として認められるには、「創作的であると言える程度に個性等がある表現」であると認められる必要があります。
ツイートの場合、140字という字数制限の中で、簡潔で短い文章表現となりがちです。そこで、ツイートにおける表現方法が、誰でも同じ表現をするような平凡かつありふれたものである場合には、ツイートをした者の個性が発揮されたとは認められず、「著作物」に当たらないと考えられます。
その一方で、字数制限の中で、ツイートを行った者の意図を伝えるために何かしらの創意工夫を凝らしていることが認められれば、表現方法にて個性が発揮されたと認められ、「著作物」に当たることになります。
そして、元のツイートが「著作物」に当たる場合、勝手に引用する行為は複製権や公衆送信権を侵害する可能性があります。
従前から「著作物」といえるか否かについては様々な判断がなされており、元のツイートが「著作物」に当たるかもこれらの裁判例も踏まえて検討する必要があります。ぜひ、以下の記事もご参照ください。
関連記事:キャッチフレーズ・見出しなど短い言語表現の転載は著作権侵害か
当該行為が正当な「引用」と認められるか
元のツイートが著作物に当たるとしても、著作権法上、一定の引用行為については適法な行為として、著作権侵害にならない可能性があります。
著作権法上の引用と認められる条件は、下記の全てを満たすことです。
- すでに公表されている著作物であること(公表要件)
- 引用されていること(引用要件)
- 公正な慣行への適合性(公正慣行要件)
- 正当な範囲に属すること(正当範囲要件)
元のツイートは、Twitter上ですでに「公表」されており、これをスクリーンショット(スクショ)によって「引用」しているため、公表要件と引用要件は問題となりません。
そこで、以下では、公正慣行要件と正当範囲要件について具体的に解説します。
なお、これらの要件については、下記の記事にて詳細な解説を行っていますのでご参照ください。
スクリーンショット撮影による引用は「公正な慣行」に合致するか
まず、スクリーンショット(スクショ)による引用が、「公正な慣行」に合致しているか否かについて検討する必要があります。
この「公正な慣行」の内容は、著作物の種類や業界、時代によって異なります。そこで参考になるのが、Twitter社の利用規約上、どのような引用行為が許されているのかという点です。
Twitter社は、下記のような利用規約を公開しています。
4.本サービスの利用
Twitterサービス利用規約
(中略)
ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、これに基づいた二次的著作物の作成、配信、販売、移転、公の展示、公の実演、送信、または他の形での使用を望む場合には、Twitterサービス、本規約または(編注:開発者利用規約)に定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。
この利用規約から、「他人のツイートを元にした言及行為を行う場合、Twitter社の公式インターフェイスや手順の通りに行わなければならない」との内容を読み取ることができます。
そのため、スクリーンショット(スクショ)を添付する形での引用は、利用規約上認められておらず、「公正な慣行」に合致していないこと方向で考慮される可能性があります。
実際に、後ほど紹介する裁判例では、この点を重視した判断が行われました。
本件の引用は、主述関係を守った「正当な範囲」か
また、スクリーンショット(スクショ)による引用が「正当な範囲」に属するのか否かについて検討する必要があります。
この「正当な範囲」に属するかを判断する際には、自分の見解などを述べる目的に照らして引用すべき必要性があり、社会通念上合理的な範囲内にとどまっているか検討しなければなりません。
そして、他人の著作物を勝手に使用する以上、「引用する側が主で、引用される側が従の関係」(主従関係)が認められないような過剰な引用、不必要な引用は、「正当な範囲」に属するとは言えません。
そのため、スクリーンショット(スクショ)を添付する形での引用が「正当な範囲」に属するか否かは、
- 引用の目的は何か
- スクリーンショット(スクショ)画像がツイート内でどの程度の割合を占めているのか
- 引用したツイートはどのような内容なのか
などに照らして
主従関係が認められない場合には、「正当な範囲」に属しないとの判断がなされる可能性があります。
スクショ画像のツイートが「著作権侵害」 となった判例
元のツイートのスクリーンショット(スクショ)を添付して引用する行為について、著作権侵害に当たると判断した裁判例があります。
判決では、元のツイートが「著作物」に当たるか、スクリーンショット(スクショ)引用が「公正な慣行」に合致するか、「正当な範囲」に属するかが争点となりました。
まず、元のツイートが「著作物」に当たるのかについて、字数制限の中で文章構成に工夫がみられることや、表現内容において作者の個性が表れていることから、「著作物」に当たると判断しています。以下、その判断の一部を引用します。
140文字という文字数制限の中,原告に訴訟を提起されたにもかかわらず危機感がないと思われる特定のユーザーの状況等につき,「アナタ」,「アウト」,「バカ」,「自業自得」という簡潔な表現をリズム良く使用して嘲笑するものであり,その構成には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
東京地判令和3年12月10日銀法880号69頁
次に、「公正な慣行」に合致するのかについて、スクリーンショット(スクショ)引用がTwitterの利用規約上許されていないことを重視して、「公正な慣行」に合致しないと判断しています。
ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうすると,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用することなく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反するものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。
東京地判令和3年12月10日銀法880号69頁
さらに、「正当な範囲」に属するかについて、引用したツイートと添付されたスクリーンショット(スクショ)画像を比較したうえで、明らかにスクリーンショット(スクショ)画像が主たる部分を構成するとして、「正当な範囲」に属しないと判断しています。
本件各投稿と,これに占める原告各投稿のスクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。
東京地判令和3年12月10日銀法880号69頁
あらゆるスクリーンショット撮影による引用は違法なのか
東京地判令和3年12月10日の判決内容を踏まえると、「スクリーンショット撮影による引用は、そもそも規約違反の行為である以上、常に違法である」という結論になるようにも考えられます。
ただし、実際にはスクリーンショット(スクショ)引用はTwitter上で多く行われているほか、元のツイートの削除の有無にかかわらず自分の見解を広めることができるなどの利点があります。
そのため、今回の判決の利用規約の内容を特に重視して「公正な慣行」に合致しないとした判断が、今後も行われれるのかについては、明確ではありません。
また、今回の判決は、スクリーンショット(スクショ)画像が主たる部分を構成すると判断されたケースです。
そのため、本件とは異なって主従関係が認められるケースについても、利用規約上許されていない引用行為であることをもって一律に「公正な慣行」に合致しないと判断されるのかについても、明確ではありません。
そのため、現時点でスクリーンショット(スクショ)引用が違法と判断される可能性は比較的高いといえる一方で、今後の動向もふまえて検討することも必要でしょう。
なお、元のツイートに「引用禁止」などの記載がなされている場合があります。もっとも、このような記載は引用の適法性を左右するような法的意味を持ちません。
そのため、著作権者が引用行為を禁止していても、著作権法上の適法な「引用」と認められる限り、その引用行為は適法となります。
コピペ(パクツイ)等の行為が著作権侵害に該当するか
コピペやパクツイとは、他人がツイートした内容をそのままコピーして自分のツイートとして投稿する行為をいいます。
このような行為が著作権侵害に当たるかを判断するためには、スクリーンショット(スクショ)引用と同じように、元のツイートが「著作物」といえるのか、正当な引用行為として許されるのかの2点を検討する必要があります。
特にパクツイについては、元のツイートの内容をそのままコピペして投稿することで、あたかも元のツイートを最初から自分が投稿したかのように誤解を生じさせる場合がほとんどです。
この場合、適法な引用と認められることは基本的にはないでしょう。
また、元のツイートをコピペしたとしても、これに自分の見解などを付け加えて引用と分かる形で投稿する場合も考えられます。
ただし現時点では、コピペなどによって引用する行為はTwitterの利用規約上許されていないため、このような形式での引用についても違法と判断される可能性があります。
リツイートだけでも著作権法に違反する可能性がある
リツイートとは、他人のツイートを拡散するために、再度投稿する行為をいいます。
このリツイートは、引用とは異なり、元のツイートに自分の見解を加えることなく、他人が行ったツイートとしてそのまま他のユーザーに共有することができる機能として広く利用されています。
たとえばスクリーンショット(スクショ)引用を含むツイートをリツイートした場合、すでに解説した通り、このような引用は著作権を侵害する可能性があります。
それでは、リツイートした者も、著作権法上、何らかの権利侵害をしたことになるのでしょうか。
まず、スクリーンショット(スクショ)引用を含むツイートをリツイートした場合であっても、このスクリーンショット(スクショ)画像を投稿しているのはあくまでもリツイートされたツイートの投稿者です。
そのため、リツイートした者は、元のツイートを自らコピーしたりTwitter上に投稿したりしていない以上、複製権や公衆送信権といった著作権を侵害するとは言えません。
もっとも、元のツイートの著作者は、著作権とは別に、著作物の公表にあたって著作者名を表示する権利(氏名表示権)を有します。
そのため、リツイートによりスクリーンショット(スクショ)画像を拡散する際に、ツイート本文のみ画像化しているなど、元ツイートを誰が投稿したのかが分からない状況になっている場合には、リツイートをした者であってもこの氏名表示権を侵害する可能性があります。
判例では、写真家の撮影した写真の著作物を勝手にコピーして添付したツイートをリツイートした行為について、リツイートにより写真画像がトリミングされたことでもともと写真の記載されていた著作者名の表示が消えてしまったことから、この氏名表示権を侵害すると認めた事例があります。
写真の著作物に関する判例であり、事案は異なりますが、ツイート本文の引用の場合も参考になるでしょう。
以下、一部を抜粋したものを引用します。
本件写真画像の隅に著作者名の表示として本件氏名表示部分を付していたが,本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件リンク画像表示データを送信したことにより,本件各表示画像はトリミングされた形で表示されることになり本件氏名表示部分が表示されなくなったものである。
また,本件各リツイート者は,本件各リツイートによって本件各表示画像を表示した本件各ウェブページにおいて,他に本件写真の著作者名の表示をしなかったものである。
以上によれば,本件各リツイート者は,本件各リツイートにより,本件氏名表示権を侵害したものというべきである。
最三小判令和2年7月21日民集74巻4号1407頁
まとめ:ネット上の著作権侵害は弁護士にご相談を
Twitter上での引用方法について、現時点では公式機能である「引用ツイート」でなければ著作権を侵害する可能性があります。
また、単にリツイートする場合であっても、著作権法上注意すべき場合があることについても解説しました。
今回紹介した引用方法は、Twitterを使用するユーザーにとっては日常的にみられるものであり、安易に行ってしまうおそれもあります。
ただし、著作権法上違法と判断されると、場合によっては損害賠償責任などを負う事態にもなりかねず、十分注意が必要です。
具体的な問題についてアドバイスを受けたい方は、ぜひ一度専門の弁護士にご相談ください。
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