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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

受験・学習塾情報サイトの悪質な口コミ削除方法を弁護士が解説

風評被害対策

首都圏における2019年度の中学受験者数は、国立・私立が約4万7200人、公立の中高一貫校が約1万6700人となり、合計すると約6万3000人でした。

2019年度の首都圏の小学校卒業者数が約29万4200人なので、受験率は国立・私立で約16%、公立を含めると約21%となり、5人に1人が中学受験をしていることとなります。

かつての男子校や女子校が、共学化することにより人気校となったり、公立の中高一貫校が登場したりして、親世代とは受験状況は大きく異なっています。

ネット上の記事や口コミの評価を見て商品やサービスの購入を決定する人が多いのですが、これは学校や学習塾の選択においても例外ではなくなっています。古い情報は、あまり役に立たないようです。

このように、ネット上の記事や口コミの評価に頼ることが多くなっていますが、一方では、誹謗中傷などの悪質な口コミも多くなっているのが現状です。

今回は、学校や学習塾への悪質な口コミを削除する方法について解説します

口コミの重要性

受験校を選ぶ際には、できる限り詳細な内部情報が欲しいというのが親心です。私立校の場合は、学校説明会や見学会もありますが、実態を把握できるわけではありません。

また、周囲に子供を当該校へ進学させた知人がいる場合であっても、人間関係もありますし、しょせんその人個人の意見ですから、信頼できる情報であるかどうかは確かではありません。

そこで、内部情報を詳細に得る有効な方法として登場したのが受験・学習塾情報サイトであり、口コミをチェックする有効な場となっています

受験・学習塾情報サイトとは

例えば、受験・学習塾情報サイトのひとつである「インターエデュ・ドットコム」では、幼稚園から大学、学習塾に至るまでの受験情報を中心に多くの人が情報交換をしています。

受験情報サイト インターエデュ・ドットコム

全国の幼稚園、小中学校、高校、大学、学習塾だけでなく、通信教育などについての掲示板まであり、各スレッドでは活発な意見交換が行われています。

投稿者は、在校生や在塾生、卒業生、それぞれの保護者などが主とされており、受験校や塾の選択に悩んでいる人が、比較検討するために利用しています

こうした受験・学習塾情報サイトでは、外からはなかなか知ることのできないリアルな情報を得られる可能性があるので、利用者にとって大きなメリットがあるといえます。

しかし、転職サイトなどと同様に、退職したりさせられた元教師や従業員、学校の勉強についていけなくなった生徒や受験に失敗した生徒及びその保護者、卒業したものの希望校に進学できなかった人など、不満を持つ人が鬱憤晴らしに悪口を書くケースなども多く、誹謗中傷が行われることがあります

風評被害対策の重要性

受験・学習塾情報サイトに投稿される誹謗中傷の例としては、以下のようなものが、多く見られます。

  • 教師が生徒に体罰を加える
  • ひどい学級崩壊が起こっていて、授業が成立していない
  • 学校内でいじめ事件が起こったのに隠蔽している
  • 教師が保護者と浮気している
  • 裏口入学・縁故入学が行われている
  • この塾は教師や教材の質が悪いので、まったく成績が上がらない
  • 塾の教師にセクハラされた子がいる

こうした誹謗中傷の書き込みは、様々な悪影響が生じる可能性があります

入学(入塾)希望者が減る

歴史のある学校や、すでに定評を築いている学校であれば大きな影響はないかもしれませんが、中には深刻な問題に発展するケースもあります。特に、共学化を進めたばかりの中学校や、コースを新設したり高大連携を強化しようとしている高校など、過去のデータがない場合には、受験者は評判に敏感になるので、応募者が大幅に減少したりする可能性があります。

塾の場合でも、大規模塾であれば、「中には不満を持つ人もいるだろうな」くらいに考えられ、それほど影響はなく、やり過ごすことも可能かもしれませんが、小規模塾では経営悪化につながる可能性があります。

教育機関の評判を上げるのは大変であり、長い期間を必要としますが、悪い評判は一瞬で成立し、拡散してしまいます

保護者からのクレームやマスメディア報道

学校や塾についての誹謗中傷が拡散されると、保護者が不安になり、学校や塾側に問合せをしてくる可能性があります。「学校内でいじめ事件が起こったのに隠蔽しているのではないか」などと追及されても、ないことを証明することは「悪魔の証明」であり、困難です。

さまざまな追及をされてうまく対応できなかったときに、マスメディアに噂が漏れてしまい、大騒ぎになってしまう可能性すらあります。ネット社会では、火のないところに煙が立つことは度々あります。また、ネット炎上してしまったら、否定すればするほど炎上が大規模になり、収拾がつかないということになりかねません

在校生、在塾生のモチベーションが低下する

在校生や在塾生が、自分達の学校や塾について誹謗中傷されているのを知ったり、ネット炎上していたりすれば、勉強どころではなくなってしまいます。他校生や他塾生に誹謗中傷されたりもするでしょう。

塾の場合、少しずつ退塾者が増えれば、経営が成り立たなくなることもあります。この場合にも、はっきりした事実がなくても、むしろないからこそ余計に噂が増殖し、疑惑が増してしまうことがあります

退職者が増え、就職希望者が減り、レベルが低下する

教師が「保護者と浮気している」、「セクハラしている」などと噂されると、特定の教師が名指しされている場合には、根も葉もない話であっても、当人は退職せざるを得なくなったりします。そして、他の教師の退職が続くなどという場合もあります。教師名が特定されていないと、教師間、生徒間で噂が立ち、学校中が不振に覆われてしまうこともあります。

退職者が相次ぐことになると、新規採用の募集をしても応募者が少なくなったり、教師のレベルが低下してしまったりする可能性があります

悪質な口コミの削除

このように、受験・学習塾情報サイトで誹謗中傷されたときの影響は非常に大きいので、悪質な口コミ投稿には、早急に対処する必要があります

記事削除を求めるには、通常、

  • サイト運営者やサーバー運営者に対する削除依頼
  • サイト運営者やサーバー運営者に対する送信防止措置請求
  • 裁判所を通じての削除請求

という、3つの方法があります。

受験・学習塾情報サイトに対する削除依頼

例えばインターエデュ・ドットコムに投稿記事削除を依頼するには、「掲示板削除申請」から行います。他の受験・学習塾情報サイトも概ね同じですが、インターエデュ・ドットコムでは、以下のような書き込みが削除の対象になります。

  • 違法行為に関する書き込み
  • 暴力、誹謗中傷、自傷行為に関する書き込み
  • 出会いに関する書き込み
  • 他人へのなりすましに関する書き込み
  • 卑猥・わいせつな内容の書き込み
  • 商用目的の書き込み
  • 他サイトへの誘導の書き込み
  • 個人、団体の情報(個人名・団体名・所属・住所・電話番号・メールアドレス)に関する書き込み
  • 個人・団体に対する批判的な書き込み

これらに該当する場合には、「掲示板削除申請フォーム」に必要事項を書き込み、削除理由を明確に記して、送信します

受験・学習塾情報サイトに対する送信防止措置請求

当サイトの別記事でも詳しく解説していますが、「送信防止措置請求」は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」、通称「プロバイダ責任制限法」に基づいて、記事削除請求を行う方法です。

通常は「送信防止措置依頼書」を運営に郵送しますが、不備などがあれば受け付けてもらえなかったり、何度も書き直したりせねばならず、無駄な時間をかけてしまう可能性もあるので、経験豊かな弁護士に依頼することをおすすめします

裁判所を通じての削除請求

これまでの方法を行っても、悪質な口コミ記事が削除されない場合には、法的手段をとる必要が生じます。

上にあげた3つの方法の最後にあった、裁判所を通じての削除請求ですが、誹謗中傷記事の削除を請求する場合、「裁判(訴訟)」ではなく「仮処分」という、正式裁判の前に裁判に勝訴したときと同様の状態を確保することができる、裁判よりも短期間で終わる手続きを用いることができます。

「その記事が違法かどうかは本訴訟で決めるとして、訴訟を行っている間に被害が拡大すると困るので、とりあえず記事が違法だと判断して、削除する」とする、迅速な手続きです。

仮処分が認められると、該当する記事は削除されます。

この後、本訴訟を行う必要があり、もし本訴訟に負けて「記事は違法ではなかった」という場合や、訴訟を提起しなかった場合には、その記事を復活されても文句は言えないのですが、仮処分で「違法」と判断されるような記事は、訴訟でも「違法」と判断される可能性が高いので、命令を受けた相手方は通常、「仮処分で違法となった時点で記事を削除し、その後に訴訟が提起されなくても復活させない」としており、訴訟という手段を用いる必要は特にありません。

まとめ

受験・学習塾情報サイトは、本来、情報に乏しい新米の保護者に、経験者が情報をもたらし、経験によるアドバイスを行うという、有用で健全な場です。

一部の悪意を持った投稿者に荒らされ、被害が生じたら、経験豊かな弁護士に相談し、速やかに対応しましょう

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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