老人福祉法とは?違反した場合の行政処分や罰則、施設運営を行うためのポイントについて解説
老人福祉法は、高齢者の方々が安心して暮らせる社会を実現するために、介護サービスの提供や施設の運営に関するルールが定められています。介護サービスの提供や施設運営を行う事業者は、これらのルールと、違反があった場合の罰則や行政処分について理解しておきましょう。
本記事では、この老人福祉法について、介護施設の運営者が知っておくべき、違反した場合の行政処分や罰則、そして質の高いサービスを提供するためのポイントを解説します。介護施設の経営者にとって、法的なルールやリスク、円滑な運営のためのポイントを再確認する機会となれば幸いです。
この記事の目次
老人福祉法とは
老人福祉法とは、高齢者の福祉に関する施設、機関、事業について定めた法律のことです。この法律は、都道府県や市区町村に対して、高齢者の福祉向上を目的とした各種計画の策定や支援事業の実施を義務付けています。
例えば、都道府県や市区町村には老人福祉計画の作成が義務付けられており、地域ごとに高齢者の福祉ニーズに応じた具体的な施策が策定されます。計画には、高齢者向けの福祉サービスや施設の整備、介護人材の確保などが含まれます。
参考:厚生労働省|老人福祉法
老人福祉法で規定される6つの事業
老人福祉法は、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けるための支援事業についても規定しています。同法が規定する支援事業は、老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業、複合型サービス福祉事業の6つです。
さらに老人福祉法では、高齢者が利用できる福祉施設についても規定しています。老人福祉法において規定されている施設は、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センターの7つです。
有料老人ホームは、老人福祉法に規定されている老人福祉施設には該当しませんが、同法の規制の対象です。有料老人ホームは、入居者に対して食事、介護、健康管理などのサービスを提供する施設であり、運営には老人福祉法に基づく一定の基準と規制が適用されます。
老人福祉法の目的と制定された背景
老人福祉法は、高度経済成長期を背景に昭和38年(1963年)に制定されました。当時は、地方から都市部への人口流出と核家族化が進行し、家庭内での相互扶助機能が低下していました。その結果として、顕在化したのが家族が担っていた高齢者の介護が困難になるという社会問題です。このような環境で、高齢者福祉の基盤を整えるために老人福祉法が制定されました。
老人福祉法は、高齢者の健康で安定した生活や、高齢者の積極的な社会参加の促進を目指しています。老人福祉法の基本理念には、高齢者の健康保持、生活安定、社会参加の促進が含まれます。
老人福祉法の制定で急速に進んだのが、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームなどの老人福祉施設の整備です。高齢者にとって安心して生活できる環境が整備され、家族による負担が軽減されました。また、現在のホームヘルプサービスに相当する老人家庭奉仕員派遣事業も制度化され、高齢者が自宅で受けられる支援も拡充されました。
老人福祉法改定の流れ
昭和48年(1973年)のオイルショックを契機に経済成長率が伸び悩むと、財政を圧迫したのが、医療費です。昭和58年(1983年)に「老人保健法」が施行され、高齢者の医療費の一部が自己負担となるなど、法律も社会の変化に応じて改正されました。
老人福祉法の改正内容
年度 | 改正内容 |
昭和48年 | 70歳以上の医療費が無償化される「老人医療費支給制度」が制定される。医療費による財政圧迫のため、昭和58年に「老人保健法」とともに廃止。 |
昭和53年 | 寝たきり老人短期保護事業が開始。高齢者が短期間施設に入所し、介護を受けることが可能となる。 |
昭和54年 | 通所サービス事業(デイサービス)が開始。デイサービス、ショートステイ、ホームヘルプの在宅三本柱が制度化される。 |
昭和57年 | 老人保健法が制定。高齢者医療が社会福祉から社会保険へと大きく変化を遂げる。後に後期高齢者医療制度に引き継がれる。 |
平成2年 | 老人保健福祉計画が策定され、都道府県と市区町村に義務付けられる。です。市区町村を中心に福祉行政が展開されました。同時に老人保健福祉計画の基盤整備が促進される。 |
平成6年 | 老人福祉施設の規定に老人介護支援センターが追加される。 |
平成12年 | 介護保険法が施行。老人福祉施設などを利用する際、特別な事情のない限り介護保険制度が適用される。また、老人居宅生活支援事業のグループホームや小規模多機能型居宅介護事業が追加される。 |
平成18年 | 有料老人ホームの定義が変更。改正前は高齢者が10人以上入居し、食事を提供している施設と定義されていましたが、改正後要件は人員基準が撤廃され、食事や介護の提供、洗濯や掃除などの家事、健康管理のいずれかを提供する形へ変更となる。 |
なお、介護保険法の施行後、老人福祉の在り方は大きく変わりました。例えば、グループホームや小規模多機能型居宅介護事業が追加され、高齢者が自宅で生活しながら受けられる介護サービスの選択肢が増え、介護サービスの質が向上し、利用者の満足度も向上しました。
介護保険法とは?老人福祉法との違い
介護保険法とは、介護が必要な人々に対して適切な保健医療サービスや福祉サービスを提供するための法律です。介護保険法は、介護保険制度や介護サービス、そして介護保険施設に関連する規制を定めています。
介護保険法の第1条には、加齢に伴う心身の変化によって要介護状態となった人々が尊厳を保ちながら自立した日常生活を送れるようにするため、必要な保健医療サービスと福祉サービスの提供が目的と明記されています。
介護保険法は、必ずしも高齢者だけを対象としているわけではありません。介護が必要な人であれば、年齢にかかわらず介護保険法に基づくサービスを利用できる可能性があります。
一方、老人福祉法は、日常生活が困難な65歳以上の高齢者を主な対象とし、その福祉の向上を図るために制定された法律です。老人福祉法は、高齢者が身体的、精神的に健全な生活を送るために必要な措置を講じることを目的としています。市町村が行うべき体制整備や民間事業者に対する規制、老人施設の設置や運営に関するルールが定められています。
介護保険法は、平成12年(2000年)に施行されて以来、時代の変化に合わせて定期的に改正が行われてきました。初回の改正は平成18年(2006年)です。以後、3年ごとに改正が実施され、要支援者に対する予防給付の創設や、介護事業者への規制強化などが図られています。
特に2024年には、地域包括ケアシステムの深化と推進、介護現場の生産性向上と、制度の持続可能性の確保などに関する改正が予定されています。改正の詳細は以下の記事にて解説しています。
関連記事:【令和6年施行】介護保険法の改正とは?背景と介護事業者がとるべき対応を解説
老人福祉法に基づく居宅サービス
老人福祉法では、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けるための居宅サービスについて規定しています。主な居宅サービスは、以下の6つです。それぞれが提供する支援の特徴を解説します。
老人居宅介護等事業
老人居宅介護等事業は、65歳以上で精神的または身体的な障害があり、日常生活に支障をきたしている方を対象とするサービスです。自宅での生活を支援するため、排せつや入浴、食事の介助、洗濯や料理、掃除など、日常生活に関わる相談やアドバイスを行います。
老人居宅介護等事業は、介護保険法に基づいて提供され、訪問介護サービスの一環として位置付けられており、該当するのは巡回定期・随時対応型訪問介護看護や夜間対応型訪問介護などです。また、介護保険法の対象外となる場合には、自治体の独自サービスの提供があります。
老人デイサービス事業
老人デイサービスとは、日中の時間帯に施設で提供される介護サービスのことです。老人デイサービスは、在宅で生活する65歳以上の高齢者を対象としており、特に精神的または身体的な障害を持つ方や介護を必要とする方が対象となります。
施設内での排せつや入浴、食事のサポート、さらに介護に関する相談やアドバイスを行うことで、日常生活の質を維持・向上させることが目的です。介護保険法上は、介護予防通所介護(デイサービス)または通所介護が老人デイサービスに該当します。
老人短期入所事業
老人短期入所事業とは、在宅での介護が困難な場合に、一時的な施設への入所を目的としたサービスのことです。老人短期入所事業のサービスは、急な介護者の体調不良や、介護者が休息を必要とする場合に利用されます。介護保険法に基づき、介護予防短期入所生活介護や短期入所生活介護(ショートステイ)が該当します。
小規模多機能型居宅介護事業
小規模多機能型居宅介護事業とは、在宅での生活を支援しつつ、必要に応じて施設での通所や短期間の宿泊も可能とするサービスのことです。65歳以上で、精神的または身体的に障害がある方が対象となります。小規模多機能型居宅介護事業は、通所と宿泊を組み合わせた柔軟なサービス提供が可能です。利用者の生活状況に応じた個別の支援が行われます。
介護保険法では、介護予防小規模多機能型居宅介護、もしくは小規模多機能型居宅介護が該当します。
認知症対応型老人共同生活援助事業
認知症対応型老人共同生活援助事業とは、認知症を患っている65歳以上の方を対象としたサービスのことです。認知症対応型老人共同生活援助事業では、他の利用者と共同生活を送る施設に入所し、入浴、食事、排せつといった日常生活のサポートを受けられます。
認知症高齢者に特化したケアを提供する施設であり、介護保険法の枠組みでは、介護予防認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)や認知症対応型共同生活介護が該当します。
複合型サービス福祉事業
複合型サービス福祉事業とは、在宅生活を続けながら、複数のサービスを組み合わせて利用できる介護支援の提供を指します。複合型サービス福祉事業は、小規模多機能型居宅介護と訪問介護を組み合わせたサービスであり、特に高齢者が住み慣れた自宅での生活の継続支援が目的です。
介護保険法の中では、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)に位置付けられています。
老人福祉法に基づく施設サービス
老人福祉法に基づいて提供される施設サービスには、7種類あります。施設サービスとは、特別養護老人ホームなどに入所している方が利用する介護サービスです。
老人デイサービスセンター
老人デイサービスセンターは、65歳以上で身体的または精神的な障害があるため、日常生活を送ることが困難な人々に対して、日帰りで必要な介護やサポートを提供します。提供される内容は、入浴や排泄、食事などの基本的な介護に加え、日常生活に必要な支援や世話、さらにはレクリエーションやアクティビティ、機能訓練などです。
老人デイサービスセンターは、介護保険制度の下で「通所介護サービス(通所介護事業所、通所介護)」として提供されています。
老人デイサービスセンターの施設の設置主体は、社会福祉法人や市町村などの公共的な機関であることが多いです。通所介護サービスの多くは、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)などと連携して提供されています。
単独で運営される場合もありますが、いずれの場合でも、高齢者が安心して日常生活を送れるよう、専門的なサポートが提供されます。こうした施設は、地域社会における高齢者支援の重要な役割を果たしており、利用者や家族にとって欠かせない存在です。
老人短期入所施設
老人短期入所施設は、65歳以上の高齢者や介護が必要な方が、一時的に在宅介護を受けられない状況のときに、利用できる施設です。例えば、家族の介護者が病気になったり、用事で家を離れなければならなかったりといった理由で、在宅介護が困難な場合があります。短期間の入所を通じて、入浴や食事、日常生活の支援、さらにはリハビリテーションなどの機能訓練を提供します。
養護老人ホーム
養護老人ホームは、65歳以上で、介護の必要性に関係なく身体的、精神的、経済的な理由で自宅での生活が困難な高齢者を対象としています。機能訓練、食事の介助、日常生活など、生活全般の支援が提供されます。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、自宅での介護が難しい重度の介護を必要とする高齢者向けの施設です。食事、排せつ、入浴の介護に加え、社会生活に必要な支援や健康管理、リハビリテーションなども提供します。
特別養護老人ホームの対象者は65歳以上で、精神的または身体的な障害により常時介護が必要な要介護3以上の人です。
軽費老人ホーム
軽費老人ホームは、家庭環境や住宅事情等の理由により居宅において⽣活することが困難な60歳以上の⽼⼈を対象としています。軽費老人ホームは、比較的自立した生活が可能な高齢者向けに、無料または低料金で生活支援を提供する施設です。軽費老人ホームは、A型、B型、ケアハウスの3種類に分かれ、それぞれが対象者に合わせた支援を行います。
A型は、60歳以上の家族と入居できない人が対象で、一人での生活に不安があるが、家族のサポートが受けられない高齢者に対し、食事や介護支援を提供します。B型は、基本的にA型と同じ条件ですが、食事の提供はありません。ケアハウスは、介護の有無により、一般型(自立型)と介護型(特定施設)に分けられます。一般型は、食事の提供はありますが、介護サービスの提供はありません。介護型は、食事の提供に加え、生活支援と介護サービスを提供します。
軽費老人ホームA型・B型は今後なくなる方針で、増設されることはなく、ケアハウスに一元化されていくことが決まっています。
老人福祉センター
老人福祉センターは、高齢者を対象として無料または低額で利用でき、高齢者が健康を維持し、教養を高め、さらにはレクリエーション活動に参加できるよう、総合的な支援をしています。
老人福祉センターは、特A型、A型、B型の3つの種類に分類されます。
特A型施設が提供しているサービスは、市町村が運営する包括的なサービスです。具体的には、日常生活に関する相談をはじめ、健康の増進、生業・就労支援、機能訓練、教養講座の実施、そして老人クラブ活動の支援などが行われます。
A型施設も市町村や社会福祉法人によって運営されますが、提供されるサービスは、特A型よりも少し限定的です。健康増進に関する指導を除く日常生活全般にわたる相談などが中心となります。
B型施設は、A型施設の機能を補足する位置づけにあり、A型で提供されるサービスを補完する役割を果たします。
老人介護支援センター
老人介護支援センターは、自宅で生活する高齢者や家族を支援するために設けられた施設です。老人介護支援センターは、援護が必要な高齢者や将来的に援護が必要になる可能性のある高齢者からの相談に応じ、介護や福祉サービスの提供を総合的にコーディネートします。
具体的には、介護保険を含む各種保健・福祉サービスを受けるために、市区町村の行政機関、介護サービス提供機関、居宅介護支援事業所などとの連携・調整を行います。
在宅介護支援センターは、地域の高齢者とその家族にとって頼れる存在であり、介護に関するさまざまなニーズに対応するための窓口です。また、介護の負担が増大しがちな家族に対しても、適切なサービスの紹介や支援を行うことで、介護に伴うストレスや不安を軽減する助けとなっています。
老人福祉法の規制対象・有料老人ホーム
有料老人ホームとは、高齢者が心身の健康を保ち、安定した生活を送るために設けられた施設です。有料老人ホーム施設では、食事、介護、家事、健康管理などの生活支援サービスのうち、1つ以上のサービスを提供することが義務付けられています。
入居者のニーズや状況に応じて、さまざまな種類の有料老人ホームが選択可能であり、それぞれの施設が提供するサービスや料金体系は異なります。有料老人ホームは、老人福祉法に規定されている老人福祉施設には該当しませんが、同法の規制の対象です。
有料老人ホームの種類は3つあります。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、主に介護が必要な高齢者向けの施設です。食事、洗濯、清掃などの生活支援や、排せつや入浴などの身体介護、機能訓練、レクリエーション、サークル活動など、多岐にわたるサービスが提供されます。介護付き有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた、一定の介護サービス基準を満たすことが必要です。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、食事、洗濯、清掃などの生活支援サービスが提供される施設ですが、施設のスタッフによる介護サービスの提供はありません。入居者が介護を必要とする場合は、外部の訪問介護サービスなどと契約する必要があります。多くの住宅型施設では、訪問介護事業所やデイサービス、居宅介護支援事業所が併設されており、在宅サービスを受けやすい環境が整っています。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、家事サポートや食事サービスが提供される施設で、比較的自立した高齢者が入居しています。健康維持のための設備が充実しており、温泉やスポーツジムなどの施設の併用が多いです。要介護状態になった場合は、退去が必要になるケースもありますが、隣接する介護施設へ移動できる場合もあります。
居宅サービス・福祉サービス・有料老人ホームの開始・変更・休止・廃止時には届出が必要
老人福祉法に基づく届出とは、老人福祉施設や高齢者向けのサービスを提供する事業者が、活動を開始、変更、または廃止する際に、事業所所在地の都道府県や市町村の高齢福祉課等に届け出る義務がある手続きです。届出は、事業の透明性を確保し、高齢者に対する適切なサービス提供を保証するために重要です。
届出を行う際には、以下の情報が必要です。
- 事業の種類と内容
- 経営者の情報(氏名や住所、事業所の名称と所在地)
- 基本約款(定款などの重要な規定)
- 職員の定数と職務内容
- 主な職員の情報(氏名と経歴)
- 事業の区域(サービスを提供する地域)
- 自治体からの委託事業の場合(地域の名称)
- 事業開始(変更)の予定日
高齢者福祉に携わる事業者は、これらの法的手続きを確実に行うことで、適切なサービスを提供し、地域社会への貢献が求められます。
老人福祉法に違反した場合の行政処分・罰則について
老人福祉法には、違反した場合の罰則についての定めがあります。ここでは罰則について解説します。
罰則金
老人福祉法には、高齢者福祉に関する適切な運営を確保するための罰則規定があります。例えば、無許可で老人福祉施設を設置・運営した場合や、虚偽の報告を行った場合に罰金や懲役などの罰則が科されることがあります。
例えば、老人福祉施設を無許可で設置・運営した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
改善命令
老人福祉法の第18条第2項には、都道府県知事に対する特定の権限を規定しています。認知症対応型老人共同生活援助事業や老人福祉関連施設が法令に違反した場合に、知事は適切な措置をとることができます。
都道府県知事は、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う者が、規定に違反したと判断した場合、事業者に対して改善を求める措置の命令が可能です。改善命令に違反すると、6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
事業停止命令
都道府県知事は、養護老人ホームまたは特別養護老人ホームの設置者が法令、命令、または処分に違反した場合、あるいは施設が法令の基準に適合しなくなった場合に、事業の停止や廃止を命じたり、施設の設置認可の取り消しをしたりすることができます。知事が前述の命令を発出した場合、その旨を公示する義務があります。
また、都道府県知事が養護老人ホームや特別養護老人ホームに対して事業の廃止を命じる、あるいは設置認可を取り消す場合、事前に社会福祉法第19条第2項に基づく地方社会福祉審議会の意見を聞くことが義務付けられています。
なお、有料老人ホームの設置者が、老人福祉法第29条14項に定める通り、事業の制限または停止命令に違反する場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。
老人福祉法に沿った運営を行うためのポイント
老人福祉法に基づいて各種届出を行う際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
事業の開始・変更・廃止・休止の際には届出をする
老人居宅事業及び老人福祉施設の事業者について、事業の開始、変更、廃止、休止には、都道府県知事への届出が必要です。
届出の対象となる老人居宅事業は、老人居宅介護等事業、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型老人共同生活援助事業及び複合型サービス福祉事業です。
また、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、都市型軽費老人ホーム、老人介護支援センター及び老人福祉センターなどの老人福祉施設においても、事業所の所在地となる都道府県、市町村の高齢福祉課の窓口に届け出が必要です。
届出を行う窓口や提出方法は、各自治体のホームページや窓口、または電話で事前に確認してください。また、提出すべき書類や必要な書式についても、事前に確認しておきましょう。不明な点があれば、担当の職員に相談しながら手続きを進めることで、スムーズに手続きが進行します。
介護保険法に基づく届出と一緒に提出する
介護保険法に基づく申請や届出を行う際に、同時に老人福祉法に基づく届出をすることで必要な書類を重複して準備する手間を省略できます。また、同時に提出することで一部の書類の提出を省略できる場合があります。
その他法律・改正内容にも配慮する
老人福祉法は、施行以来、社会や環境の変化に対応して多くの改正が行われてきました。また、老人保健法や介護保険法など、他の関連法との整合性も考慮する必要があります。これらの法令に違反すると罰則が科される可能性があるため、事業内容に合わせて適切に届出をする必要があります。関連する法令は複雑で分かりにくいため、専門家に相談して手続きをするのがおすすめです。
まとめ:老人福祉法について理解し適切な対応を
円滑に施設施設を運営するためには、法令の遵守はもちろん、利用者のニーズに応じた質の高いサービス提供が求められます。老人福祉法を正しく理解し、法改正の内容にも的確に対応していくことが必要です。
自治体への届出や法改正の対応に頭を悩ませる事業所も多くあります。そうした場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
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