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YouTuber・VTuber法務

パロディ動画が権利侵害となる判断ポイントと法的問題を避ける方法

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YouTubeやTikTokの動画を見ていて、アニメやドラマなどをマネした動画を見たことがある人は多いでしょう。

このような、いわゆるパロディ動画は、元となるコンテンツを知っている人ほど楽しめるもので、人気が出やすいといえます。

しかし、他人の作品をマネすることは、著作権法に反するおそれがあります。本記事では、動画サイトでも人気があるパロディ動画がどのような場合に著作権法違反となるのかについて解説します。

パロディと著作権

パロディと著作権

そもそもパロディとはどのような行為であり、それは法律で規制されているのでしょうか。

パロディとは

パロディについては、著作権法を含め、法律上の定義は存在しません。

しかし一般的に、パロディ作品は、他人のコンテンツを何らかの形でマネすることで作られた作品をいいます。

他方で、著作権法21条は「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と規定しており、同27条は「著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。」と規定しています。

つまり、著作物の複製を行う「複製権」や、翻案行為を行う権利である「翻案権」を有しているのは著作者だけなので、著作権者に無断で著作物の複製や翻案行為を行った場合には、原則として著作権侵害が成立します。

そこで、パロディが著作権法に反するか否かは、パロディ作品が元の作品の「複製」や「翻案」に該当するのかが問題といえます。

パロディは複製権の侵害にあたるのか

複製とは、著作権上、次のように定義されています。

印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること

著作権法2条1項15号

つまり、元の著作物を同じように再現してパロディ作品を作ることは、原則として複製権の侵害にあたることになります。

パロディは翻案権の侵害にあたるのか

もっとも、パロディ作品を作る際には、元の著作物を完全に再現するのではなく、制作者のオリジナリティを出して作ることもあるでしょう。

この場合には、複製にあたらない場合があるため、著作権を侵害しないとも思われます。

しかし、オリジナリティを出したパロディ作品の制作は、翻案権を侵害するおそれがあります。

翻案とは、最高裁判所の判例によれば、次のような行為であるとされています。

既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為

最高裁判所平成13年6月28日判決・民集55巻4号837頁(江差追分事件・上告審)

複製との違いは、「新たな創作的表現を加えたかどうか」という点であり、新たな創作的表現が加えられていない場合を複製、加えられた場合を翻案といいます。

ここでいう「表現上の本質的な特徴を直接感得することができる」とは、わかりやすくいえば、「新たに制作された作品から、元の著作物を想起することができる」ということです。

つまり、複製のような完全な再現ではなくとも、元の著作物を想起できる場合には、翻案にあたるということです。

パロディ作品は、その性質上、元の著作物を想起できるように作られることが一般的であることから、形式的に考えると翻案権侵害となる可能性が高いことになってしまいます。

したがって、元の著作物を想起させるような作品は、人気が出やすい反面で翻案権を侵害することになってしまいます。他方で、元の著作物を想起できないほどにオリジナリティを加えれば、翻案権の侵害にはあたりませんが、それはもはやパロディとはいえなくなってしまうでしょう。

しかし、パロディは、他者の著作物を茶化すために制作されることもありますが、風刺の意味合いで使用される場合もあります。

このような場合にまで著作権侵害にあたるとすれば、著作物を保護して文化の発展に寄与するという著作権法の目的(著作権法1条)に反するとも考えられ、法的にパロディがどの程度認められるべきか、という点については見解が分かれています。

翻案を認めた裁判例

翻案を認めた裁判例

当サイトの別記事で、「著作物が翻案されて名誉又は声望が侵害された場合」として紹介したテレビドラマを巡る裁判では、

  • 主人公の名前
  • 夫婦の間の子どもの有無
  • 共働きかどうか
  • 夫の勤務先
  • 夫の転勤先
  • 主人公のキャラクター
  • 夫のキャラクター

が、極めて類似していることが認められました。

そして、相違点も多くあるにもかかわらず、また、ドラマの後半に大きな相違があるとしても、前半の基本ストーリーが共通であることを考慮すれば、

原告著作物を読んだことのある一般人が本件テレビドラマを視聴すれば、本件テレビドラマは、原告著作物をテレビドラマ化したもので、テレビドラマ化にあたり、夫の帰国以後のストーリーを変えたものと容易に認識できる程度に、前半の基本的ストーリー、主人公夫婦の設定、細かいストーリーとその具体的表現が共通でありあるいは類似しているものというべきである。

東京地方裁判所平成5年8月30日判決・知財集25巻2号310頁

として、テレビドラマは原告著作物の翻案であると認めました。

関連記事:著作者人格権と名誉又は声望の保護とは?

パロディと著作者人格権

パロディと著作者人格権

また、元の著作物にオリジナリティを加えて新たな作品を制作する場合、著作者人格権の侵害にあたる場合があります。

著作権法20条は「著作者は、その著作物・・・・・・の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」と規定しています。

したがって、翻案によって元の著作物を改変した場合、それが著作者の意に反するものであれば、著作者人格権のうち、同一性保持権を侵害することになります。

当サイトの別記事では、写真をトリミングして使用する行為について、同一性保持権の侵害を認めた例を紹介しましたが、動画であっても、元の著作物の一部を切り抜いて使用する場合のように、元の著作物を改変して作品を制作する場合などには、同一性保持権を侵害する改変行為にあたると判断される場合があるので、注意が必要です。

関連記事:ネット上での無断写真転載と著作者人格権

パロディに関連する裁判例

裁判所の著作権侵害についての判断

コナミ株式会社が、プレイステーション用ゲームソフト「ときめきメモリアル」の主要登場人物である「藤崎詩織」の図柄を用いてアニメーションのパロディビデオを制作した被告の行為が、著作権(複製権、翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして、同ビデオの製造、販売及び頒布の禁止と廃棄、損害賠償等を求めた事例があります。

原告は、

  • 被告は、藤崎詩織の図柄を無断で用いて本件ビデオを制作したものであり、藤崎詩織の図柄に係る原告の複製権及び翻案権を侵害している
  • 本件ビデオは、藤崎詩織の図柄を用いて性行為の場面を描写した成人向けのアニメーションビデオであって、藤崎詩織の清純なイメージを損なうものであり、本件ゲームソフトの改変をもたらすものであるから同一性保持権を侵害する

と主張し、これに対して被告は、

  • 藤崎詩織の図柄はありふれたもので創作性はなく、また、抽象的なキャラクターについては、具体的な図柄を離れて別個の創作性を有する外部的表現形式とならないので、著作権の保護の対象とならない

などと反論しました。

裁判所の判断

本事例では、以下の3点が主な争点となりました。

  • 争点➀:本件ビデオの制作行為が著作権(複製権・翻案権)の侵害にあたるか
  • 争点➁:本件ビデオの制作行為が著作者人格権(同一性保持権)の侵害にあたるか
  • 争点③:損害額はいくらか

争点➀:著作権(複製権・翻案権)の侵害にあたるか

裁判所は、まず、本件藤崎の図柄には創作性があるとして著作物性を認めたうえで、次のように判示して、著作権の侵害にあたると認めました。

本件ビデオに登場する女子高校生の図柄は、(藤崎詩織の図柄と対比すると、)容貌、髪型、制服等において、その特徴が共通しているので、本件藤崎の図柄と実質的に同一のものであり、本件藤崎の図柄を複製ないし翻案したものと認められる。

したがって、被告が本件ビデオを制作した行為は、本件ゲームソフトにおける藤崎詩織の図柄に係る原告の著作権を侵害する。

東京地裁平成11年8月30日・判タ1013号231頁

ここでは、複製と翻案のいずれに該当するかは特定されていませんが、著作物とパロディ作品の特徴が実質的に同一であることを理由に、著作権侵害が認められています。

この判示からすれば、やはりパロディ作品の制作は、複製か翻案かの区別は別として、基本的には著作権の侵害にあたることが前提とされているように読めます。

争点➁:著作者人格権(同一性保持権)の侵害にあたるか

また、次のように判示して、同一性保持権の侵害についても認めました。

本件ゲームソフトは、・・・・・・恋愛シミュレーションゲームであるが、登場人物である藤崎詩織は、優等生的で、清純な、さわやかな印象を与える性格付けがされて(おり)・・・・・・、藤崎詩織が性的行為を行うような場面は存在しない。・・・・・・一方、本件ビデオは、本件ゲームソフトにおいて、男子生徒が藤崎詩織から愛の告白を受けた最終場面の続編として設定され、清純な女子高校生と性格付けられていた登場人物の藤崎詩織が、伝説の樹の下で、男子生徒との性行為を繰り返し行うという、露骨な性描写を内容とする、10分程度の成人向けのアニメーションビデオとして制作されて(おり)・・・・・・、藤崎詩織の名前は用いられていないが、・・・・・・被告は、本件ビデオにおいて、本件藤崎の図柄を、性行為を行う姿に改変しているというべきであり、原告の有する、本件藤崎の図柄に係る同一性保持権を侵害している。

東京地裁平成11年8月30日・判タ1013号231頁

ここでは、著作物であるキャラクターの図柄に付与された性格やイメージが重視されています。

このように、同一性保持権は、著作者の「こだわり」といった主観的利益を保護するものともいえるため、複製権や翻案権等の著作権に比べて厚く保護されているといえるでしょう。

なお、判例上、翻案に該当する場合には、基本的には同一性保持権の侵害にもあたるとされる傾向にあります。

争点③:損害額はいくらか

最後に、裁判所は、著作権および著作者人格権の侵害による損害額について、それぞれ以下のように判示しています。

まず、著作権侵害による損害については、

被告は、本件ビデオを販売用に500本制作し、1本当たり1400円の卸価格で小売店に販売したので、販売総額は70万円とな(り)・・・・・・、被告は、動画、原画、彩色の各担当者、声優及び監督へ人件費として20万円、複製費用として17万5000円、包装等の諸雑費として5万円の合計42万5000円を支出したことが認められ、したがって被告が本件ビデオを販売することにより得た利益額は27万5000円になる。

(したがって、)原告に生じた(著作権侵害による)損害額は、被告が本件ビデオ販売により得た利益額27万5000円と同額と推定できる。

東京地裁平成11年8月30日・判タ1013号231頁

としました。

さらに、同一性保持権の侵害による損害については、

清純な女子高校生と性格付けられていた・・・・・・藤崎詩織と分かる女子高校生が男子生徒との性行為を繰り返し行うという、露骨な性描写を内容とする、成人向けのアニメーションビデオに改変、制作したというものであり、被告の行為は、原告が本件ゲームソフトを著作し、・・・・・・藤崎詩織の性格付けに対する創作意図ないし目的を著しくゆがめる、極めて悪質な行為であるということができる。

東京地裁平成11年8月30日・判タ1013号231頁

として、「一切の事情を総合考慮」して、

被告の改変行為により生じた原告の無形損害を金銭に評価した額は、200万円と解するのが相当である。

東京地裁平成11年8月30日・判タ1013号231頁

とし、合計227万5000円の支払いとビデオの製造、販売又は頒布の禁止と在庫品及びマスターテープの廃棄を、被告に命じました。

なお、被告は、「仮に複製権侵害、同一性保持権侵害が存在するとしても、被告が本件ビデオを制作した行為は、同人文化の一環としての創作活動であるから、著作権法に違反するとの評価はされるべきでない」と反論しましたが、これについては、「採用の限りでない」と一蹴されています。

人気漫画やアニメ・ゲームの登場人物の絵柄をそのまま用いて、無許諾で続編や番外編などを二次創作することはコミケなどの場においても散見されますが、訴えられた場合には、裁判所の判断は厳しいものとなる可能性が高いといえます。

パロディ動画の著作権侵害を避けるために

パロディ動画の著作権問題を避けるために

複製や翻案をする場合、著作権者の許可があれば、著作権侵害にはあたりません。また、著作権法でも、侵害にあたらない例外が規定されています。例としては、

  • 私的使用のための複製(著作権法30条)にあたる場合
  • 複製や翻案が「引用」(著作権法32条)にあたる場合
  • 法律上許された「改変」行為の場合(著作権法20条2項)

などが挙げられます。

ここまで説明したとおり、パロディ動画の制作は、複製や翻案にあたる可能性が高いといえます。

しかし、元の著作物の著作権者から許可を得ることは困難な場合があります。

パロディ動画を制作する場合には、上記で挙げたような著作権を侵害しない方法による制作かどうかを検討することで、著作者の権利を侵害しないように細心の注意を払わなければなりません。

関連記事:引用がNGとされる「著作権法」の事例について(動画編)

関連記事:引用がNGとされる「著作権法」の事例について(文章・画像編)

なお、パロディ動画の制作とは別に、これをYouTube等にアップロードする場合には、公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害にあたる可能性があるため、注意が必要です。

まとめ:著作権の専門的な判断は弁護士へ

このように、パロディの制作は著作権や著作者人格権の侵害にあたる場合が多いといえます。

また、どのような行為が著作権法上認められているのか、という点については一概に判断できないため、パロディを制作するにあたっては慎重な判断が必要になります。

これは動画を制作する場合に限らず、その他の媒体でパロディを制作するでも同様です。

著作権法上の問題があるかどうかの判断は専門的であり、個人では難しい点もありますので、経験豊富な弁護士にご相談ください。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。昨今、YouTuberやVTuberの間でも、チャンネル運用にあたって、肖像権や著作権、広告規制などリーガルチェックの必要性が急増しております。また契約をめぐる問題についても事前にしっかりと下準備をしておくことが不可欠です。下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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