ネパール連邦民主共和国の電気通信法の全体像とITサービスへの影響

ネパールの電気通信分野は、1995年12月に政府が民間部門の参入を歓迎する決定を下したことに端を発し、急速な変革を遂げてきました。この政策転換は、かつての国営独占企業であったネパール・テレコム(Nepal Doorsanchar Company Limited)が競争環境下でビジネス志向の企業へと変革を遂げるなど、市場構造の根本的な変化を促しました。その結果、1998年2月には電気通信法1997年および電気通信規則1998年に基づいてネパール電気通信庁(NTA)が設立され、電気通信分野の規制を担う自律的な機関として機能しています。
2014年1月には、すべての電気通信会社が公開会社(PLC)となるべきであるというNTAのクロスホールディング調査報告書が公表され、これによりさらなる外国投資が歓迎されるとともに、関連する法令や規制が整備されることとなりました。さらに、2025年1月13日に発布されたネパールの新しいIT/ICT条例は、ICT分野への最大100%の外国直接投資(FDI)を許可し、税制優遇や合理化されたライセンス手続きなど、セクター固有のインセンティブを提供しています。
本記事では、ネパールの電気通信法制の全体像、特にライセンスを必要とする電気通信サービスの具体的な定義、そして日本のIT企業がどのようなビジネスを行う場合に規制対象となる可能性があるのかについて、日本の法制度との比較を交えながら解説します。
なお、ネパールの法律の全体像とその概要に関しては以下の記事で解説しています。
関連記事:ネパール連邦民主共和国の法律の全体像とその概要を弁護士が解説
この記事の目次
ネパールにおける電気通信法制の全体像
ネパールの電気通信分野は、主に「電気通信法2053年(1997年)」および「電気通信規則2054年(1998年)」によって包括的に規制されています。これらの法令は、ネパール電気通信庁(NTA)という自律的な規制機関によって執行されています。
なお、ネパールでは、西暦とは別にビクラム暦という独自の暦が使われています。ビクラム暦は紀元前57年を起年とし、西暦の4月半ばを新年とします。例えば、西暦1997年はビクラム暦では2053年又は2054年です。先述した「電気通信法2053年(1997年)」といった表記は、このビクラム暦によるものです。
ネパール電気通信庁(NTA)の役割と権限
NTAは、1998年3月4日に設立されたネパールの電気通信セクターにおける主要な規制機関です。その目的は、ネパール全土における電気通信サービスの発展、拡大、運営のための有利で競争的な環境を創出することにあります。NTAの設立は、1995年12月25日のネパール政府による電気通信分野への民間部門参入決定を受けてのものであり、これは国営独占から市場自由化への明確な政策転換によるものです。NTAの使命は、品質、選択肢、費用対効果の面で公共の利益に資する最適な条件を創出し、サービスプロバイダー間の健全な競争を促進することにあります。
NTAの機能と義務は電気通信法2053年(1997年)第13条に定められており、その権限は広範に及びます。主な役割は以下の通りです。
- 政策提言: ネパール政府に対し、電気通信サービスの発展に関する政策、計画、プログラムについて提言を行います。
- サービス提供の確保: 電気通信サービスが信頼性が高く、公共に容易に利用可能であることを確保し、全国の農村および都市部で基本的な電気通信サービスと施設が利用可能となるよう必要な手配を行います。
- 民間部門および外国投資の誘致: 電気通信サービスの運営に国内外の民間部門投資家を巻き込むことを促進します。
- 競争促進と調整: 電気通信サービスおよび施設を提供する者間の調整と健全な競争のための手配を行い、一般市民にサービスが提供されるようにします。
- 標準設定と承認: 電気通信関連の設備および電気通信サービスの標準と品質基準を定め、承認します。
- ライセンス付与: 電気通信サービスを運営するためのライセンスを付与します。これは、ネパールで電気通信サービスを提供する上で最も重要な要件の一つです。
- 料金の承認と規制: ライセンスを取得した者が電気通信サービスを提供するために徴収する料金を承認し、規制します。
- 監視と検査: サービスプロバイダーが行う活動を定期的に検査し、監視することで、サービス品質と電気通信設備の品質基準が維持されていることを確認します。
- 紛争解決: サービスプロバイダー間、またはサービスプロバイダーとその顧客間の紛争を解決します。
- 周波数管理: 無線周波数政策決定委員会によって決定された政策に従い、周波数に関する機能を実行します。
NTAは、ネパールの電気通信市場において極めて中心的な役割を担っており、その決定が事業者の運営に直接的な影響を与えていると言えます。
電気通信法(1997年)および電気通信規則(1998年)
ネパールの電気通信法制の根幹をなすのは、電気通信法2053年(1997年)と電気通信規則2054年(1998年)です。電気通信法は、電気通信サービスの信頼性と利用可能性の向上、民間部門の参入促進、およびサービスの規制と体系化を目的として制定されました。
- 電気通信法2053年(1997年): この法律は、電気通信の定義、NTAの設立と権限、ライセンスの付与、期間、更新、譲渡に関する規定など、電気通信事業の基本的な枠組みを定めています。特に、電気通信サービスを運営するためにはライセンスの取得が義務付けられています(電気通信法第21条)。
- 電気通信規則2054年(1998年): この規則は、電気通信法の詳細を補完するもので、ライセンス申請の手続き、必要な資本要件、技術的専門知識、職業的経験に関する具体的な基準を定めています。例えば、全国規模の地域電話サービスには20億ルピー、携帯電話サービスには5億ルピーの純資産が必要とされています。
ネパール政府が民間部門の参入を歓迎し、NTAを設立したことは、計画的かつ法的な枠組みのもとで市場自由化を進めてきたことによるものです。しかし、これらの法令の公式な英語全文をNTAのウェブサイトから直接入手することは、現時点では困難です。NTAのウェブサイトにはネパール語版のPDFが提供されていますが、英語の詳細なガイドラインや全文は、別途問い合わせるか、現地の法律専門家の支援を得る必要があるでしょう。これは、日本を含めた外国企業がネパールでの事業展開を検討する際に留意すべき実務上の課題です。
ネパールにおける電気通信サービスの定義とライセンス要件

「電気通信サービス」の定義
ネパールで電気通信関連事業を展開する上で最も重要なのは、「電気通信サービス」の定義と、それに伴うライセンス要件を正確に理解することです。
ネパールの「電気通信法2053年(1997年)」は、「電気通信」を非常に広範に定義しています。同法第2条(a)によれば、「電気通信」とは、「電気または電磁気を利用して、有線、無線、光またはその他の電磁システムにより、あらゆる性質の音、記号、信号、文字、画像または情報を発信、送信または受信する行為」を意味します。この定義は、現代の多様なデジタル通信技術を包括しうる広がりを持っています。
また、同法第2条(d)における「電気通信サービス」は、「有線、無線、光またはその他の電磁システムにより、音、記号、信号、文字または画像の伝達または受信に関するサービス」を意味するとされています。そして、電気通信法第21条は、電気通信サービスを提供する事業者はNTAからライセンスを取得することが義務付けられていると明確に定めています。
ネパールにおける「電気通信」の広範な定義と、NTAが「全ての事項を規制する」権限を持つことより、現代の多様なITサービスは、たとえそれが従来の「電話」や「インターネット回線」といった物理的なインフラを直接提供するものでなくても、ライセンスの対象となる可能性ある、と言えます。「自分たちは通信事業者ではない」と考えていても、ネパールではそのサービスが「電気通信サービス」とみなされ、ライセンスが必要になるリスクがあり、事業開始前に法的評価を行うことが重要です。
ライセンスが必要となる具体的なサービス類型
NTAは、この広範な定義に基づき、多岐にわたる電気通信サービスに対してライセンスを付与しています。NTAのウェブサイトに掲載されているライセンス料金一覧からは、以下のようなサービスがライセンスの対象となっていることが確認できます。
- インターネット(Eメールを含む)サービス(Internet (Including E-mail) Service)
- Eメールサービス(E-mail)
- オーディオテキスト/ボイスメール(Audio Text/ Voice Mail)
- ビデオテキスト(Video Text)
- ファックスメール(Fax Mail)
- VSATネットワークプロバイダー(VSAT Network Provider)
- VSATユーザー(VSAT User)
- オーディオ会議(Audio Conferencing)
- 公衆電話(Pay Phone)
- プリペイドコーリングカード(Pre-paid Calling Card)
- ローカルデータネットワーク(Local Data Network)
- 無線ページングネットワーク(Radio Paging Network)
- ビデオ会議(Video Conferencing)
- グローバルモバイルパーソナルコミュニケーションシステム(Global Mobile Personal Communication System, GMPCS)
- 基本電話サービス(Basic Telephone)、携帯電話サービス(Cellular Mobile Telephone)
ライセンスの申請には、電気通信法第23条に基づき、所定の資本、技術的専門知識、および専門的経験が求められます。
日本法との比較
日本の電気通信事業法における「電気通信」の定義は、「有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けること」であり、ネパール法の定義と実質的に同じです。
しかし、「電気通信事業」の定義と規制の仕組みには重要な違いがあります。日本法では、「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」と定義されますが、企業や個人のウェブサイト運営や、自社商品のオンライン販売などは「自己の需要のため」とみなされ、電気通信事業には該当しません。
さらに、日本には「登録電気通信事業者」と「届出電気通信事業者」という二段階の制度があります。自ら電気通信回線設備を設置して電気通信役務を提供する場合は「登録」が必要となり、これはより厳格な審査を伴います。一方、他者の設備を利用して電気通信役務を提供する場合は原則として「届出」で済み、これは比較的負担の軽い手続です。線路の総延長が5km未満の場合や、他人の通信を媒介しない特定のサービス(ドメイン名電気通信役務、検索情報電気通信役務など)は届出も不要となる場合があります。
日本の電気通信事業法が、設備を設置するか否か、および、事業の規模に応じて「登録」と「届出」という異なる規制レベルを設けているのに対し、ネパールでは、より広範な「電気通信サービス」の定義の下、多くのサービスにライセンスが求められる傾向があります。そして、日本の「届出電気通信事業者」の負担が軽いのに対し、ネパールのライセンス取得プロセスは財務、マーケティング、経営、技術といった多岐にわたる詳細な情報提出を求め、かなりの時間と労力を要すると言われています。
「Nepal Telecommunications Authority, License Fee」より抜粋・要約した、ネパールにおける主要な電気通信サービスとライセンス費用一覧を下記に記載します。ただ、最新状況が既に変更されている可能性があるため、都度確認を行うことを推奨します。
S.No. | Telecommunications Services (英語) | 日本語訳 | License Fee NRs. (初回) | License Renewal Fee NRs. (更新) |
1 | Internet (Including E-mail) Service | インターネット(Eメールを含む)サービス | NRs. 300,000 | NRs. 270,000 |
2 | Eメールサービス | NRs. 200,000 | NRs. 180,000 | |
3 | Audio Text/ Voice Mail | オーディオテキスト/ボイスメール | NRs. 200,000 | NRs. 180,000 |
4 | Video Text | ビデオテキスト | NRs. 200,000 | NRs. 180,000 |
5 | Fax Mail | ファックスメール | NRs. 200,000 | NRs. 180,000 |
6 | VSAT Network Provider | VSATネットワークプロバイダー | NRs. 2,500,000 | NRs. 2,250,000 |
7 | VSAT User | VSATユーザー | NRs. 50,000 | NRs. 45,000 |
8 | Audio Conferencing | オーディオ会議 | NRs. 50,000 | NRs. 45,000 |
9 | Pay Phone | 公衆電話 | NRs. 3,000,000 | NRs. 2,700,000 |
10 | Pre-paid Calling Card | プリペイドコーリングカード | NRs. 3,000,000 | NRs. 2,700,000 |
11 | Local Data Network | ローカルデータネットワーク | NRs. 2,500,000 | NRs. 2,250,000 |
12 | Radio Paging Network | 無線ページングネットワーク | NRs. 1,250,000 | NRs. 1,125,000 |
21 | Video Conferencing | ビデオ会議 | NRs. 150,000 | NRs. 135,000 |
22 | Global Mobile Personal Communication System | グローバルモバイルパーソナルコミュニケーションシステム | NRs. 1,500,000 | NRs. 1,400,000 |
ネパールにおいてIT企業がライセンス対象となる可能性のあるビジネス
現代のITサービスは多様化しており、その多くが通信技術を基盤としています。ネパールの広範な電気通信サービスの定義は、日本のIT企業が提供するサービスがライセンス対象となる可能性を秘めています。
OTTサービスに関する規制動向と日本法との差異
ネパール電気通信庁(NTA)は、近年急速に普及している「Over-the-Top(OTT)サービス」に対する規制枠組みの策定を積極的に進めており、その草案について意見募集を行っています。この動きは、ネパールがデジタル経済の進展に対応しようとする強い意志の表れと言えます。
この草案では、OTTサービスを「公衆インターネット上でアクセス・提供され、技術的または機能的に従来の国際電気通信サービスを代替しうるオンラインサービス」と定義しており、メッセージング、音声/ビデオ通話、会議サービスなどが含まれるとされています。この機能的定義は、サービスがどのような技術的基盤を持つかよりも、そのサービスが従来の通信サービスと「何を代替するか」に焦点を当てている点が特徴です。
草案によれば、ネパール国内でOTTサービスを提供する事業者は登録が必要であり、外国のOTTプロバイダーはネパール国内に支店を登録するか、登録された仲介者を任命することが義務付けられています。また、OTTプロバイダーはNTAの指令に従い、消費者保護(ネットワークセキュリティ、データ保護、プライバシー、苦情処理)を維持し、可能であれば国内でのCDN(Content Delivery Network)設置も奨励されています。
日本法との差異
日本では、LINEやZoomのようなOTTサービスは、一般的に「電気通信役務」に該当し、その提供が「他人の通信を媒介」するものであれば電気通信事業法の規制対象となり得ます。しかし、多くの場合、自社で回線設備を持たないため「届出電気通信事業者」としての届出で足り、ネパールの草案が求めるような支店登録や仲介者任命といった厳しい要件は通常課されません。特に、不特定の利用者間の交流を実質的に媒介するSNSや動画共有プラットフォームなどは、特定の利用者数(1000万人以上)を超えると「媒介相当電気通信役務」として規制対象となりますが、これも「届出」の範囲内です。ネパールのOTT規制は、日本と比較して、より直接的な事業体登録と現地プレゼンスを求める点で、外国企業にとっての負担が大きい可能性があります。
ネパールのOTT規制枠組みの策定は、ネパールがデジタル経済の進展に対応しようとする動きであり、将来的にはクラウドやデータホスティングといった他のITサービスについても、より明確な規制が導入される可能性を示唆しています。これは、規制の不確実性が高い現状から、より明確なルールへと移行する過渡期にあることを意味します。OTT規制草案の存在は、NTAが新しいデジタルサービスへの対応を喫緊の課題と認識している証拠です。現在のところ、VoIPやクラウドに関する詳細なガイドラインがないのは、これらのサービスが既存の広範な定義でカバーされているか、あるいは今後の規制対象として検討中であるかのいずれかです。OTTが先行して具体的な規制が検討されていることから、他のITサービスも追随して個別の規制が導入される可能性は高く、これにより規制の透明性が向上する一方で、新たなコンプライアンス要件が発生する可能性があります。
クラウドコンピューティング等への適用可能性と現状
NTAのウェブサイトでは、VoIP、クラウドコンピューティング、データホスティングに関する具体的な詳細ガイドラインは提供されていません。しかし、「IP PABXサービス運営に関する通知」や「ライセンス取得組織によるISおよびクラウド監査報告書の提出」に関する情報があることから、これらのサービスの一部または関連事業がすでにNTAの規制下にある可能性があります。つまり、前述の「電気通信サービス」の広範な定義により、これらのITサービスが包括的に捉えられ、ライセンスが必要とされている可能性があります。例えば、VSATサービスユーザーやインターネットサービスプロバイダー(ISP)は明確にライセンス対象であり、これらにはデータ伝送やホスティングの要素が含まれます。
ネパールのOTT規制草案が「従来の国際電気通信サービスを代替しうる」という機能的定義を採用していることより、日本のIT企業が提供する多くのサービスが、ネパールでは「電気通信サービス」とみなされ、ライセンスや現地法人設立の義務を負うリスクがあります。これは、日本での「届出」で足りるようなサービスでも、ネパールではより重い規制が課される可能性があるという、日本企業にとっての潜在的なリスク要因です。VoIPアプリやオンライン会議ツール、さらには特定のデータ共有サービスなども、ネパールの電気通信サービスの範疇に容易に含められることになります。日本法が設備所有の有無で規制の重さを変えるのに対し、ネパールはサービス機能に着目しているため、規制の適用範囲が広くなる可能性が高く、日本企業は自社のサービスがネパールでどのように評価されるかを慎重に検討する必要があります。
また、外国OTTプロバイダーに支店登録または仲介者の任命を求める草案の要件は、ネパール市場への参入を検討する日本企業に対し、現地での法的・物理的プレゼンスの確立という追加的な負担を課すものです。現地法人設立や仲介者任命は、法務、税務、人事など多岐にわたる追加コストと手続きを伴います。これは、純粋なオンラインサービスを提供するIT企業にとって、従来の物理的な事業展開を前提とした規制が適用されることになり、ビジネスモデルに大きな影響を与えます。この要件は、市場参入の障壁として機能し、小規模なスタートアップ企業にとっては特に大きな課題となるでしょう。
ネパールにおける電気通信事業ライセンス取得プロセス
申請要件と必要書類
電気通信サービス事業を行うためには、NTAからライセンスを取得する必要があります。申請プロセスは多岐にわたり、以下の側面から詳細な情報提出が求められます。
- 財務的側面: 推定資本、提案投資額、投資源、運営費用、推定収益・支出、損益予測など。ISPライセンスの場合、国家レベルでNPR 50百万(約5000万円)、地域レベルでNPR 20百万(約2000万円)の最低投資額が示されています。
- マーケティング的側面: 特定地域における推定顧客数、市場シェア予測、ロールアウト計画、サービス品質方針、インフラ整備とサービス提供のタイムプラン、財務・技術調査報告書、事業運営計画など。これは、事業の実現可能性と市場への貢献度を評価するために重要です。
- 経営的側面: 事業経験、現在の事業活動、組織構造と人的資源の関与。外国企業との合弁事業の場合、合意書または覚書(MOU)の提出が必要です。これは、事業遂行能力とガバナンス体制を評価するものです。
- 技術的側面: 使用する機器のモデル番号、製造元、製造国、設置場所、保守方針、使用する周波数帯と使用方法、他のネットワークとの相互接続の場所、方法、種類(マイクロ波/衛星/ケーブルなど)の詳細。技術的な適合性と持続可能性が問われます。
申請手数料はNRs. 100.00とされています。
外国投資に関する規制と要件
ネパールは電気通信分野への外国直接投資(FDI)を積極的に誘致しており、ICT分野では最大100%のFDIが許可されています。ただし、外国企業がネパールで事業を行う場合、会社登録局(OCR)での会社登録、産業省(DOI)での外国投資承認(FITTAプロセス)、内国歳入庁(IRD)でのPAN/VAT登録、ネパール中央銀行(Nepal Rastra Bank)からの承認など、複数の政府機関との連携が必要です。FITTA承認には、最低NPR 20百万(約15万米ドル)の資本金要件があります。また、外国語の書類はネパール語に翻訳し、公証する必要があります。
FDIを伴う場合、ネパール投資委員会とNTAからの許可を得て、会社登録局に登録する必要があります。この際、外国投資が100%許可されるという政策がある一方で、ネパール人投資家による最低20%の出資が求められるケースもあり、この点には注意が必要です。政策と実務の間に乖離がある可能性があり、現地での事業形態を検討する際には慎重な確認が求められます。
ライセンス費用と期間

ライセンス費用はサービスの種類によって大きく異なります。例えば、インターネット(Eメール含む)サービスはNRs. 300,000、VSATネットワークプロバイダーはNRs. 2,500,000、ビデオ会議はNRs. 150,000です。更新料は初回ライセンス料の90%程度となることが多いようです。
ライセンスの有効期間は最大25年ですが、一度目に付与されるのは最長10年で、その後は5年ごとの更新が可能です。
現在、ネパール政府は高額なライセンス更新料の見直しを検討しており、これを「非現実的」と認識し、業界の成長に資するよう政策を改定する意向を示しています。
ネパールでの電気通信事業ライセンス取得プロセスは、会社設立からFDI承認、NTAライセンス取得まで、複数の政府機関が関与し、多岐にわたる詳細な書類と長期間を要します(平均6ヶ月から1年)。特に、外国投資が絡む場合はさらに複雑化します。
まとめ
ネパールの電気通信分野は、急速な成長と外国投資の積極的な誘致により、日本の企業にとって大きなビジネスチャンスを秘めています。しかし、その市場は、広範な電気通信サービスの定義、厳格なライセンス要件、そしてOTTサービスに対する新たな規制動向など、日本とは異なる複雑な法規制環境によって管理されています。特に、日本のIT企業が提供するサービスが、ネパールでは「電気通信サービス」とみなされ、ライセンス取得や現地法人設立、仲介者の任命といった追加的な要件を負う可能性がある点は、事業戦略を策定する上で極めて重要です。
ライセンス取得プロセスは、複数の政府機関が関与し、詳細な書類提出と長期間を要するため、初期段階での綿密な計画と専門家によるサポートが不可欠です。一方で、ネパール政府は外国投資を積極的に奨励しており、高額なライセンス更新料の見直しを検討するなど、規制環境は柔軟に変化する可能性を秘めています。
関連取扱分野:国際法務・海外事業
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務
タグ: ネパール連邦民主共和国海外事業